オオカミ少年・七人の侍・浅田農産のリスク管理を比較

 

 リスク管理の重要さは、昔から言われておりますが、

 「自分たちは大丈夫」と勝手に判断している個人・経営者・役人・政治家のなんと多いことでしょう。

 リスクの定義は、次の通りですが、これを頭に入れてから、下表の比較表をご覧下さい。

 リスクの定義:企業自ら、もしくは外部からの要因により発生し、企業自体、関連企業、消費者、社会に損失・損害を与える全ての事態

 

リスク管理の失敗例と成功例比較表

2004/03/09

 
オオカミ少年
七人の侍
浅田農産
背景状況

何年か前に、オオカミが集団で村を

襲ったことがある。

1年前の刈り入れ後、野武士に

襲撃され米や女性を奪われた。

海外や国内で鳥インフルエンザが発生

していることは知っていた。

危機の発生防止

のために

手を打ったか

少年が「オオカミが来た」と

叫んだ時に、

オオカミが来る可能性があることを

無視して何もせずに村長をはじめ

とする村人は家に戻った。

危機の発生防止をしなかった。

次回も来ると予測、

リスクの回避が不可能なので

危機の軽減を考えた。

長老と村人が侍を雇った。

制度(組織)を作り、

柵を設置(ハード)し、

襲撃に対して訓練をした。

鳥が日に日に死んでいくのを見ても

周囲の簡単な消毒を行なっただけで、

行政へ連絡するなどの法的義務を守らなかった。

社会に対する責任が欠如していた。

自社の損失防止のためという自己中心的な

危機意識しか無く、

弱った鳥の出荷を優先させた。

危機発生

村としては突然の襲撃で

少年と羊だけでなく、

恐らく多くの人が死傷した。

最小限の損失・損害で

リスクを脱した。

鳥インフルエンザが蔓延し、大量死となり、

行政から全ての鳥の殺処分という

行政命令を受けた。

刑事告発を受ける可能性が強い。

事後対応

大変な事後対応になった。

その後の情報が全くないので、

恐らくその村は全滅したと思われる。

荒らされた箇所を修復し、

安定した村に戻す、

安全の体制を維持する。

会長夫妻が自殺するなど最悪の事態となった。

社会的信用の失墜に加え、

世間・マスコミからの批判が後を絶たず、

恐らく事業の継続は困難と思われる。

勤務していた従業員の生活、

他社の経営の安定性をも奪ってしまう結果となる

可能性がある。

評価
少年、村人ともに悪い!

雇われた浪人たちの

実力がなかったら、

悲惨な結果となったかもしれない

危うさはあったが、

結果はめでたし、めでたし。

企業のリスクということを

全く考えていない経営者の典型である。

 

また、ここに追加しなくてはいけなくなりました。

2004/03/30

 
三菱ふそう
森ビル(三和シャッター)
背景状況

タイヤと車軸を接続するハブと呼ばれる、

重要保安部品の破損事故が続出した。

(重要保安部品:廃車まで無破損が条件)

注目を集める大型商用ビルで、開店1年間で32件もの

回転扉に挟まれる事故が発生していた。

危機の発生防止

のために

手を打ったか

数十件に及ぶ脱落事故について、

ユーザーの整備不良が原因であるとし、

自社の責任を認めてこなかった。

社内には自社責任を問う声もあったようだが、

リコールによる費用負担の発生を嫌い、

自社に責任はないと押し通してきた。

挟まれ検知センサーはあったが、誤作動による頻繁な停止が

営業面で支障を来すとの判断で、検知範囲を狭めていたところ、

小学校入学前の男児が頭を挟まれ死亡するという事故が発生した。

多くの類似トラブルが起こっていたにも拘わらず、

来訪者の安全よりも、誤作動による停止を避けるという

本末転倒の対策がとられていた。

ビル会社、メーカーともに関係会社に業務を委託していたこともあり、

検知範囲の変更について双方の意見が食い違っている。

警察は業務上過失致死容疑で捜査を始めた。

危機発生

脱落したタイヤが女性を直撃し死亡事故となり

マスコミや警察が問題視した。

最近になって後輪用のハブにも問題があることが判明し、

これについても近々リコール届けが出されるとの

報道があった。

ハインリッヒの法則通り、

重大(死亡)事故につながりかねない軽微な事故が

32件も発生していたのに、安全点検や対策の手を

打たなかったため、幼い男児が死亡するという悲劇となった。

ハインリッヒの法則とは重大事故軽微な事故顕在化しない事故 

                 1  :   29  :  300

事後対応

国土交通省からの指摘により、

やむなくリコールを行う事とした。

(指摘を受けての事後対応)

重要保安部品の不具合を放置しリコールを怠った

(行動が遅れた)事に対して、

自動車メーカーとしての信用が堕ち、

世間やマスコミの批判にさらされ、現在も続いている。

一部ユーザーの不買行動も考えられ、

三菱グループとしては二度目のリコール隠しとなり

ダメージは相当に大きい。

被害者が幼い子供ということもあり、世間やマスコミは

ビル会社とメーカーへの非難や追及の手をゆるめていない。

回転扉に関する安全基準が不備であったこともあり、

国としても基準の検討が行われる可能性がある。

全国各地の同様な回転扉の点検等が行われているのかどうかは

不明である。

「死人が出るまで改善の手が打たれない」という悲しい悲劇が

また繰り返されたのである。

初めて起きた事故が死亡事故になったわけではなく、

目に見える予兆事故が32件もあっただけに

「打つ手はあった」と悔やまれる事故である。

評価

自動車メーカーにとってリコール隠しは

最も恥ずべき行為である。

社内の報告体制やコンプライアンス意識の低さなど、

風土とも思える流れの悪さを感じる。

過去1年間に32件もの挟まれ事故が起きたのであるから、

事故内容の分析や安全装置の再点検、改造・改善、

もしくは一時的な使用中止等の手は打てたはずである。

営業中心の考えが、それらの対策に優先したためであろう。

この代償は高くつくはずである。

 

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