つぎを当てたペンギン

 i−mode版のホームページを立ち上げるときに作った短編。ペンギン物語の最初のお話。最初にこのオゾン層の問題をとりあげなければ、オゾン層の話しはできなかったと思われます。というのは、オゾンホールはアデリーペンギンにとって必ずしも悪いものでもないからです。風がふけば桶屋が儲かる方式でオゾンホールによってアデリーペンギンのエサであるオキアミがふえるという仮説(上田一生 著『ペンギンの世界』より)があるからです。

 ペンギンものがたりを書いていていつも悩むのは、いったいどこまで科学的根拠にもとづいたはなしにするか?ということです。環境計量士(技術屋)の端くれ?としてはあんまり現実的なこと(科学的なこと)から離れてしまうのはイヤだし、かといってあんまり科学的なことにこだわりすぎると、おはなしにならなくなってしまうからです。まあ、しょせんはおはなし、フィクションなんだから… そんなに悩むことはないのかな?回を重ねるごとに科学的なこだわりが強くなっている?と思うので地球の泣き声をアデリー君がききつけるという発想はもうできないから、つぎを当てた…は初っぱなに書かなかったら書くことができないとおもうのです。

 飛行船については、オゾン層がある成層圏の高度20kmに滞空できるので採用しました。フンボルトさんのオゾンの機械があれば、オゾン層につぎを当てることも可能?かと思われます。オゾンの機械については上・下水処理場などで消毒のためにオゾン生成器が活躍しています。それを発展させたものがオゾンの機械と言うことになるでしょうか?エンペラーツェッペリン号という名前は、1929年に世界一周を果たしたグラフ(伯爵)・ツェッペリン号にちなみます。

 

翼で飛んだペンギン

 ペンギンは空を飛べない鳥です。けれど、水中を飛ぶように泳ぐことができる鳥でもあります。そのペンギンがアホウドリ君の翼で飛んだり、潜水艇のレッドサブマリン号で水中を航行したりするおはなしと、赤潮のおはなしとを強引にくっつけたおはなし。翼で飛んだ…を書いた頃は、まだペンギンものがたりの方向性が定まっていませんでした(まだペンギンものがたりという名前もなかった)。もともとこの話は『アホウドリとペンギン』というタイトルでした。けれど、灰色の雪を白くした…、お花畑を作った…や、氷を運んだ…があいついで完成したのでシリーズものにしようと考えました。潜水艇のレッドサブマリン号はビートルズのイエローサブマリンより…。

 それにしても、オオトウゾクカモメにアホウドリなんてすごい名前!

 

温泉を掘り当てたペンギン

 ペンギンものがたりの中でこのおはなしだけ、公害・環境問題に触れていません。というのもこのおはなしは、「いや、そうでもないよ。アマゾンの奥地へいったときにはピラニアに追いまわされ、シブヤの街中を歩いていると人間に追いまわされて、さんざんだったよ!」「へぇー、ピラニアと人間って同じことをするんだね!」という二つの会話文からすべてが始まったので。ほかのペンギンものがたりはテーマ、たとえば農薬の土壌汚染であるとかばい煙・ばいじんの問題であるなどがはじめに決めてからストーリーを考えています。それに対して温泉を掘り当てた…は上記の会話があって、テーマは後付けで結局お金より大切な宝物をさがしてみよう!という常とう手段にでました。このおはなしはペンギンのはなしの中で特殊なものとなりました。

 また上記、二つの会話文は電車の中でつり革につかまっているときに突如として思いつきました。電車の中で笑うに笑えず、また、せっかく思いついたことなので忘れるに忘れられずというか忘れてはならないので、たいへん苦しい思いをしたことを覚えています。

 

灰色の雪を白くしたペンギン

 ばい煙・ばいじんによる大気汚染のおはなし。これをかいた当時、ちょうど都知事がディーゼル車の規制や不正軽油の問題にのりだした時でした。アクリルの板を使った電気集じん機で解決します。たくさんペンギンたちがアクリルの板をわきの下でこすっている光景をぜひ想像してみてください!!

 

土を洗ったペンギン

 ある種の植物が土壌汚染を浄化してくれるという、ファイトレメディエーションの活用がテーマのおはなし。ロシアやアメリカではすでにファイトレメディエーションによって土壌浄化の実績があります。観葉植物などが室内の空気を浄化してくれる、というのはかなり有名なはなしだと思うのですが…。

 

お花畑を作ったペンギン

 ガラパゴス博士の”夢の機械”によってゴミ(廃棄物)問題を解決するおはなし。南極にお花畑を作ったら、そこの生態系が乱れる?という懸念はあります。ケナフやビオトープの件でもやみくもにそれらを活用したり作ったりしたら逆に自然を破壊するということはあり得ると考えられます。ただ、やみくもに、ということが問題になるわけで、ちゃんとした計画に基づいたものにすればやむを得ない場合が多いのではないかと思います。自然や環境を守るとはいっても、自然や環境自体がどんどん遷移していくものなので、自然や環境を守るということはいったいどういうことなのか?を検討する必要があると思うのですが…。

 

氷を運んだペンギン

 氷山を淡水源に!という発想は1977年にサウジアラビアのモハメド王子が実際に行おうとしたことで、そのための会社まで設立したそうです(翌年倒産)。氷山を南極から曳航してくる途中で氷山にひびが入ってバラバラになってしまったそうです。(阿部征雄 小島紀徳 遠山柾雄 編著『沙漠物語』より)

 バオバブの木のくだりは、サン=テグジュペリの『星の王子様』からの引用です。

 

戦争を止めさせたペンギン

 戦争を環境問題の視点からとりあげたおはなし。1982年に起きたアルゼンチンと英国の戦争、いわいるフォークランド紛争をとりあげました。その時に敷設した地雷がいまだに島のあちこちに残っているそうです。その地雷は人間の重さに反応するようにできているのでペンギン(マゼランペンギン)が地雷に乗っても爆発しないということです。(藤原幸一著、『The Antarctic Ocean』より)ですからペンギンは入れても、人間は近づけない地域があるそうです。地球の裏側では今この瞬間でも地雷の上をペンギンたちが飛び跳ねているのです。人間っていったい?と、(もちろん私も含めてですが)つくづく思ってしまいます。

 戦争を止めさせる方法を最終的にどうするのか?にはかなり苦労しました!

 

噴火を電気に変えたペンギン

 エネルギー問題をテーマにしたおはなし。つぎの冷やした…、でどうしても電気を起こす必要があったのでかいたおはなし。南極のブリザードで風車をまわして電気を起こす案もあったのですが、エレバス山の噴火にしました。実際に火山噴火を予知することはかなり可能となってきています。(スネアーズじいさんの占いではなくて火山噴火予知連絡会などによる)

 スネアーズじいさんの占いは、大吉・小吉、と純和風にしてしまいました。もっと占いのことを勉強すればよかったと悔いののこるおはなし。(まあ、いつ書き換えても差し支えはないのですが…)

 

冷やしたペンギン

 地球温暖化のおはなし。ジェンツーペンギンの登場で現存する18種類のペンギンが一通り出ました。前半のフンボルトさんのセリフが説明的であんまりうまくない?が、ドタバタ系で逃げ切った感のあるおはなし。とうとうペンギンとシャチとを戦わせてしまった!シャチという人間以外の悪役も作ってしまいました。もうペンギンたちに戦わせることのないようにしたいと思っています。

 空気中の炭酸ガスを海底へ持っていく機械は、炭酸ガスに圧力をかけて深海へ閉じこめるというものです。カセイソーダ・NaOH(カセイカリ・KOH)は炭酸ガスを吸収する性質を持っています。昔の潜水艦内では実際にそれらを使っていました。プランクトンに炭酸ガスを食べさせるというのは、植物プランクトンの光合成によって炭酸ガスを消費させようとするものです。しかし植物プランクトンを海で人為的(ペンギン為的?)にふやすということは、その海域の生態系をこわすことにもなります。やはり地球温暖化の問題は発生源対策によって解決する方がベストだと思います。

 

陸と海に林を作ったペンギン

 磯焼け現象をテーマにしたおはなし。磯焼けとは藻場からサンゴモ平原へ遷移した状態をいいます。通常はサンゴモ平原はやがて藻場にもどります。ですから磯焼けとは藻場からサンゴモ平原、サンゴモ平原から藻場へと交互に移り変わる自然現象の一部なのです。ただ我々人間がコンブなどの海草を利用するので、磯焼けが起こると困るという社会経済的な問題であるともいえます。

 これまでのペンギンものがたりは人間がすべて悪くて、ペンギンがその尻ぬぐいをするというパターンで構成されています(私ってひょっとすると普通の人より人が好きじゃないのかもしれない?)。翼で飛んだ…も人間が出てきませんが、このおはなしもそうです。

 赤潮の問題は人為的な場合が色濃いのですが、山火事は自然にも起こります。

 

地球を飛びだしたペンギン

 絶滅危惧種のおはなし。ペンギンものがたりの中で一番示唆に富んだおはなしだと思っています(これって自画自賛?)。バンディクートは体長30cmほどのカンガルーやウォンバットと同じ有袋類。絶滅してしまった種もいますが、オーストラリアでは生き残っている種がいます。しかしそのすべてが絶滅のおそれがあります。絶滅原因は、人間が持ち込んだキツネに捕食されたり、アナウサギに生息地を奪われてしまったことによります。モアは体長3mを越す種がある巨大な飛べない鳥。絶滅原因は人間の食料や装飾品にされたことによると考えられています。エミューはダチョウに似た世界で二番目に大きい鳥。絶滅原因はエミューが農作物を荒らすので人間に射殺されたり、食用にされたり、エミュー1羽から一斗缶一本分(18リットル)の油が採れるので灯油用に捕獲されたことによります。 (今泉忠明著 『絶滅野生動物の辞典』より)

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