第百十四回:「新・旧表示比較」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百十四回は、「二つ品質表示が付いている衣類」について
新しい洗濯表示、『新JIS表示』が導入されてから、
半年以上が経過しました
思っていたよりも普及が早く、
新JIS表示の衣類が既に何割かを占めています
衣類の買い替えサイクルが、10年前、
20年前と比較して非常に早くなっている事を感じます
また、
製造:新JIS導入前
販売:新JIS導入後
と言う衣類もあるようで、
「新・旧二つの品質表示が付いている衣類」を良く見かけます
そのような衣類の、二つの品質表示を見比べて感じるのは・・・
「旧表示が、いかに製造側の
都合で付けられていたか」と言う事です
具体的には、
旧表示:水洗い不可
新表示:家庭洗濯可、あるいはウェットクリーニング可
・・・となっている衣類が、非常に多く見られます
これでは、「本当は水洗い可能だけれど、
日本人は神経質だから水洗い不可にしておこう」
と言う考えで付けられた表示ではないのか?
と思われても仕方がないでしょう
また、海外の表示では「水洗い:可」とされているのに、
一緒に付けられている日本語の品質表示には、
「水洗い:不可」となっている衣類もたくさんあります
旧表示は「指示(推奨)表示」と呼ばれるもので、
衣類の特性と合わせて、
製造側の考えを取り入れた表示を付ける事が可能でした
新表示では「衣類の特性に合わせた表示」となり、
製造側の都合で表示を付ける事は難しくなっています
では、新JIS表示の導入により、
品質表示通りに洗えば絶対に間違いないか?と言えば、
そうでもないと思います
ポイントは、「マークの下の二本線」です
洗濯機での洗濯、あるいはクリーニング店での
ウェットクリーニングの表示の下に、
「横向きの二本の線」が入っているものがあります
これは、洗濯機の場合は「非常に弱い洗濯」、
ウェットクリーニングの場合は「非常に弱い操作」を表しており、
クリーニング店で相当気を付けて洗っても難しいのではないか、
と言われています
つまり、品質表示通りに洗濯機での洗濯、
あるいはウェットクリーニングをした結果、
縮み・色落ちが発生したとして
品質表示にこの二本線、あるいは一本の線
(=弱い洗濯・弱い操作)が付いている場合は、
「弱い力で洗わなかった事が原因」とも言えます
品質表示の、水の入ったおけ(=洗濯機での洗濯が可能)、
あるいは、〇の中に「W」の文字
(=クリーニング店でのウェットクリーニングが可能)の下に、
「横向きの二本線」がある場合
「非常に弱い力で洗濯する事を想定された衣類」であり、
数回、あるいは一回洗濯しただけで、何らかの形態変化や、
色落ちが発生する可能性が無いとは言えません
衣類を購入しようとした場合
出来れば品質表示を必ず見て、
そのような事を考慮した上で、購入するようにして下さい