第百二十五回:「嘘ではないが真実でもない」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百二十五回は、「プロの言い方」について
一日に必要な
食物繊維の量は、キャベツ一玉
・・・という表現は、
嘘ではないけれど、真実でもありません
実際には「成人男性は20グラム以上、女性で18グラム以上」であり、
その量をキャベツに換算すると「一玉」となります
また、食物繊維を、
キャベツで摂取しなくてはならない理由はありません
では、なぜ健康食品のCM等でこのような表現を用いるのかと言うと、
視聴者に「一日にキャベツ一玉なんてムリ」と思わせるためです
そして、「ムリなので、このサプリメントで補いましょう」と宣伝します
このようなCMを「作る側」はプロであり、食物繊維を、
もっと効率的に摂取出来る方法を知っています
しかし、「キャベツ一玉」と言う情報のみを前面に出して、
視聴者に自分達に取って「都合の良いイメージ」を与えようとしています
今はインターネットで様々な事が調べられるとはいえ、
このような「プロが発信する情報」を受け取った瞬間に、
それが正しいかどうかを判断するのは困難です
そのため、「プロの言う事であっても、話半分に聞く」
くらいが丁度良いかもしれません
日本人はブランド志向が非常に強いため、
「その道のプロ」が言う事であれば、
多くの人が、「この情報に間違いはないはずだ」
と思い込んでしまうような事が、多々あります
そして、ここからが本題です
クリーニング店でシミヌキを依頼して、
「このシミは落ちません」と言うタグが付いて返って来たとき
@本当に取れない
Aその店舗の設備・技術では落とす事が出来ない
B落とす方法は存在するが、
費用や衣類へのダメージを考えると、現実的ではない
・・・の、大きく分けて3パターンがあります
もし、「思い入れのある服なので、絶対にこのシミを落としたい」
と考えている場合、
当社を含め、一つのクリーニング店で
「落ちません」と言われても、諦めないで下さい
いくらかかってもいい、どこまで行ってもいい、
あるいは郵送してシミヌキしてもらってもいい・・・まで考えると、
選択肢は大幅に広がります
プロは確かに知識があります
しかし、100ある知識の内、
100を丁寧に教えてくれる訳ではありません
場合によっては、「自分に取って都合の良い、たった一つの事」
しか言わないかもしれません
プロの言う事こそ、鵜呑みにせず、疑ってみて下さい