ちょっとコラム
4.MATT休刊に思う&過度な期待
今回は私鉄時刻表に直接は関わらないお話です。
八峰出版から発行されていたMATT(関東圏時刻表)が2003年1月号を最後に休刊になりました。恥ずかしながら私自身そのことに全く気づいてなく、いつも閲覧して頂いている方からのメールで知った次第でした。そのくらいひっそりと消えておりました。「MATT」創刊当初からしばらくは首都圏のJR・私鉄の全線の時刻を掲載する唯一の時刻表でしたが、日中は主要駅の時刻しか掲載されておらず非掲載駅に行くには時刻の予測をしなければならないこと、また紙面がパソコンで作成されていたため他の時刻表に比べやや読みづらいという難点がありました。それを差し引いても当時は便利であったことには代わりありませんでしたが、1998年に弘済出版社(当時)から「MyLINE東京時刻表」が創刊されたことにより状況が一変しました。「MyLINE」は首都圏のJR・私鉄の全駅全列車を掲載することで「MATT」との差別化を図りました。そのことで全駅全列車の「MyLINE」かコンパクトで携帯に便利な「MATT」かという共存状態が続いていました。しかし、「MyLINE」には勝てなかったのか今回の休刊という形となってしまい、残念ではあります。さらに「KATT」(関西圏時刻表)も不定期刊(ダイヤ改正時に発行)という形になってしまったようです。
しかしながら、他のWebサイトにおいて
「MATTやKATT(およびNATT)が休刊になったのは交通新聞社のせいだから「関西時刻表」や「名古屋時刻表」を補填するべき」
という意見がありましたが、それは些か筋違いな様な気がしてなりません。「MATT」休刊については「MyLINE」の存在は否定できないとは思いますが、「KATT」や「NATT」についてはそのようなライバル誌は存在しません(関西圏では「携帯全国時刻表」が近いですが、JRに限られ、しかも大阪環状線は全列車掲載とはなっていません。)。いわば関西圏・中京圏に関しては八峰出版の一社独占状態であったわけです。この論理から行けば休刊になるのは「MATT」だけになるわけで、ある程度の需要があるならば「KATT」「NATT」を休刊にする理由がないはずです。以上より、「KATT」の場合は月刊で発行させるほどの需要がないと考える方が自然であると思います(「NATT」については正式に休刊のアナウンスがないため言及しません)。交通新聞社のせいにするのはあまりに短絡的です。
また、2月20日にJTBからA4判の「大きな時刻表」が発売されました。基本的には「JTB時刻表」をそのまま大型化したものです。表紙や広告に「会社線850社掲載」とあることから「すわ私鉄の時刻表が全駅掲載か?」などという過度な期待が起こり、実物を見て「裏切られた」などという批判をちらほら聞き受けます。やはりこれも筋違いではないかと思います。まず定価が1300円であることを考えてみることにします。通常の時刻表は1050円、首都圏のJR・私鉄が全駅全列車掲載の「MyLINE」が900円であることを考えると全国のJR・私鉄を全駅全列車掲載で1300円となると破格すぎであり、あり得ないことは判断が付くのではないでしょうか。
また、そのような全国のJR・私鉄全駅全列車掲載の時刻表を発行したところで一般に利用されていくのかは些か疑問です。首都圏であれば「MyLINE」クラスで充分ですし、私鉄であれば私鉄独自で発行される時刻表で充分である場合が多いです。そのことから、発行しても鉄道ファンや旅行ファンくらいしか需要が見込めないため、今後も発行されることはないでしょう。
今回のJTBの「会社線充実」の件はより多く会社線の情報を掲載し、JRだけではない総合的な時刻表を目指すことにより交通新聞社との差別化を図ったと見るべきだと思います。ここでいう「会社線充実」とは、鉄道は恐らく全ての会社が掲載(全列車ではない点に注意)されているので、より多くのバス・船などの情報を掲載したという解釈になると思われますので、やはり「だまされた」というのは当てはまらず、「だまされた」と思った人の期待が強すぎただけにすぎません。
以上のことから、断片的な情報だけで過度の期待を持つことは危険であり注意すべき点ではないかと思います。そうでなければ全く的はずれな誹謗中傷が起こりかねませんので情報の扱い・解釈には慎重を期するべきだと私は思います。
今回のコラムは読む側に不快に思われる点もあったかと思いますが、昔の私もそのような傾向がありましたので、ここで自戒の意味も込めまして書かせて頂いた次第です。