ブラックユーモア
サーカスの馬
ある日、地方廻りのサーカスの団長のところに電話がかかった。
『もしもし、サーカスの団長さんですか』
「そうですが」
『言葉を話せる馬がいるのですが、サーカスで使ってくれませんか』
「何を馬鹿なことを言っているんだ。私は忙しいんだ、電話を切るよ。ガチャンッ。」
しばらくしてまた電話のベルが…・・
『先程の者ですが、ウソではないんです。本当に話せるんです。』
「うるさい! ガチャンッ。」
しばらくしてまた電話のベルが…・・
『本当なんです、電話を切らないで。』
「いいかげんにしろ。二度とかけてくるんじゃないぞ。」
『お願いです、電話を切らないで。"ひづめ"で何度もダイヤルを回すのは大変なんですから!!』
砂漠を旅する青年と占い師
"らくだ"に乗って、砂漠を横断しようとしていた旅人の青年の前に占い師の老婆が現れた。
老婆は青年が頼みもしないのに、『お前がこの砂漠を横断するとき、この"らくだ"が"おならを3回する"だろう、
そうして3回目のおならと同時にお前は死ぬだろう。』と予言した。
青年は鼻で笑い、その老婆を相手にしなかった。
どれほどの距離を進んだだろう。
果てしなく続く砂漠…・・
青年はふと、占い師の老婆の言葉を思い出した。
「"らくだ"だって生きてるんだもんなぁ、おならくらいするさ。」
「いったい、あの老婆は何だったんだ」
そうしてしばらく進んでいると、突然"らくだ"が『ぷーっ』と大きなおならをした。
青年は、思わず笑ってしまった。
そのまま、青年は旅を続けていたが、なんとなく老婆の言葉が気になり出した。
孤独は人を不安にする。
「この砂漠の旅はあと何日も続く。もしかしたらあの老婆の言葉は本当かもしれない。」
気になり出すと、青年は恐くなってきた。
「どうしよう?」
その時、青年の目に入ったのは"らくだ"の足元に落ちていた小石だった。
「そうだ、おならが出ないようにすればいいんだ。」
青年は、その小石を拾い、"らくだ"のお尻に『詰めた』。
これですっかり安心した青年は、晴れ晴れとした気持ちで旅を続けた。
小石のことなど忘れていた頃、『ぽーんっ』という大きな音がして、青年はびっくりした。
「何の音だろう?」
「もしかしたら?」、その通りだった。
お尻に詰めていた小石が、2回目のおならで飛ばされた音だった!!
さぁ、青年は恐怖に襲われた。
「この"らくだ"があと1回、おならをしたら俺は死ぬんだ」
「もっともっと大きな石を詰めなくては」
青年は砂漠で大きな石を探し回った。
そうして、前よりずっと大きな石を見つけ、やっとのことでおしりに『詰めた』。
"らくだ"はいやがり、青年はあやうく蹴飛ばされるところだった。
青年は、詰めた石の大きさにすっかり安心し、旅を続けた。
何日もそうして旅を続けた。
その間、"らくだ"は、ウンコができなかった。
青年は、何度も"らくだ"から降りては、尻尾を持ち上げ『詰めた』石の状態を確かめた。
気のせいか、「なんだか石が押し出されてきているよう」に見えた時は、手で押し込んだ。
そういうことを繰り返し、その時も点検の為に"らくだ"から降りた。
尻尾を持ち上げ、石を点検しようとのぞきこんだちょうどその時、"らくだ"が3回目のおならをし、
大きな音と共に飛び出してきた石が勢い良く青年の眉間に当たり、青年は即死した。
老婆の予言はなぜか、的中した。
アパート少年
密集したアパートに一人の少年が住んでいた。
深夜になると、大声で『火事だぁ、火事だぁ』と騒ぎ、住民を起こす。
毎夜、毎夜のことで住民も相手にしなくなった。
そうして、ある夜、またあの少年の声で『火事だぁ、火事だぁ』。
すべての住民が、そして少年の親さえもが『無視』した。
火事は本当だった。
少年はただひとり助かり、少年の叫びを信用しなかった住民はすべて焼け死んだ。