アルバイトの想い出 (長文ですからお覚悟を!)

 このHPの数箇所で、高校時代にエレキギターに夢中になっていたことを書いています。

 ’64年頃かな、当時はエレキギターもギターアンプも高校1年生にとってはとても高価でした。

 クラスの同級生は、ギターアンプなら自作出来る、出力トランスが少し高いが自作なら格段に安く作れる、と盛んに言っておりましたが

 ベンチャーズ・ファンとしては、リバーブやトレモロなどのエフェクター無しの「単に大きな音が出る自作の箱」では満足できません。

 父親の紹介で、営林署のアルバイトを始めたのはそんなギターアンプを買うためでした。

 アルバイトは毎日やるのではなくて、夏休み、冬休み、春休みに連続的にやりました。

 クラスの親友を誘って、固定メンバーは3名、多いときは6名くらい。

 私が元締め!

 高校の3年間はギターアンプを手に入れた後もすべて営林署のアルバイトをやりました。

 

 北海道の営林署の「夏」の仕事

 『松の植林後の下草刈り』、これだけです。

 高校生だけでなく、おばさんやおじさんも雇われてきていて、20人くらいで一組です。

 夏は、雑草の成長が驚くほど早く、植林したばかりの松は、すぐ雑草の陰になってしまい、十分な「日光浴」が出来ないばかりか

 雑草に養分を取られ成長が遅れます。

 そこで、松の周囲の雑草をすべて刈り取るのです。

 松は、平地に植えられているわけではありませんから、山の斜面に横一列に等間隔で並び、まっすぐ上に雑草を刈りながら登って行きます。

 使用する『鎌』は、身長と同じくらい長い柄の付いたもので、稲刈り用の鎌とは違います。

 熊笹や小枝、時には小石などにも刃先が当たりますから、鎌はすぐに「切れ味」が鈍ります!

 それに、北海道とはいえ、かなりの急斜面を鎌を振りながら直登するわけですから、大汗をかき、息が上がります。

 だいたい30分毎に、監督から『鎌研ぎ〜!』という声がかかります。

 座り込んで、汗を拭き、喉を潤し、鎌を研ぐのですが、当然ながら山中に水があるわけではありませんから、各自が「飲み水」と「鎌研ぎ用の水」

 を背中のリュックに入れています。もちろん、『砥石』も!!

 その他に、お弁当もありますから、そこそこの重さです。

 人間の注意力が持続するのは、いろいろな実験からもわかってきていますが、『30分』程度です。

 そういうことをわかっていたのかどうかは定かではありませんが、営林署の監督は、いいタイミングで『鎌研ぎ〜!』という声をかけてくれます。

 雑草の背の高い場所では、下がよく見えませんから、つい『植林した松』を刈り取ってしまうことがあります。

 みんなより数十m離れて、営林署の監督がチェックしながら登ってきます!

 あわてて、切り取ってしまった松を、地面に差し込んだことは、・・・・何度もありました!

 今ではそれなりに太くなっていると思われますが、遠くから見ると、私の登っていった斜面は「歯抜け」のようになっていることでしょう!

 私が北海道の山に残した「芸術作品」です!

 同じような雑草の深い場所で、大きなヘビや、子ウサギの頭を刈ってしまったことも・・・・・・・・

 鎌の手ごたえが違うのですぐわかるのですが、子ウサギにはかわいそうなことをしてしまいました!  合掌。

 この作業の、『お手当て』は、『日給600円』でした!(時間給ではありませんよ)

 北海道の学校の夏休みは短くて、8月20日ころで終わります。(冬休みが多少長い)

 約一ヶ月間、アルバイトが続きます。

 もちろん、雨の日は作業はやりませんが、営林署には出勤します。そしてお茶を飲ませてもらって天気の様子を見て、監督が

 「今日は作業中止」ということになると、帰宅です。

 最初はわかりませんでしたが、給料日には「作業中止になった日の日給は6割支給」されていました!

 「出戻り6分(割)」ということだったんです。

 ですからどんな大雨でも営林署には行きました!!

 これはここの営林署でアルバイトをやった3年間、すべてそのように配慮してくれました。

 おそらく、父親の紹介だったので配慮してくれていたのでしょう。

 

 北海道の営林署の「冬」の仕事

 冬は雪が深く、山に入ると身動きが出来ません。

 春に伐採して切り出してきた木材を、定尺に切り、積上げている貯木場があるのですが、そこでの作業が主体です。

 「金鎚」が「印鑑」になっているようなものを想像してください!!?

 要するに、所管する営林署のマークを、木材の断面(切口)に釘を打つ要領で押印していくのです。

 材木はかなりの高さまで、積み上げられていますし、凍っている部分もあるので、注意が必要です。

 しかし、ずいぶん単調な作業でした。

 この作業のときは、一日がずいぶん長く感じられたものです。

 吹雪の日は、記録の整理をやった記憶もあります。

 今思えば、あの当時にエクセルがあれば集計もあっという間だったろうなぁ、と。

 

 北海道の営林署の「春」の仕事

 春休みのアルバイトが一番変化に富んでいて、営林署としてもやるべきことがたくさんある季節でした。

 3月の中旬になると、気温が上がり雪が締まってきます。

 山に入っても、腰まで沈むようなことが少なくなり、カンジキをつけておけばかなり自由に行動できます。

 さらに、伐採した木を麓まで降ろしてくるにも、締まった雪が大切な役目を果たしてくれます。

 雑草や小木はまだ雪の下ですから、邪魔物がなく、熊もまだ冬眠から目覚めてはいませんから、この時期は山での活動が一番楽なのです。

 営林署の監督は、この時期に仕事が集中するので、ピリピリしているのが高校生の私達にも良くわかりました。

 春休みのアルバイトは、上述の理由で営林署の監督が同行しません。

 私は、ほどほどにマジメにアルバイトをやっていたし、高校生の元締め(人集め役)でもあったので、

 当日の朝に監督から、入る山の位置、作業内容、範囲、注意事項の指示を受けて、その日の仕事を任されます。

 @所有林の石数(こくすう)調査

  あるエリアの木の種類と本数、根元の直径をすべて調査します。

  方法は、4〜5人で一組になり、リーダー(この仕事が一番楽だから私がなることが多かった! 元締めの特権)が

  集計用紙を持ち、調査する山の斜面の中央を登っていきます。

  他の人たちは、木の根元の直径を測る「ノギス」を持って、斜面を右に左に動き回り、直径20cm以上の木の直径と種類を大声で

  叫びます。

  集計役の私が、それを聞いて用紙に書き込んで行きます。(私はまっすぐ登っていけばよい!)

  本数は、『田』の字の四隅にヒゲを4本加えると、ちょうど「10」となります。

  『正』の字よりも、書きやすく用紙のスペースも約半分で済みます。

  たとえばこういう具合です。

  友人A君「”から松” 32が3本、 36が2本!!」  (32とか36というのは直径のことです。)

  太い木の種類はそんなに多くはないですし、監督から教えられていますから間違いはありません。

  木の種類はあらかじめ用紙に記入されていて、直径も欄が作られてますから、その欄に先ほどのマークを記入していきます。

  30分を過ぎる頃、友人たちの叫び声の内容が変わってきます!

  「”から松” 36が13本 ”しらかば” 30が15本!!」

  そんなに動き回っていないはずなのに、だんだん叫ぶ本数が増えてくるのです!!

  理由は、30分も続けると、『見ただけで直径がわかる』ようになるのです。

  実際にノギスで測定すると、まず誤差はありません!

  人間の目は正確です!

  木材も財産として管理する場合、『石数(こくすう)』で表します。

  (今はメートル法が定着してずいぶん経つので、どういう表現かは知りませんが)

  木の種類と根元の直径がわかれば、木の高さがわかります。

  それでその木の、木材としての利用可能な体積がわかるのです。

  そうして何日かかけて、山全体の木の「石数」を調査して、その山の現在の財産価値がわかるのです。

  もちろん一度調査した山は、木の成長度合いは経験的にわかっていますから、毎年調査するようなことは必要ないのです。

  (実際に、所管している山の面積が膨大であり、似たような山は、全部を調査するのではなく面積から類推していたようです。)

 A山葡萄の弦(つる)切

  この時は、鉈(ナタ)を持って山に入ります。

  北海道の山は、山葡萄が異常に多く、放置するとこの弦(つる)は相当太くなります。

  弦ですから自立できるわけではなく、松などの背の高い木に巻きついて成長していきます。

  しかし、松などの木の成長の速さと、弦の成長の速さは一致しておらず、巻きつかれた松は、「盆栽加工」のように成長を妨げられます。

  成長の早い松が、弦に引っ張られる形で、だんだん幹が曲がっていきます。

  そうしてさらに、冬の大量の雪で弦から枝に着雪し、直立している松よりも多くの雪の荷重を受けて、最後にはその松は折れてしまいます。

  これを防止するために、松などに巻きついている山葡萄の弦を根元から切断するのが仕事です。

  任せられたエリアの弦切が予想外に早く終わりそうなときは、決まって「ターザン遊び」でした。

  斜面と、手ごろな弦を選び、それにぶら下がって、遠くまで飛ぶのです。

  下は、締まってきているとはいえ、柔らかい雪ですから、体力を持て余している高校生にとっては、幼稚ですが面白い遊びでした。

  山で火を使うとき(焚き火)は火を熾すのも工夫が要ります。

  ”しらかば”は至る所にありますから、この皮を剥いでくると火種になります。

  火を囲み、持参した”おにぎり”を食べるのは楽しいものでした。

  周りは雪、とはいえ、営林署の仕事をやらせてもらっているわけですから『火の用心』には細心の注意を払いました。

 B伐採の手伝い、飯場を見て

  春は伐採の季節です。(高校生にはチェーン・ソーは危険なので扱わせてくれません)

  締まった雪で木材を運び出しやすいからです。

  こういう作業は、農家からの出稼ぎの人たちの仕事です。

  下り斜面とはいえ、伐採した太い木材を麓まで降ろすのは、人力だけでは不可能です。

  ですから、出稼ぎの人たちは、馬(北海道特有の馬体重が1Tonちかくある大きな馬)を連れてきて、伐採現場の近くの山の飯場で

  生活しています。

  私達、高校生が、この作業の手伝いを一日だけやるように指示されて飯場に入ったときは、正直驚きました!

  昔の映画に出てくる雰囲気そのままだったからです。

  みんな、ヒゲだらけで、いかつい!!

  「一杯飲んでから行け!」とかからかわれながら・・・・

  高校生たちは、伐採した後、その場で枝払いをしたその比較的細い枝にまとめてロープを掛け、麓まで引き降ろす仕事でした!!

  (余談ですが、このときに覚えたロープの使い方、違う場面で役に立つ!!?)

  何度も山を上り下りするわけですから、重労働!!

  要するに「馬の代役」だったわけです。

  さすがにこの日の「日給は800円」で重労働割増し分が加算されていました。

  今でも、あの飯場のことを思い出すことがありますから、私にとっては強烈な印象だったようです。

 C街路樹の枝払い

  これはイヤな作業でした!

  バス通りの街路樹にハシゴを掛け、伸びすぎた枝を切っていくのです。

  切りっ放しという訳にはいきませんから、当然枝をまとめて捨てる作業もあるわけです!

  今では、トラックが横にいて、切った小枝を積んでいく、という段取りですが、当時はまとめて枝にロープをかけ、これを引きずって

  近くの川に捨てる、という作業まで含めて、『完全自己完結型作業』でした!!

  何がイヤだったかって?

  バス通りですよ!

  女子高生なんかにバスの窓から、枝にロープをかけて引っ張っている情けない姿を見られるのは、純情多感な青春期の私は

  恥ずかしかった!(当時は”職業に貴賎はある”、と思っていたフシがある!!)

  田舎ですからね、どこの学校の誰々だ、なんていうのはすぐわかる!

 

 春休みのアルバイトでは雪山にずっと入っていることが多く、雪焼けで2〜3回顔の皮が剥けてきます。

 一様にキレイに剥けるわけではなく、鼻の頭などは剥けやすく、そこをまた雪焼け・・・・

 新学期に登校する時は、もう「ぶちハイエナ」か「ゴマアザラシ」のような顔になっていました!!

 

  このページを、3年間ずっと一緒にこのアルバイトをやった親友の「Nさん」に捧げます!

  思いだしてくれた?

  又、飲みに行こうね、そしてこの続きの話をしましょう!!

  お勘定は、貴君に元締めを任せるから・・・・・・・・・

              

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