第百十一回:「クリーニング用品」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百十一回は、「クリーニング事業者用の備品」について
クリーニング業者は、どんな洗剤やシミヌキ剤を使用しているのか
結論から言うと、
市販しているものと、そこまで大きく違いはありません
日本で市販されている、家庭用洗剤やシミヌキ剤は、
品質が非常に高く、しかも比較的安価です
この点において、日本人は世界でも
稀に見る程恵まれている、といつも思います
当社で使用している機材や備品、洗剤・シミヌキ剤は、
基本的に、ドライクリーニング関連は
ほぼ完全に事業者向けのもの、
水洗い関連は、
事業者向けと市販のものを使い分けています
家庭用のドライクリーニング機器と言うものは、
少なくとも国内では存在しないため、
「ドライクリーニング関連=クリーニング事業者向け」
と断言して良いかと思います
ドライクリーニング用の機械もそうですが、その機械用の洗剤、
汚れを吸着するフィルター、機械を動かすには蒸気が必要なため、
蒸気を作るための蒸気ボイラー用の助剤などがこれに当たります
しかし、水洗い関連では、市販のものを多く使用しています
ドラッグストアやスーパー、100円ショップで販売している、
シミヌキ剤、洗剤、ブラシ、スコットタオルなどがそうです
ドライクリーニング関連の備品は、クリーニング事業者向けの、
いわゆる「卸売り」の業者に発注をしていますが、
水洗い関連は、すぐ近くのスーパー等で買える事もあり、
切らした時の事を心配する必要がありません
ただし、サビ用のシミヌキ剤や、
シミヌキに使用するブラシ、洗う際に使用する洗剤
などは、事業者向けのものを使用しています
洗剤は、ワイシャツを白く見せる「蛍光剤入り」の洗剤と、
ワイシャツ以外に使用する「蛍光剤なし」の洗剤を使い分け
ズボンの汗取りや、汗ジミの付いた
ドライクリーニング品を漬け込むための洗剤を、
その二つとは別のものを用意しています
クリーニング業者と言っても、
少なくとも水洗いそのものに関しては、
家庭洗濯の延長線上にあると思います
ただし、40℃のお湯による洗浄(ワイシャツ)、
様々なシミヌキ剤による事前のシミヌキ、軟水の使用、
そして何より職人によるプレスなど、
家庭では真似する事が難しい要素を積み重ね
「クリーニング店ならではの洗い・仕上げ」が出来ています
市販されている洗剤やシミヌキ剤でも、
一部はクリーニング店と変わらない洗いが可能です
是非、市販されているシミヌキ剤と洗剤を組み合わせ、
「自分なりの洗濯方法」を模索してみて下さい
特に、ワイシャツのエリ・ソデの前処理剤、
デリケートな素材も洗える中性洗剤の二つは、
とても優秀な商品だと思います