クリーニング豆知識

第百十八回:「剥離」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百十八回は、「生地の剥離」について


今までも、そしてこれからも
アパレル業界が、積極的に情報を
発信する事はあまりないだろう、と思われる事の一つに
生地の剥離があります


2枚か、それ以上の生地を
貼り合わせたような構造の衣類の場合、

剥離が発生する可能性があります


衣類の剥離が厄介なのは、
製造から何年経過してから発生するのか、
非常に分かりにくいと言う事です


剥離が発生した場合、
生地と生地の間に隙間ができ、
波打ったような状態になります



また、特にシャツ類のエリ・ソデの場合、
表と裏の生地で収縮率が異なるものがあり

剥離ではな

「内側に引っ張られるように、線状のシワが寄る」
状態になる事があります

剥離の原因としては、
張り合わせた際に使用した接着剤や樹脂の劣化、
繰り返しの着用による生地そのものの劣化、
汗ジミやその他のシミによる脆化(弱くなる状態)などが考えられます


剥離が多く見受けられるのは、
何と言っても
コート・オーバー・ジャンパーです

冬物は特に、表と裏に別の生地が使われており、
どこかの部分でその二枚を縫製したり、
貼り合わせる必要があります


剥離の発生は、購入から数年の場合もあれば、
十年以上経過してから発生したケースもあります

また、品質表示に

「この製品は〇〇加工で作られています」
のような説明が書いてある場合、
その加工部分が劣化・剥離する場合もあります



アパレル側としては、剥離と言う現象は、
基本的に
「存在しないもの」
として扱っていると言う印象を受けます

衣類の剥離は実際に発生するため、
「剥離しません」とは言わない

でも、
「製造から、平均〇年で劣化・剥離する」
と言うデータがあっても、表に出さない

ただし、一部の衣類には

「この衣類には〇〇が使用されており、製造から数年で劣化します」

と書いてあるものもあります

一例を挙げると、
ユニクロのネオレザーなどがそれに当たります


コートやオーバーは高い買い物です

購入する前に品質表示を良く読み、
疑問点があればその場で店員の方に聞いて確かめる
など、
自分で自分の身を守る必要があります