第百九回:「市場を奪う」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百九回は、「大手チェーンのやり方」について
以前に流通新聞で、
「東京チカラめし」と言うチェーン店についての、
非常に興味深い記事がありました
東京チカラめしが、
@「焼き牛丼」を目玉商品として、
大手牛丼チェーンの寡占状態に食い込む
A大手チェーンが、その「焼き牛丼」を一斉に真似する
B東京チカラめしの作り出した、
「焼き牛丼」と言う市場が、大手チェーンに根こそぎ奪われる
・・・と言う、一連の流れについての記事です
食べるラー油・塩キャラメル・「濃い味」系スナックなど、
ヒットした商品はすぐさま類似の商品が出ます
その際、ヒット商品を作り出したのが大手メーカーであれば、
「元祖」として定着する事があります
しかし、それが中小メーカーであった場合、
上記のような「根こそぎ市場を奪われる」と言う事が発生します
当社としても、これは他人事ではありません
セールやキャンペーンを実施する際、
「大手と正面からぶつからない」と言う事を考えます
例えば、ダウンウェアの割引キャンペーンは、
多くのクリーニング店が行っています
しかし、一部大手のような「ダウン一律〇〇円」のようなセールは、
当社は実施していません
長さで価格を分け、その上で割引をしています
また、一部大手に見られる「ブランドによる別料金」
は設定していません
ワイシャツ回数券は、大幅な割引にはせず(実質9%割引)、
あくまで、「まとめて先払いにする事で、
少しお安くなります」と言う形にしています
当社のような小さな会社が、
大手と価格で勝負して、勝てる訳がないからです
大手は、新店のオープンキャンペーンで大幅な割引をしても、
他店の売上でカバーする事が可能です
店舗が一つである当社は、そのような取組は出来ません
しかし、大手にも弱点があります
店舗にいるのはパートさんであり、
実際に洗い・仕上げ・シミ抜きをしている人ではありません
当社では、そのような作業に従事した経験のある人間が、
ほぼ常駐しています
そのような、「大手の隙間を突く」ような事を、
一つ一つ積み上げて行くのが、当社のやり方です
東京チカラめしは、大手に正面からケンカを仕掛け、
大手が真似出来る事をしてしまったのだと思います
では、先月に引き続き「視点を変える例題」です
上記のような、「中小メーカーが作り出した市場を、
後から来た大手が根こそぎ奪った」
と言う例は、他にどのようなものがあるでしょうか
例えば、セブンイレブン・イトーヨーカドーのプライベートブランド、
「セブンプレミアム」の商品を見ていると、
「今、これが売れており、この市場を狙っている」と言う事が分かります
そして、セブンイレブンの100円コーヒーは、
他のチェーンやコーヒー専門店が作り上げた市場を、
「大手チェーンでは最後に来て、
シェアを奪っていった」と言われています