クリーニング豆知識

第百二十二回:「タイトフィット」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百二十二回は、「スリムフィットを超えたタイトフィット」について



タイトフィット

・・・と言われても、何の事か分からないと思います
クリーニング業界でもアパレル業界でも、
使用している用語ではありません

当社で独自に使用している、
「スリムフィット」と区別するための用語です


何故スリムフィットと区別するかと言うと、当社の見解では

スリムフィットは、
『細身に仕立てているが、
ワイシャツ仕上げの機械には、セット出来るシャツ』
と考えています

タイトフィットは、
『細過ぎて、そもそもワイシャツ仕上げの機械に、
セット出来ないシャツ』
です


仕上げの機械にセット出来ないと、どうなるか
スリムフィットのワイシャツは、
ワイシャツ仕上げ機械にセット出来るため、

ワイシャツとしてお受けする事が出来ます


タイトフィットのワイシャツは、
ワイシャツ仕上げの機械にセットする事が出来ないため、
ワイシャツとしてお受けする事が出来ません


タイトフィットのワイシャツの恐ろしい所は、
「クリーニング店で実際に機械にセットするまで、分からない」
と言う事です

販売した店舗の人も、購入した人も、
クリーニング店でそのワイシャツを受付した人も

「クリーニング店のワイシャツ
仕上げ機械にセット出来るかどうか」
を確認出来ません


そのため、事前にリスクを理解した上で購入する、
と言う事が非常に難しいと思われます

当社ではまだ例がありませんが、
「無理矢理セットすると、破れるのでは」と思うくらいタイトです


クリーニング業に従事する人間の一人として、
スーツもワイシャツも、スリムフィットのものは、あまりお勧めしません

理由は単純で、
「引っ張られる=傷みの原因=寿命が短い」からです

また、スリムフィットのスーツは特に、
生地に余裕がないためシワが寄りやすく

アイロンをきっちり当てても、
その部分のシワが取れないケースが多々あります


ただ、
「細く見せる」と言う事が
最近の流行である事は理解しており

実際に、そのような衣類が売れ筋であると言う
世の中の流れは、否定はしません


ただし、
「スリムフィットの衣類にはリスクがある」
と言う事を理解した上で、購入するようにして下さい

また、ワイシャツは特に、クリーニング店で
「ワイシャツとして、受付をしてもらえない」
と言う対応が考えられます

その場合にどうするのか、まで考えた上で、
スリムフィットの衣類と上手に付き合って下さい


ちなみに、スリムフィット・タイトフィットの
ワイシャツをクリーニングに出して、
シワだらけの状態で帰って来た場合、クリーニング店としては


「衣類の特性によるものであり、
当社に責任はありません」
と主張する事が可能です
(実際にどのように主張するかは、クリーニング店によって様々です)