「それは、それは音楽の国の大聖堂でパイプオルガンを弾くことです」
「そうだろう。大聖堂のパイプオルガンを弾きたいのなら、まず発表会で私よりもっとえらい大先生に認められることが必要なんだ!大先生のところで練習しなくちゃ、パイプオルガンなんてありえないんだぞ!」
「それはわかってるけど…」
「今までなんのために練習を積んできたんだ?それにあの子はもうひとりで十分にハーモニカを吹いていける。お前はあの子から音楽の楽しさをあらためて教わったと同時に、あの子に音楽の楽しさを自然に教えたんだよ。もうそれでいいじゃないか?」
ピンクのうさぎは悩んでしまいました。いつまでも少年といっしょに練習することができるわけじゃないということはわかっていたし、大聖堂のパイプオルガンを弾くことは大きな夢でした。発表会は3日後にせまりました。
次の日の夜、ピンクのうさぎと少年はいつものように練習しました。その夜はF♯の曲でした。ピンクのうさぎは発表会のこと、別れなければならなくなるかもしれないことを少年にいわなければならないと思っていましたが、
「あしたは今まで練習してきた曲を、12曲あると思うけど、それをぜんぶ通しておいらのオルガンと君のハーモニカで演奏してみようよ。だから今日は君にあげる新しい楽譜はないよ!それじゃ、またあした!!」
といって、そそくさとこの日の練習を終わりにしてしまいました。別れなくちゃならないと思うと悲しくて、つらくて仕方がありません。
…そして、ピンクのうさぎと少年がいっしょに練習できる最後の夜。今までいっしょに練習してきた12曲を合奏しました。ピンクのうさぎはせいいっぱいボロボロのオルガンを弾きました。そして、演奏し終わるとピンクのうさぎは泣きながらあしたの発表会のことやもう会っていっしょに練習することができなくなるかもしれないことを少年に告げました。少年はそれを聞いてびっくりしたような困ったような表情をしました。ピンクのうさぎは、
「もしもおいらがあしたの発表会で音楽の国のえらい先生に認められたら、君にいいものをプレゼントするよ!約束する!!それから、君といっしょに練習できてとっても楽しかったよ!必ずいいものをプレゼントするよ!それじゃ、さようなら!!」