クリーニング豆知識

第百三十五回:「おかしな表示」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百三十五回は、「おかしな品質表示」について


前回、
「タンブラー乾燥」について取り上げましたが、
日々たくさんの品質表示に触れていると、
正直
「これは・・・?」と思えるモノを見かけます


特に、世界のアパレルブランド・トップ3
(ZARA・ユニクロ・Gap)の品質表示には、
各会社の事情や思惑が良く現れています

具体的には


ZARAは、
そのまま世界各国へ出荷出来るようになっているため、
多言語の品質表示が並べて表示されており、
ZARAにとっては便利かもしれませんが、
消費者の視点で考えると、非常に見づらいのが特徴です

特に、
製品の注意事項の部分は非常に字が小さく、
日本語の文がどこにあるかも分かりづらく、
探すのに苦労しています


ユニクロは、日本の企業だけあり、
日本の品質表示だけが付いているため

「この衣類は何洗いか?」に関しては、
とても見やすく分かりやすいと思います
ただし、注意事項が非常に多く、
「会社としての利益が最優先」と言う印象を受けます

ネオレザーなど、合成皮革や、
その他の加工の劣化が始まる年数を、具体的に書いていたり

製品のデメリットも正直に伝える、
と言う点では素晴らしい部分は多々あるものの、
それを売り場で周知して欲しい、と思うような製品も沢山あります


Gapは、ZARAと同様、
複数の言語の表示が並んでいるため、非常に見づらいものが多くあります

また、どの種類の衣類に付いているのか、法則性が分からないのですが、
「日本語のみ・とても小さい文字の品質表示」が付いているものがあります

裏返しにして探さないと分からない程小さいものもあり、
字も小さいので非常に見づらいです


また、
「お客様が、自分で切り取ってしまった品質表示」で、
圧倒的に多いのは
ZARAです

長い上に複数枚あるため、
肌に当たって気になるとは思いますが・・・
切らないで下さい

品質表示がない場合、クリーニング店によっては、
受付を断られる可能性があります


ただし、上記3社の衣類は、

「ちゃんと読める、まともな品質表示が付いている」
と言う安心感があります

そして、
「これは・・・?」と感じるのは、
ほぼ確実に上記3社以外の、見た事も聞いた事もないブランドです


まず、
「手書き」

信憑性がない事もありますが、
組成表示だけで、洗い方に関する記述がない場合がほとんどです

手書きで
「ドライ」「水洗い」とだけ書いてある事もあり、
「水洗いとは、どの水洗いの事なのか」と思います

(家庭用の水洗いと、
業務用の仕上げまでを含む
『ウェットクリーニング』は別物です)


そして、
「日本のものではない表示」

洗い方の表示は海外のもので、
その下の会社名だけ日本語のものであったり

組成表示も洗い方も、日本のものではない品質表示の衣類は、
インターネットの普及で、個人輸入が増えた事もあり、
割と多く見られます

日本の品質表示は、JIF表示となり世界標準となりましたが、
だからと言って、どんな国の衣類とも
共通の表示に変わった訳ではありません

このコラムでも繰り返しお伝えしていますが、世界には、
「色落ちしても、型崩れしても、着られればいい」
と言う文化の国が沢山あり、
日本は、衣類に関しては、世界的に見ても非常に神経質な国です


前回もお伝えしたように、品質表示は、
ある意味契約書のようなものです

衣類を購入した後で、

「表示を読んでいなかった、購入の際に説明もなかった」
と主張しても、
必ずしも法律が守ってくれるとは限りません

「衣類の購入」
「品質表示の確認」を、
セットで考える癖を、なるべく付けるようにして下さい
その事が結果として、自分自身や、家族の身を守る事に繋がります