第百十二回:「『最低料金』の罠」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百十二回は、業界の抱えるジレンマと言える、「最低料金」について
クリーニング店のセールのチラシを目にした際、
下の方に小さく書いてある注意書き
・・・を良く読んで見ると、そのお店の立ち位置が分かります
(もし、何も注意書きがない場合、
注意事項が本当にない場合と、
意図的に書いていない場合があります)
基本的に、クリーニング店のチラシは
「セール開催中!〇〇が××円」と、
価格を前面に押し出している場合がほとんどです
そして大抵の場合、下の方に小さく
「上記料金は最低料金です」や、
「素材が○○・××・△△の衣類を除きます」などと、
注意事項が表記してあります
この注意事項が、そのお店の
「やって欲しい事」・「やって欲しくない事」が出る部分です
消費者にとって、この「最低料金」と言う考え方はとても分かりづらく、
クリーニング業界の人間としても認識しています
しかし、素材や付属品によって洗い・仕上げの手間が違う以上、
料金を頂かない訳にはいかないと言う、正にジレンマです
注意事項を良く読んでみると、
「〇〇が××円!」の価格そのままで受けてもらえるケースは、
それ程多くはない事に気が付くのではないでしょうか
水洗い品、ベルト付き・フード付きは
追加料金、綿・麻・絹・その他合成素材・合成皮革
・・・を含む衣類はセール対象外などなど
例外もたくさんありますが、安売りの店舗は特に、
「付属品なし・素材が毛(ウール)・
ポリエステル以外の衣類は、セール価格で受けたくない」
と言う考えが透けて見えるチラシを良く見かけます
これは何故かと言うと、毛(ウール)・ポリエステル素材の衣類は、
基本的に仕上げの手間がかからないからです
クリーニング店のチラシで
「ドライ品全品〇〇%OFF!」となっており、
注意事項に特定の素材の衣類は対象外とある場合
「ドライクリーニング可能な、
特定の素材の衣類以外、割引価格ではやりたくない」
と言うメッセージです
逆に、水洗い品や素材の指定も細かく書いていない場合は、
「ドライ・水洗いに関わらず、
品物を幅広く、たくさん集めたい」と考えている場合か
「実はセール対象外品がたくさんあるけれど、
書ききれないので書いていない」ような場合があります
このように、チラシにはそのお店の
「自分達は、このような人達をターゲットにしている」と言う考えが、
透けて見える事があります
「とにかく安く。ただし利益の出る衣類だけ」とか、
「少し安く、幅広く」とか、
「これだけは自信があります!ちょっとだけ割引」とか
チラシの注意事項を読むと、そのお店の価格に対する考えを、
ある程度読む事が出来ると言えるでしょう
では、何故ウール・ポリエステル素材の衣類は手間がかからないのか
そのような衣類に、どのような仕上げをしているのか、
あるいはしていないのか、長くなったので次回に続きます