クリーニング豆知識

第百二十八回:「たたみ? 立体?」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百二十八回は、「畳んだ方が良い服・吊るした方が良い服」について



世の中には、
「畳んで保管する事を前提とした服」と、
「ハンガーに吊るして保管する事を前提とした服」があります

ただし、このような事は品質表示に書いてある訳ではなく、
「お手入れの方法」は書いてあったとしても、
「保管の方法」は書いていない場合がほとんどです


例えば、肩パッドの付いていない綿のセーターを、
ハンガーに吊るして保管すると、
肩の部分が伸びてしまい、元に戻らなくなる場合があります
そのため、
「畳んで保管する事を前提とした服」である、と言えます

一方、肩パッドの付いた、スーツ上下のブレザーを畳んで保管すると、
主に、そでや背中の部分にしわが寄ります

そのため、
「ハンガーに吊るして保管する事を前提とした服」である、
と言えます


しかし、
「畳んで保管する事を前提とした服」を、
「ハンガーに吊るして欲しい」
と言われる事や

「ハンガーに吊るして保管する事を前提とした服」を、
「畳んで欲しい」
と言われる事があります

その場合、基本的には
言われた通りの形でお返ししています
ズボンの
「線あり・線なし」と同様、当社から見てどうこうではなく、
「その方にとって、この服は畳む(吊るす)ものである」と考えているからです


「畳んで欲しい」と言われる衣類で、最も多いのはブレザーです
夏・冬物スーツをクリーニングに出し、
次のシーズンまではタンスの中・・・と言う場合、
「このスーツ上下は、畳んで返して欲しい」と言われます

ブレザーは畳むとしわが寄るものの、
立体的な構造となっているのは肩と袖の部分くらいなので、
婦人物のブラウスなどと比較すると、
まだしわになりにくい衣類と言えます


一方、
「吊るして欲しい」と言われる衣類で、
最も多いのは
ズボンです

当社ではスーツ上下でお預かりした場合、
一つのハンガーにまとめて(ズボンも吊るして)、
お返ししていますが、ズボン単体でお預かりした場合、
畳む形でお返ししています

そのため、スーツ上下でよくクリーニングに出す方は特に、
「ズボン=吊るすもの。畳むとしわになるもの」と考えている場合も多く、
「ズボンは、全てハンガーに吊るして欲しい」としばしば言われます


ただ、スーツ上下のズボンは問題ないのですが、
ジーンズのような固い生地や、
ポリエステル製などの非常に柔らかい生地のズボンは、
ハンガーに吊るすと、
吊るした部分にかなりはっきりとしわが寄ります

そのため、ズボンに限らず、
「この衣類を吊るす(あるいは畳む)と、
回復不能なしわ・もしくは伸びが発生するかもしれない」

判断した場合、リスクを説明した上で、お受けするような事があります


長くなりましたが、ここからが本題です

消費者側からするとつい忘れがちですが、
クリーニング店によってハンガーの形状は異なります
また、同じ衣類であっても、畳み方も違います



そのため、
「畳み」・「ハンガー(立体)」と指定しても、
クリーニング店によって、
「どのように畳むか」・
「どこをハンガーで吊るすか」
は、割と違います

クリーニング店側からすると、スペース確保のため、
なるべくハンガー仕上げにしたいと考えます

ワイシャツの、たたみとハンガーの料金を比較した場合、
たたみ仕上げの方が高いのは、
単純に手間がかかると言う点もありますが、
ハンガー仕上げの方がスペースを圧迫しないので、
「なるべくハンガーで受けたい」と言う、
クリーニング店側の思惑もあります


つまり、クリーニング店で、
預けた衣類を
「畳み」・「ハンガー」のどちらかの形を指定する事と

「自分のイメージ通りに
仕上がって帰ってくるかどうか」
は別です


そのため、場合によっては、
自分でぴったりなハンガーを用意しておいて交換したり

帰って来た衣類を自分で畳んだ方が、
確実である・・・と言う事は、多いに考えられます


ハンガーの形状と畳み方は、そのお店独自のものであり、
変えて欲しいと言って簡単に変えてくれる訳ではありません

そのため、
「この服はお気に入りなので、必ずこの形で保管して長持ちさせたい!」
と考えている場合

ぴったりなハンガーを用意しておいて、帰って来たら交換するなど、
自分なりの
「ちょっとした工夫」を用意しておくと良いでしょう