第百二十三回:「このシミ、落ちますか?」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百二十三回は、「このシミ、落ちますか?」と言う質問への答え方について
このシミ、落ちますか?
今まで、数え切れないくらい受けた質問です
しかし、大抵のクリーニング店で、
「落ちます」と断言する事はあまりないでしょう
この場合、お客様が必要としているのは
「落ちます」と言う断定であり、
「落ちるのであれば、クリーニングに出したい」
・・・と考えるのが普通だと思います
一方、クリーニング店側としては「落ちます」とは軽々しく言えません
ただし、大手チェーン店の取次店と、当社のような工場併設店では、
多少「『落ちます』、とは言えない事情」が異なる場合があります
チェーン店の取次店(工場がなく、受付・引取だけの形態)の場合、
受付の作業を行っているのはパートの方で、
衣類やシミに関する専門知識はあまりありません
中には、長年の経験から豊富な知識を持ち、
「このシミはウチでは落ちないから、
あそこのクリーニング店へ。このシミならウチで落ちる」
と言ったような、適格なアドバイスをするパートの方もいますが、
割合としては少数でしょう
そのため、「自分では判断が出来ないので、
『落ちます』とは言えない」
・・・と言うケースが多いのではないかと思われます
一方、当社のようなユニット店(工場+店舗)の場合、
シミヌキや仕上げ作業を実際に行っているからこそ
軽々しく「落ちます」とは言えないケースも多々あります
例えば、水洗い出来ない衣類に、汗ジミが付いた場合
縮み・色落ちのリスクを承知で、全体を水洗いする必要があるのか
あるいは、汗ジミの付いた部分だけをシミヌキして、落ちるのか
また、お客様の側が『どこまで』を望んでいるのかによって、
やり方が違う、と言う事はあります
そして、ここからが本題です
クリーニング店側としては、
@何のシミが
Aいつ付いたのか
と言う情報が必要です
そのため、この2つの情報が分かっていれば、
店頭で伝えるようにして下さい
その部分が判明していれば、
クリーニング店側としても助かります
また、
@シミヌキ料金が発生するなら、いくらまで払っても良いのか
Aシミヌキのために、仕上がり日が遅れても、大丈夫なのか
B非常に落ちづらいシミの場合、
色落ちや縮みのリスクがあっても、シミヌキをした方が良いのか
・・・と言った事を聞かれる場合もあります
そのような場合に備え、
『この衣類には、どこまでして欲しいのか』を考えておくと良いでしょう
特に、何年にも渡って使おうと思っていたような、
コートやオーバー、ダウンのような衣類は、
『シミヌキをしないと、着る事が出来ないのか。あるいは、
少しでもリスクがあるなら、シミヌキはして欲しくないのか』
・・・と言うような、自分なりの基準を作っておくと、いざシミが付いた!
と言う時に素早く対応出来るでしょう