第百十九回:「毛取り」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百十九回は、「衣類に付く毛」について
シミに関しては、普段からとても気を付けているのに、
衣類に付着する毛に関しては、ほぼ無関心
・・・と言うお客様は割といます
シミも毛も、『衣類に付くと厄介』と言う点では同じであるのに、
こうも認識の差があると言うのは
やはり「衣類に付いた毛=洗えば取れる」と言う考えが、
世の中に浸透しているからであると思われます
取れない毛の代表と言えば、
「ワイシャツの上にセーターを着た事により、
ワイシャツに付いた毛」です
洗う事で落ちる毛もある一方、
生地に「刺さっている」ような状態の毛は、中々落ちません
セーターの毛がびっしりとワイシャツに付いた場合、
何度洗っても、毛取りのローラーを何度転がしても、
毛があまり取れていない、と言う事は多々あります
次に多いのがダウンの毛(正確には羽毛)です
ダウンは、縫い目の間から、
羽毛が飛び出して来る場合があります
特にセーターの上にダウンを着ている場合、
飛び出した羽毛が全体に付いている、
と言う事が良くあります
この羽毛も、ワイシャツと同様
「刺さっている」状態である場合、中々取れません
セーターの場合は、
特に刺さった状態になりやすいため、注意が必要です
では、実際に衣類の表面に毛が付着した場合
基本的に、
「表面の毛を粘着ローラーで取る⇒洗う」
で取るしかありません
セーターの場合、
刺さっている状態の毛をピンセット等で抜こうとすると、
セーターの毛まで一緒に取ってしまう事があるため、
あまりお勧めしません
衣類に毛が付くと、
場合によっては二度と元の状態に戻せない事があります
衣類を購入する際、
「この衣類と組み合わせて着ると、毛が付くので注意して下さい」のような、
丁寧なアドバイスが必ずもらえる訳ではありません
上記の「ワイシャツとセーター」や
「ダウンとセーター」の組み合わせはなるべく避ける、
あるいは毛が付いても良いものを組み合わせて着るなど、
自分で注意するしかありません
また、稀にですが、
白い毛がえり部分に付いていて、本体は黒のセーターで
えり部分の毛が抜け落ちて、
セーター部分に付いて目立っている・・・のような
「同じ服の、ある部分の毛が抜けて、
別の部分に付き、非常に目立っている」衣類も存在します
動物の毛を使用している衣類を購入する際には、
全体のデザインを良く確認してみて下さい