クリーニング豆知識

第百十七回:「誰がアパレルを殺すのかA」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百十七回は、「アパレル業界の新たな取り組み」について


前回の続きです

昔ながらの売り方から抜け出せない百貨店に対する、
アパレル業界の新たな取り組みとは・・・
まずはやはり
「通販」でしょう


衣類の通販と言えば
ゾゾタウンですが、
サービス開始当初はブランド数も少なく、
最初から勢いがあった訳ではないようです

また、当時はアパレル業界全体にも、
まだまだ
「服は手に取って、試着して買うモノ」と言う空気があり、

これだけ通販が浸透した現在でも、そのような考え方は、
売る側・買う側の双方に根強く存在します


また、今ではアパレル通販大手となったゾゾタウンですが、
スマホアプリを使用した取り組みを
一年も経たずに終了するなど、失敗もしています

ただ、この
「とにかくやってみよう」と言う精神が、
ゾゾタウンをここまで成長させた、
とも言えるのではないでしょうか


ゾゾタウンは、2017年末より、
プライベートブランド(PB)の取り扱いを始めるそうです

しかし、「安くて品質が良い」と言う点では、
既に
ユニクロと言う王者が存在するため

いかにゾゾタウンと言えど、独自色を打ち出さない限り、
かなり厳しい戦いになると思われます


勝機があるとすれば、ヒートテックのような機能性と、
デザインを兼ね備えたような衣類が一例として挙げられます

機能性やデザインの優れた衣類は、既にたくさんあります
両方を兼ね備え、かつお手頃な価格の商品が大量に登場した場合・・・
ユニクロはどうするのでしょうか


次は
「TOKYO BASEと言う会社

一般的なアパレル商品の原価は
20%程度と言われていますが、
この会社の商品は、原価率が
50%と非常に高く、
またセールに頼らず定価で売り切る事を前提としています

原価率が高いと言う事は、
価格の割に高品質、と言う事です



また、国内の工場と直接取引をして、
通常であれば半年程度かかる
「発注⇒納品」の期間を二〜三か月に短縮
その上で、
「今、売れる商品をすぐに作って売る」と言うやり方です

そして、取り扱うブランドのうち、
定価販売で売れた量が全体の六割以下のブランドの商品は

次回以降入荷しない、と言うルールがあり、
年間で一割程度のブランドが入れ替わるそうです

このやり方は、
「まずは高めの価格で売り、セール価格で売り切る」と言う、
百貨店のやり方とは対照的です

TOKYO BASEの創業者は百貨店の創業一族で、
以前より百貨店のやり方に疑問を持っていたとの事

気になった場合、
一度両者のホームページを一度ご覧になって下さい


ただし、あまり知られていない事ですが、
百貨店にも上得意客向けの

「通販のような仕組み」
は昔からありました

百貨店により細かい仕組みや呼び方は違うようですが、
通算で一定額以上の(おそらくはそれなりの)衣類を購入した場合、
「こちらからお伺いしましょうか?」
百貨店側から「お声がけ」される事があるようです


同意した場合、季節の変わり目などに百貨店側の人が、
「この方は、このような服が好みではないだろうか」
と思われるものを見繕い

お宅に伺い、「今年はこのような新作が出ていますよ」と言います
その中から、「じゃあ、これと、これを買います」と言った場合に、
取引成立(しない場合もあるでしょう)


百貨店の地下食品売り場や、
物産展は相変わらず盛況であり、集客力はあります
「何か用事があれば、行く事はある」
と多くの人に思われている。これは、とてもすごい事です

しかし、その人の動きを衣類の消費に繋げられない
衣類に関しては、今のやり方を続けている限り、
百貨店の売上が回復する事はないでしょう


他にも、「誰がアパレルを殺すのか」では、
アパレル店舗で働いている人の置かれている状況や、
アパレルに関わる人達のインタビューなど、内容は多岐に渡ります

最近のアパレル業界を知るにはうってつけの本の一つであるため、
もし興味を持たれた場合、是非読んでみる事をお勧めします