クリーニング豆知識

第百二十六回:「『いつ出来る?』と聞かれたら」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」

常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百二十六回は、「仕上がり日に関する、認識の溝」について



『今日スーツを持って行ったら、いつ出来ますか?』

電話で、今まで数えきれない程受けた質問です
しかし、クリーニング店側からすると、

「いつ出来ます」
とは断言しづらい理由があります


そもそも、クリーニング店の受付において、
料金に関しては
「それが何であるか」を見ていますが、

仕上がり日に関しては、
少なくとも当社では「それが何であるか」ではなく、
「それが何洗いであるか」を見ています


つまり、
「今日スーツを持って行ったら、いつ出来ますか?」
と電話で聞かれても

実際に品物を確認して、品質表示を見てみない事には、
確定的な事は言えない訳です



そのため、電話では

「ドライクリーニングであれば、明日。水洗いであれば、あさってです」

・・・のような表現を用いています

多くの消費者にとって、
品質表示の絵柄は
「よく分からないもの」であり

自分でドライクリーニングか、
水洗いか判断する事は難しい、と言う事情は理解しています


しかし、クリーニング店側からすると、
「『明日出来ます』と言っておいて、出来なかった」
は問題です

お店の信用に関わる事なので、

「洗い方により、仕上がり日は違います」
と言う事を

誰が電話を受けてもしっかり説明するよう、
当社では心がけています


また、電話で

「ワイシャツを今日持って行ったら、いつ出来ますか?」

と聞かれ、ワイシャツであればいつ出来ます、とお伝えした所

実際にお持ちになったシャツは
「ワイシャツとしては洗えないシャツだった」
・・・と言う事も、しばしばあります

具体的には、水洗いが
「×」となっているシャツ
青や黒と言った、濃色のシャツ

文字がプリントされている、
あるいは一部に皮革が貼り付けてあるシャツなどです


このようなシャツは、当社だけではなく、
大抵のクリーニング店で
「ワイシャツ」として扱ってもらえません

カジュアルシャツ・オープンシャツ・カラーシャツなど、
お店によって名称は異なりますが

通常のワイシャツのように温水洗い・
機械仕上げが出来ないシャツの場合

「ワイシャツとしては、洗い・仕上げの出来ないシャツ」
の扱いになります


では、

「この服を、今日クリーニング店に持って行くと、いつ出来るのか?」

を知りたい場合、どのような事に気を付ける必要があるのでしょうか


@「それが何か」ではなく、「それが何洗いか」で考える

細かい部分は、クリーニング店によって異なりますが、
同じ
「スーツ」と言う分類でも、洗い方によって、
仕上がり日が異なる場合があります

そのため、

「スーツをあのクリーニング店へ持って行けば、必ず〇日後に出来る」

と思い込んでしまうのは、危険です

「品質表示を見ると、『×』の付いているマークが違うので、
前のスーツと違うかもしれない
」と考えた方が無難でしょう


A自分の考えている分類と、お店の分類は別

当社では、スーツ上下は
「スーツ」としてお受けしており、
上下を一つのハンガーに組ませた状態でお返ししています


しかし、
「スーツ」ではなく、
「ブレザーとズボン」と言う扱いのクリーニング店もあります

また、
その場合ブレザーとズボンで仕上がり日が違う
と言う事も考えられます


そのため、

「自分としては〇〇だと思っているが、
クリーニング店での扱いは違うかもしれない」
と考えておいた方が、こちらも無難です

特に、合成皮革などの特殊な素材や、
シルク・カシミアなど、比較的デリケートな素材は

クリーニング店によって、追加料金を
「取る・取らない」の違い、
また取る場合はその料金に、かなりの幅があります


B「シミヌキ」と「急ぎ」は、両立出来ない場合がある

汗ジミ・カビ・食べこぼしなどが衣類に付いている場合、
「シミヌキ」「急ぎ」は両立出来ない事があります

そのような時には、

「シミヌキ」
を優先するのか、「急ぎ」を優先するのか


店頭で、突然選択を迫られ、
困った経験のある方も多いのではないでしょうか

シミヌキも急ぎも、両方やって欲しいと言う場合、
どちらかしか出来ないと言われたら、どちらを優先するべきか、
自分の中であらかじめ決めておくと、
いざと言う時に困らないと思います


この、
「いつ出来るのか」・
「その服が何に分類されるのか」・「シミヌキも急ぎも」
を巡る認識の溝は、今後も無くならないでしょう

と言う事は、消費者側が知識を身に着け、備えておかないと、
「どうしてもこのスーツを、明日中に欲しい!」
と言うような状況で、困ってしまう事になります


クリーニング店は、このような細かい部分までは、
懇切丁寧に教えてくれる訳ではありません(特に電話では)

しかし、実際に品物を店頭に持ち込み、
「この服は何に分類され、今日出すといつ出来るのか」
を確認する事は出来ます

そうやって、地道に情報を集め、
備えておくと、いざと言う時に困らないでしょう