クリーニング豆知識

第百十回:「前たて」

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第百十回は、「縮んだワイシャツの見分け方」について


比較的長く着ているワイシャツをお持ちの場合、
ハンガーにかけて、前の
「ボタンのある部分」「ボタンをはめる部分」
の長さを比較してみて下さい


ボタンをはめる部分は、
クリーニング業界では
「前たて」と呼ばれる事もありますが

その前たての長さと、
ボタンの付いている部分の長さがはっきりと違う場合・・・・
そのワイシャツは、縮んで来ています

また、えりの裏側と、
袖カフスの裏側にはっきりとしたシワが寄っている場合も、
縮みのサインです


これは、
「ボタンのある部分」「ボタンをはめる部分」
「えりの表側」「えりの裏側」
「袖カフスの表側」「袖カフスの裏側」で、
収縮率が違うからです

水洗い可能なズボンの脚部分が、
よく
「縫い目に引っ張られるように縮んでいる」
のも、このためです

えりも袖カフスも、一枚の布ではなく、
二枚の布を張り合わせて出来ています

その二枚の縮む割合が違うため、

「早く縮む方」
に大きなシワが寄る状態になります


では、そのような
「前たて部分の縮んだワイシャツ」を、
ワイシャツの仕上げ機にかけるとどうなるか
前たて部分に、波打つようなシワが出来ます

当社のワイシャツ仕上げ機は、
この
「前たての縮み」をある程度伸ばす機能がありますが

完全に元に戻せる訳ではなく、前たてが大幅に縮んだワイシャツを、
縮む前の状態に戻す事は出来ません


もし、お持ちのワイシャツをハンガーにかけてみて、
「ボタンのある部分」
「ボタンをはめる部分」の長さがかなり違っていたら
えりの裏側袖カフスの内側に、
大きなシワが多数寄っていたら

それは、
「縮みのサイン」です


ワイシャツをクリーニングに出して帰って来て、
もし、ボタンをはめる部分に沿って、
波打つようなシワが寄っている場合、
前たての縮みが原因の一つではないかと思われます

そのような場合、その部分を気にせずまだ着るのか
寿命だと思い処分するのか

自分なりの基準を作っておくと、
いざと言う時に
「着るワイシャツがない!」
と慌てる事もないでしょう