クリーニング豆知識

第百三十一回:「手作り衣装」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百三十一回は、「手作り衣装」について


当社では、日々様々な衣類をお受けしていますが、
その中で
「危険性の高い衣類は?」と聞かれた場合、
まず思いつくのが
手作りの衣装です

そして、その危険性を、手作りの衣装をお持ちの方の多くが、
クリーニング店にお持ちになるまで気付いていない・・・と感じます
手作り衣装のリスクは、大きく分けて三つ


@品質表示が付いていない

手作りの衣装には、品質表示が付いていません

そのため、ドライクリーニング・水洗いのどちらの洗い方が適しているのか
あるいは、そもそも洗えるように出来ているのか、が分かりません

色落ちするだけならまだしも、
極端な縮みが発生すると、着る事が出来なくなる恐れがあるため、
「クリーニングに出したら、着れない状態で返って来た」と言う事は、
十分考えられます


A装飾品が、衣類を傷つける

特にダンス用の手作りの衣装には、
スパンコールなどの装飾品が付いています
衣装の生地が薄い・柔らかいものである場合、
「装飾品によって、衣類に傷が付く」と言う事があります

また、衣類に傷が付くだけではなく、
装飾品そのものが破損する場合もあります
全身に装飾品が付いているような衣装は、特に危険です


B代わりになるものがない

一番大きなリスクです

クリーニングによって、
脱色や縮み・装飾品の破損が発生したとしても、
手作りの衣装には、代わりになるものがありません

もう一度同じ衣装を作るにしても、発表会が近いので、
その前に一度クリーニングを・・・と言う場合には、
期日までに間に合わない事も考えられます


手作りの衣装をお持ちになった場合、
当社側から良く行う提案が、
「とりあえず保留」です

一度洗うと、元に戻らない状態になるかもしれない
直近で使用する予定があるならなおさら

「とりあえず、今回は洗わない。
どうしても洗いたいと言う状況になったら、もう一度良く考える」
と言う対応です


当社としても、代わりになるものがない手作り衣装を、
クリーニングしてダメにしてしまう事は避けたい・・・と考えています

そのため、
「とりあえず、今回は洗わない」
と言う選択肢がある事も、忘れないで下さい


なお、品質表示のない手作り衣装の場合、
仮にクリーニングに出して、
着れない状態で戻って来たとして

クリーニング店側が責任を取るケースはあまり多くない、
と考えておいた方が良いでしょう

品質表示がない時点で、
受付を断られる事も考えられるため

手作り衣装はそれだけリスクの高い衣類である、
と言う認識を持つようにして下さい

その認識が、結果として自分や家族を守る事に繋がります