クリーニング豆知識

第百二十回:「シームレスダウン」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百二十回は、「シームレスダウン」について


シームレスダウン


ここ数年ですっかり定着した製品です
有名なのはユニクロの製品で、
店頭で商品をご覧になった事がある方も、
多いのではないでしょうか

ただし、ユニクロ独自の技術と言う訳ではなく、
多くの会社がシームレス衣類を販売していますが、
「コストパフォーマンスに優れる」と言う意味では、
ユニクロは非常に強みがあるようです


しかしこのシームレス製品

どのような仕組みで縫い目がなく、
どういった特性があるのか、
ほとんど知られていないように感じます


Googleで
「シームレスダウン」と検索すると、
やはり上位にユニクロの製品ページが出てきます

その製品ページによると、シームレスとは

「ステッチではなく、圧着接着テープを使う」
と書いてあります

つまり、縫い目の代わりに
「圧着接着テープ」
で貼り付けている・・・と言う訳です


ここからが本題
クリーニングの業界紙で、
この
「圧着接着テープ」が劣化して剥がれ、

ダウン(羽毛)が下に全部落ちた

・・・と言うケースの報告がありました


ダウンジャケットは、基本的に、
縫い目で複数の
「小部屋」
を作っているような構造になっています

「小部屋」を作ってダウンを閉じ込めておかないと、
羽毛が全部下に落ちてしまうからです

そのため、ダウンにとっては
「縫い目がなくなる」
=「羽毛が下に落ち、製品としての価値が殆どなくなる」

に等しいと言えます

しかし、アパレル業界はいつものように、
このシームレス製品の持つ特性について、
周知を徹底するつもりはないようです

ユニクロのシームレスダウンの製品ページにも、
圧着接着テープは劣化するのか、しないのか

劣化するとしたら、
製造から何年経過したあたりか・・・と言う事は書いてありません

例え製品表示に記述があったとしても、
通販で実際に買って届くまで分からない・・・と言うのは不親切でしょう


そして、
劣化して剥がれてきた圧着接着テープが、クリーニングにより、
完全に剥がれてしまう可能性があります


業界紙の記事では、2016年製造の製品は、
劣化が始まっていてもおかしくはない、とありました

もしシームレスダウンをお持ちの場合、製造年を確認してみて下さい
そして、
製造から2〜3年経過している場合、注意が必要です


また、この
「圧着接着テープの劣化による、ダウンの落下」は、
クリーニングによって剥がれたとしても、クリーニング店側としては

「製品の特性であり、クリーニング店側に責任はありません」
と主張する事が可能です(実際に主張するかどうかは別です)


クリーニングに従事する人間の一人として、
シームレス製品、特にダウンは、あまりお勧めしません

製造から10年経過しても、
絶対に劣化しない圧着接着テープでもない限り、
数年で使えなくなる可能性があります

ダウン製品でなくとも、
「数年で接着した部分が剥がれる可能性がある製品」は、
かなり怖いのではないでしょうか


ただ、ユニクロのシームレスダウンは、
確かに競合品と比較して安いので

「数年使えれば十分」
と割り切って購入する分には、
アリだと思います


しかし、
「ダウンは高い買い物だし、なるべく長く使いたい」
と考えている場合

シームレス製品ではなく、
普通の
「縫い目のある製品」を購入する事を、強くお勧めします