ヴィオラ日記
見るメトロノーム
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高校生のときに山田一雄の「指揮の技法」を読んだことがある。そこには指揮棒は放物運動であるべしということが強調されていた。放物運動であれば、垂直方向の初速度が分かっただけで、次の拍の打点が予測できるというものだ。
このことがずっと気になっていて、10年ほど前に、種々のメトロノーム信号を提示した時のテンポのとりやすさについて調べたことがある。信号に合わせてスイッチを押してもらった時の正確さを比較したのだった。結果は、どれもスイッチを押すタイミングの正確さにおいては顕著な差は見られなかった。でも、やはりランプや音よりも、動きを提示した方がずっとテンポがとりやすいのは実感として感じるところだった。
つい最近急に思い立って、放物運動を画面に提示するメトロノームのプログラムを作った。実に単純ですぐにできてしまった。メトロノームのソフトウェアというよりも、物理の法則(自然落下の法則)を確認するようなプログラムだ。早速使ってみた。
音がないメトロノームだが、テンポは充分感じ取ることができる。以下、この「見るメトロノーム」を使って気づいたことを書いておく。ちなみに、テレビの上の台にノートパソコンを置いて、譜面代の少し左側にこのメトロノームが見えるようにセッティングし、ヴィオラの練習を行なったときの印象だ。
- 見ること、実際には横目で感じ取ることに慣れないうちは、意識が演奏に集中できずちょっと違和感を感じた。
- とくに遅いテンポの曲の練習にはすごい威力を発揮する。遅いテンポで歌いながら、なおかつテンポをキープすることが簡単にできる。
- シンコペーションの動きがとてもとりやすい。とくに何拍目かがはっきり分かるので長いシンコペーションも安心して演奏できる。
- そのほか、効果あり!と感じたのは、
- モーツァルトでよく出てくる、ンタッタッタッというような8分休符の後の「きざみ」のタイミングが確認しやすい
- 長いトリルの後の装飾音の処理のタイミングがとりやすい。おそらく、前打音の処理にしても、拍の前に入れたり拍の頭に入れるタイミングは、このメトロノームのほうがとりやすいだろう。
- タタタンタタタンというような8分8分4分音符の連続パターンでの感じ方
- アウフタクトが示されるので、ブレスのタイミングがとてもとりやすい。弦楽器の場合は、弓を置くタイミング(予備動作)がとりやすい。(ほかの楽器ではどうなのだろう。)
- ときどき、指揮者がタクトを振って練習に付き合ってくれているかのような錯覚に陥った。普通のメトロノームだと、「機械に合わせる」という感じだが、この「見るメトロノーム」は、機械というよりも、「演奏に付き合ってくれる生き物」のような不思議な感じがする。
- まだ充分に弾けていない速いパッセージをインテンポで練習しようとした時は、通常の音のメトロノームのほうがタイミングがとりやすかった。しかし、弾けるテンポまで落としてやってみると、「見るメトロノーム」の方が、拍のタイミングを意識しやすかった。音楽の流れの中のツボにはめていくという感覚が実感できる。
- 2分音符の3連音符(?)は、とりにくかった。(音のメトロノームとは比較していない。)
- テンポが150を超えるような場合は、画面のちらつきが多くテンポがとりにくい。120前後のアレグロの練習のときは、画面の動きがまさにアレグロという感じに見えて、演奏もそれなりに乗ってできた。
- 音のメトロノームを使った場合は、ディジタル的なタイミングにあわせていくのに対し、こちらは連続的な動きの中に乗っていくという、アナログ的な合わせ方になっているのだろう。そのほうが実際的だと思う。
今日はほとんどこのメトロノームと合わせる練習だけだった。そのためか、演奏自体は雑になったというか、音作りという点に余り集中できなかったように思う。これは、通常のメトロノームの場合も言えるかもしれない。
2002/03/09
P.S.カミさんと娘の評判はすごく悪かった。目障り!!の一言だけ。う〜〜ん。もともとテレビの画面を見てても酔う人だからなぁ(2002/03/10)
2005.6 大幅な機能強化をして新バージョン「アウフトクト2」を公開しています。
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