第百二十一回:「ネットオークションと偽物」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百二十一回は、
「ネットオークションで、衣類を買うことのリスク」について
ネットオークション
前回の「シームレスダウン」と同様、
すっかり定着したサービスです
ニュースで頻繁に
「代金を振り込んだのに、ネットオークションで購入した品物が届かない」
・・・と言う事が、取り上げられています
また、「『正規品』と偽って、偽物を売っていた」
と言うケースもあります
しかし、それが衣類にも当てはまると言う事は、
まだまだ一般に浸透していない、と感じます
ここ数年、「高級ブランド(正規品)」
として出品されている衣類を
ネットオークションで購入してクリーニングに出した所、
破れや縮みなどの事故が・・・と言う事例が、
多くのクリーニング店で発生しています
この場合、原因としては
@正規品ではあるが、
製造から数年が経過しており、単に劣化していた
A正規品ではあるが、
洗濯表示通りに洗うと、破れ・縮みが発生する
B品質が粗悪な偽物であり、
そもそもクリーニングに耐えられない
・・・と言った事が、考えられます
(上記以外にも原因はあります)
消費者側からすると、
「クリーニングに出して、返って来たらこうなっていた」となります
しかし、クリーニング店側からすると
「ネットオークションで購入した衣類を、
『キレイに洗って、必ずこの状態で返して』
と言われても、ちょっと困る」となります
テレビで「クリーニング店とのトラブル事例」
のような特集を見ていると
最終的にはクリーニング店側が責任を認め、衣類の弁償や、
何らかの補償を行ったケースが多いようです
テレビを見ているのは、
圧倒的に「消費者側」の人が多いため、その人達が納得して、
満足するような内容にするのは当然です
しかし、クリーニング店側としても、
そのようなケースが発生する事は想定しており、
大きなチェーン店であれば、まず対策は取っている、
と考えた方が良いでしょう
少し長くなりましたが、ここからが本題です
クリーニング業界で数年前から話題となっているのが、
「高級ダウンの事故」です
クリーニング店によっては、高級ダウンと言われるダウンは、
「無条件で+〇〇〇円」のような扱いになっており
つまりは
「トラブルが起きやすいので、あまり受けたくない」
と言う意思表示です
品質表示通りにクリーニングした高級ダウンが、
破れると言う事例が多数発生しています
「弱くなっている正規品」なのか、「粗悪な偽物」なのかは、
全ての事例を確認する事は困難であるため、断言は出来ません
ただし、「高級ダウンの偽物」が数多く出回っている事は、事実です
高級ダウン、と言われる通り、確かに価格は高めではありますが、
そのようなダウンをネットオークションで購入する事は、
「一回洗っただけで使えなくなり、誰も補償してくれない」
・・・と言う、大きなリスクを抱えています
ダウンに限らず、
高級ブランドの衣類をネットオークションで購入すると言う事は、
非常にリスクが高い、と言う事を忘れないで下さい
ただ、高級ダウンと言われるブランドの製品は、
品質も非常に高いものが多く見受けられます
安いダウンは、どんどん縫い目から羽毛が飛び出て来るのですが、
高級ダウンはあまりそのような事例は見られません
そのため、ダウンに関しては、
「高いモノを買って長く使う」事は、
非常に良い判断だといつも感じています