第百六回:「新JIS表示A」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第百六回は、いよいよ変更となった「新JIS表示」についての後編
2016年12月1日より、「新JIS表示」が実施されました
その後、マスコミで大きく取り上げられる事もないため、
大きな問題はまだ起きていないものと思われます
それでは、新JIS表示となり、このコラムでも何度か取り上げていた、
「洗う事を前提としていないような、おかしい服」
は市場から一掃されるのでしょうか
結論から言うと、そんな事は全くなく、
むしろ今後ますます増える、と見ています
今の10代〜20代の若者から、
圧倒的な支持を得ているブランドは・・・と言うと、ないそうです
もはや、「みんなと同じ」ではなく「私だけの」
を誰もが持つ時代となり、ある特定のブランドが、
圧倒的なシェアを獲得する時代ではない・・・と言う記事を、
流通新聞や本で度々目にします
そうなると、ユニクロのように
「ムーブメントを作り出す」ような事が難しい中小のブランドは、
「他にはない奇抜なデザイン」の服を作り、
一部の狭い層の支持を得ようとします
そして、その服の一部には、
洗う事を想定していないような品質のものが、必ず出て来ます
このコラムでも何度かお伝えしていますが、
クリーニング業者として
「これはちょっと危ない」と思うのは
・水洗い出来ないシャツ・ブラウス
(=汗・皮脂が落ちない=いずれ変色して出て来る)
・上と下で極端に色合いが違う生地を、張り合わせている
(=色移りする場合がある)
・洗うだけで壊れそうな、装飾品が付いている
(=しかも縫い付けてあり、取れない)
・表示通りに洗っただけで取れるようなビーズが、大量に付いている
・・・のような衣類ですが、上記以外にも多くのパターンがあります
これらの服は、当然ですが品質表示に
「この服は、一度洗うと着られなくなりますよ」
などと書いてありません
ごく普通の洗濯マークが付いており、
「繰り返し洗って、お使いになれます」
と言うイメージを、普通は受けるでしょう
しかし、これまで様々な
「問題あり」な衣類を見て来た経験上、
「外観を見て、品質表示を見て、
『これは怪しい』と見当を付ける」と言う事は、
完全ではありませんが可能です
具体的には、外観に関しては、
上記の「これはちょっと危ない」で挙げた条件に加えて、
・品質表示に、洗濯マークと
一緒に書いてある注意事項が、非常に多い
「○○しないで下さい」が列挙されており
、しかも全て守るのは、現実的に不可能
・品質表示の洗濯マークの部分だけ、
「上から貼り付けた」ような形になっている
海外の製品を、日本で販売する際に、
表示部分だけ変えているような場合もあり
・品質表示が手書き(本当にあります)
ただし、試供品の場合もあり
・・・のような衣類には、注意が必要です
おかしな衣類を製造・販売する企業は、
自然に淘汰されて行きますが、
同じ事をする企業が必ず現れるため
今後も、そのような衣類が「多少減る」事はあっても、
「根絶する」事はない、と考えています
知識を身に着け、自分で自分の身を守るしかありません
また、世界のアパレル企業トップ3と言えば、
Gap・ZARA・ユニクロですが、
ユニクロにおかしな衣類はあまりないものの、
GapとZARAの製品は、
「日本人の感覚からすれば、おかしい」と感じるものが、
稀にですがあります
衣類を世界中で製造している現在、
「このブランドなら絶対安心」と言えるものはありません
とは言え、考え過ぎると何も買えなくなってしまうため
「自分の好きなブランドの中から、
外観をチェックして、
品質表示を良く読み、納得した上で買う」
と言うのが、現実的な対応かと思われます