クリーニング豆知識

第百十三回:「ボックス」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百十三回は、業界用語で言う所の「ボックス」について


前回の続きです
まずはこちらの写真から




この機械は、業界で「ボックス」などと呼ばれるものです

この機械で何をするのか

前回の「最低料金の罠」で、

「ウール・ポリエステル以外の衣類は、割引価格で受けたくない」
と言う

一部のクリーニング業者側の思惑が、
割引チラシから透けて見える、と言う事を説明しました
それは何故か


通常では、ドライクリーニングの後、
洗い上がった衣類はハンガーに吊るされ、
この
「ボックス」に入れられます

何故そうするのかと言うと、
ドライクリーニングの工程に
「乾燥」は含まれていますが、
分厚い冬物衣類は特に、

ドライクリーニング用の洗剤(『溶剤』と呼びます)
が落ちきらない場合があるからです


そのような状態で着用すると、
皮膚に触れた部分が炎症を起こす
(化学火傷と言います)危険があるため

ボックス内で蒸気を十分に当てて、
衣類に残留した洗剤を
『揮発』させる必要があります
そして同時に、蒸気により全体のしわを伸ばす工程でもあります


実はここから、

「ウール・ポリエステル以外は、割引価格で受けたくない」
に繋がります

ウール・ポリエステルの衣類を、
ハンガーアップしてボックスに入れると、かなりしわが取れます

衣類によっては、
ほとんどアイロンをかける必要がない程です


そのため、ウール・ポリエステルの衣類は、
クリーニング業者からすると

『大量に集めてもそこまで手間がかからない、
都合の良い衣類』
と言えます(例外もあります)

逆に、綿や麻のような素材の衣類は、
ボックスに入れてもかなりしわが寄っているため、
しっかりとアイロンがけをする必要があります


今度、店頭やポストに入っていたクリーンニング店のチラシを見た際、
特に、
「ドライ品全品〇〇%OFF!」
などと大きく書いている安売りチラシの場合には

下の方に小さく書いてある(であろう)
「割引対象外の素材・衣類」に注目してみて下さい

そのお店の、
「こういう衣類を持って来て欲しい」
あるいは「持って来て欲しくない」が、
透けて見える事があります