『オアシスだより第7号発行にあたり』  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

 オアシス会員の皆様には平成11年を迎え心新たにお仕事等にあたられていることと存じます。

 この度『会報第7号』をお届けすることができますのも、一人一人の暖かいご協力の賜物と感謝致しております。
平成11年1月31日現在会員数は88名です。平成12年度もご継続いただきますようお願い申し上げます。

 この会報の内容についてのご意見・ご質問・ご要望をお待ち申し上げております。
 5月16日には『第7回オアシスの集い』を行ないます。
多数のご参加をお待ち申し上げております。


■ 目 次 ■
 ‥‥……第7回 競馬の馬にも鍼……‥‥
 ‥‥……第七話 三里灸の万平さん……‥‥
 ‥‥……その7 汗について……‥‥

 ‥‥……Part6 凍 傷……‥‥

 ‥‥……7の巻 養生訓にみられる養生法……‥‥

 ‥‥……(7) いろいろな味覚は舌のどこで味わえるの? ……‥‥
 ‥‥……知識(3)緑色のウンコ……‥‥

各コーナーは上記リンクでスキップ!!

 

 

 


 第7回 『競馬の馬にも鍼』 文責 今田開久

 今ブームの競馬の馬に鍼治療が行なわれていることをご存知ですか?

 釘のように太い鍼が使われていますが、用途に応じて、鍼先が円錐形のものや、瀉血用に刃が付いているもの、火で焼いて刺す火鍼などもあります。
スポーツ選手のように、競馬の馬もドーピングがうるさいので、薬物を使用せずに鍼を行えば、そんな心配もなく、痛みの軽減や疲労回復、体調コントールにはうってつけなのです。
さらに、腹痛や便秘、ガスの溜まりなどにも鍼は行われています。

 もちろん、家畜の鍼はドーピング対策に発案されたものではありません。中国において獣医の記載は紀元前からあるのです。
現存する獣医書は唐の時代にさのぼるといわれていますし、元の時代の1339年には、約80のツボが記載された馬の図が描かれ、便秘の治療法が詳述されています。さらに、人間と動物のつき合いはもっと古くからあるのですから、家畜の鍼灸治療は人間同様、数千年の歴史と考えてもおかしくないと思います。

 ところで、鍼の効果は暗示だろうと以前はよくいわれました。
これは、患者さんの思い込みで、痛くなくなったような気になっているのではないか、といわれてきたのです。
しかし、鍼の鎮痛作用は数千年来認められ、小児に対する鎮痛作用も長年確認されてきていますし、そのうえ、鍼の麻酔効果 が家畜でも確認され、鍼麻酔下で獣医手術が行われていることは、鍼刺激が少なくとも痛みに対して思い込みではなく、確実に軽減方向に作用していることを示しています。

 さて、馬、牛、豚、鶏、鴨には決まったツボがあります。
人間の頭のてっぺんにある百会というツボが、四つ足動物の場合では、腰の部分にあるのは面 白いですね。
ここに鍼をすると、「腰が弓型に曲がり、臀部の筋肉が震動する」とあります。落語の「太鼓腹」には、若旦那が猫に鍼をしようとする話しがでてきます。
いくら呑気な猫でも、下手に鍼を刺すと逃げ出すに違いありません。
しかし、上手に行なうと動物も鍼治療のよさは分かるようです。
時々テレビなどで犬や猫がおとなしく、気持ちよさそうに鍼治療を受けているのを見たりしませんか?

 最近ペットの鍼灸治療をする獣医が増えているようです。
都会のペットは狭い部屋に飼われ、最近は自然を知らないペットも多いそうです。
そのせいかストレスが原因の病気が増えているといわれています。
そこで鍼灸治療の登場です。

  ペットの美容がはやっている今日、「ペットのマッサージから鍼灸まで」といった看板が街角に現れるのはそう遠くないかもしれませんよ。
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 第7話 『三里灸の万平さん』   文責 眞野 仁

 昨年末から今年にかけて、ずいぶんと風邪が流行りましたね。
強い風邪のウイルス、不安定な天気と色々と原因があったと思いますが、やはり根本には大勢の方達の体力(風邪に対する抵抗力)の低下があるのではないでしょうか。

  普段からの健康増進に対する配慮が必要です。(こうは思っていても、ついつい忘れがちなものなんですが・・・)
 昔から言われる言葉なのですが、「病にかかってから治療をするのは、戦争が始まって後に、おおあわてで武器をつくり、また、喉がカラカラになってから後に、ヒイヒイ言いながら井戸を掘り始めるようなものだ」という言葉が思い出されます。
そんなことを考えると、以前も少し触れました“八日のお灸で二百歳”の「三里灸の百姓万平さん」の話は興味深いものです。

 なんでも古文書によると、「寛政八年(1796)九月十一日、京の公家、鷹司政煕の娘有姫が十二代将軍家慶の七番目の子、政之助家祥公に嫁入りのため京都を出発した。
同月二十五日、江戸に到着。
大勢の供の中に、三州(愛知県)井戸郡小泉村の百姓万平、当時百九十四歳という老人があると話題になった。
万平は慶長七年(1602)寅年生まれである。

 八代将軍吉宗時代、万平は将軍に白髪を献上、百五十人扶持を与えられた。

 万平は、『大阪の陣では十四歳でした。大体は覚えています』と言い、有姫の『めでたい』と二百人扶持を与えた」と書かれてあります。

 有姫も、この万平の話に「この話、まんざらインチキではなさそうだが、長生きの秘訣は何か」とたずね、万平は「食べ物が普通 の人と変わっているわけではありません。毎月一日から八日まで、怠りなく足にお灸をすえているだけです」と答えたと言います。   更に「私だけではありません。妻が二百八歳、息子が百八十八歳、孫が百三十歳といずれも長生きです」という万平の話が記されています。

 この信じがたい話はなんと歴史の年代とピッタリ一致するとのこと。
さらに別の書物には、「天保十五年(1844)九月十一日、江戸深川で永代橋が完成、長命者の万平さん親子らが渡り初めをした」とあり、このとき万平さん、二百四十二歳になる勘定です。

 以上、戸籍もしっかりしていない時代のことでもありますし、額面 通りには受け取れないにしろ、とにかく江戸時代にも養生に心がけること(とは言ってもお灸をすえるだけですが、)で、非常に長生きでしかも元気だった人がいたと言うのは確かなのでしょう。  この冬、体調を崩された方、崩さなかったけれども周りにそんな人が多かった方(つまり両方あわせて、皆さん)、これを機会に何かご自分で無理なくできて、しかも続けられる養生法を探してみてはどうですか。
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その7 『汗について』  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

□汗の成分
汗は99パ−セント以上が水で残りは食塩と、水に溶けた蛋白質や、乳酸という物質などです。
この乳酸は疲労した筋肉の中にたまった物質で、すっぱい味のする種類もあります。汗が臭くなるのは、汗そのもののにおいでなく、汗の中の蛋白質成分や乳酸が発酵して、臭いにおいの物質を出すからです。

□汗の種類
汗をかく原因は二つあります。
一つは、温熱性の発汗で身のまわりの環境が暑くなると、大脳の下にある視床下部の命令で分泌されます。
もう一つは、精神性の発汗で、著しく緊張した時などに、大脳皮質の命令で分泌されます。

□汗の出るところ
皮膚の表面から出る一般の汗は、真皮(皮膚のすぐ下の皮)にある汗腺(エクリン汗腺)で分泌され、細い汗腺管を通 り、汗孔(皮膚の孔)から排泄されます。
この汗腺は、1a四方あたり100〜250もあり、からだ全体には、なんと190〜200万個もあるのだそうです。
陰部や、わきの下などでは、毛の毛包に付属している脂腺が、固形成分を含んだ汗を分泌するため(アポクリン汗腺)、特有のにおいがします。

□汗の量
汗は、体の気の代謝の状態を示す大切な目印で、基本的には汗をかくことは良いことです。
ただし、その出方は、先天的な要素もあるものの、外気の状態と労働(肉体的・精神的・食事など)の状態に応じているべきもので、寒いとき何もしないのに汗をかくとか、暑いときに体を使っても汗をかかないなどというのは普通 ではありません。

◎入睡すると汗が出て、目覚めると汗が止まることを、東洋医学では盗汗(とうかん)といいます。
これは、休んでいいはずの五臓が働いていることを示し、むしろ五臓の弱っていることと考えます。
根気よく鍼・灸をして、疲れをとりましょう。
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その6 『誰にでもできる救急法』 清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

『凍傷』  〜全身凍傷は体温が下がり眠くなる〜
◆救急法を施しながらゆっくり温める

 冷蔵庫の冷凍室に手を触れただけで凍傷を起こしたり、冬期には、子供の耳たぶや手足に生じたり、冬山で遭難して凍傷にかかるなど凍傷にはさまざまな程度があります。

 凍傷は、非常に冷たい空気や物に触れて起きるもので、血管が麻痺を起こし、欝血して腫れた状態を指します。
冷蔵庫の冷凍室などの凍傷の手当ては、凍結した体液を正常な循環にもどせばいいわけですから、患部周辺を温めればすぐ治るはずです。
  ただし、その温めかたが問題となります。

 急に熱い湯に患部を浸したり、火にあてるのは禁物。
ますます凍傷がひどくなります。
マッサージは感染の原因になる場合がありますのでしないほうがいいでしょう。
  少しずつゆっくりと、体温ぐらいの温度の湯に、患部を浸して温めるのがコツです。
手だけなら、脇の下にはさんで温めるといいと思います。
  そのあと、清潔なガーゼを患部にあてて、救急の治療を受けるようにしてください。

 また冬山の登山中に足が凍傷にかかったら、靴を脱いでリュックなどの上に足を高く乗せ、そのまま救援隊を待ちましょう。
無理に歩くと浮腫を起こすことが考えられます。

  また、全身凍傷を起こした場合は、極めて危険な状態が生じるのでくれぐれも注意が必要です。
この場合、ほとんどの人が意識はぼんやりして、眠くなってきます。もし、ここで眠ってしまったら、ますます体温が低下して、凍死する可能性が濃厚になります。
体温が20度以下になったら危険。とにかく眠らないように意志を強くもち、頑張ることが大事です。  
一緒に登山中の人の脈拍や呼吸が遅くなってきたら救助の手が伸びるまで、気道の確保、人工呼吸、心臓マッサージをしながら、ゆっくりと身体を温めることが大切です。
 もし、意識があれば、前記の要領で体を温め、熱い飲物を与えるようにしましょう。

 専門医の治療を受け感染の危険が取り除かれたら、凍傷部位 に是非お灸の治療をお試しください。
冷えた身体を温めるにはお灸が最も有効と考えます。
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 7の巻  『養生訓にみられる養生法』   文責 伊賀裕一  

 「養生」という言葉は、とかく高齢化した人達に特有の必要不可欠な日用用語のように思われがちですが、
「養生」は一生涯必要な行為です。
病は生まれたときから、生活によって作られていきます。
その中でも特に一生を左右する病の形成時期は二十歳代と考えてよいでしょう。
「養生」という言葉は若者のためにある!というのは言い過ぎでしょうか?

 今回も養生訓の巻第一をご紹介いたします。
特に養生という言葉が多く出てきます。

《常に養生を心がけ非常に備える》
ある人が、養生を好む人は自分の命を保とうということだけを考えていれば、一旦、君に忠義を尽くして命を捨てなくてはならない時に、その義を失ってしまうではないかといった。
そこで私は、何事にでも変わらぬものと変わるものとがある、一旦、義を尽くさなくてはならないときは、義に従うべきである、常日頃、身を養い、体を丈夫にしておけば、戦っても強く、もし戦いで命を捨てるようなことになっても体が弱くては何もできない、だから常によく気を養っておけば、変に臨んでも勇気が出てくるのである、と答えた。

《睡眠時間は短く》
昔の人は三欲を我慢せよといった。
三欲とは、飲食欲・色欲・睡眠欲である。
人は飲食と色の欲を慎むということを知っていても、この眠りの欲をこらえて、睡眠時間を短くすることが養生の道だということを知らない。
眠りを少なくすれば無病でいられるのは、元気がめぐりやすくなるからである。
夜が更けて寝るのはよいが、昼寝はもっと害がある。
それは朝夕の飲食物がまだ消化しないで、気がまだめぐっていないうちに早く寝ると飲食が滞って、元気が損なわれるからである。

《言葉を少なくする》
言語を慎み多言しない。
多言すれば必ず気が減り、気がのぼり、元気を損なう。言語を慎むのも、また徳を養い、身を養う道である。

《小さい不養生から大病を起こす》
大きな禍(わざわい)は、一寸した間に欲をこらえなかったことで起こる。
酒食・色欲などは少しの油断から一生の禍となる。
小さなことでも大なる禍となることが多い。
小さな過ちより大なる禍となるのは病のならいである。
慎むべきである。

《命の長短は養生をするかしないかで決まる》
養生の道をしなければ、生まれつき体が強く、若く、力があっても天命をまたないで早死にする人が多い。
これは天のなせる禍ではなくて、自分で招いた禍である。
強いからといって慎まないから弱い人よりかえって早く死んでしまう。
白楽天は福(さいわい)と禍とは慎むか慎まないかによるといっている。

《富貴は求めても得られないが、長寿は得られる》
世間では富貴・財禄をむさぼり求め、人にへつらい、神仏に祈る人が多いが、その効き目はない。無病長寿を求めて、養生を慎み、身を保とうとしている人は少ない。
富貴・財禄は外にあるもの、求めても天命がなければ得ることは難しい。
無病長寿は我にあり、求めれば得やすい。
たとえ財禄を求め得たとしても多病で短命であれば、何にもならないではないか。

《気血を滞らないようにするのが養生の道》
陰陽の気は天にあって動いてながれ、滞りがなければ四季の変化はよく行なわれ、物みな生じる。
ところが、この変化・流れが滞れば逆に冬暖かく、夏寒く、大風・大雨がおこり凶作となってしまう。
人の身体も全く同様で、気血がよくめぐり滞りがなければ、気は強く病はない。
  しかし、この気血が流れないと病が起こる。
気が上に滞れば頭痛・めまいとなり、体の中ほどなら心腹痛となり、つかえで腹が張り、下に滞れば腰痛・脚気・淋疝(泌尿器科の病気。排尿痛・頻尿・あるいは陰嚢が腫れ、時にはヘルニアの状態もさす)・痔漏となる。
  これだから養生を心がける人は、つとめて元気が滞らないようにする。
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Q いろいろな味覚は舌のどこで味わえるの?

A:食べ物には、さまざまの味がありますが、その味を感知する感覚を「味覚」といいます。
人のばあい、味覚は「あまい」・「からい」・「すっぱい」・「にがい」の基本的な4種類があり、複雑な味は、その混合として考えられます。

◎味覚を感知する場所
(1)あまさのもとは糖分で、感知する場所は舌先。
(2)からさのもとは食塩で、感知する場所は舌の両サイドと舌の先。
(3)すっぱさのもとは酸で、感知する場所は舌の両サイド。
(4)にがさのもとはアルカロイドという物質などで、感知する場所は舌の奥ですから、にがい薬などは、水で一気にのみこめば苦みを感じません。

◎乳頭と味蕾のしくみ
ザラザラした舌の表面を虫めがねで見ると、キノコや葉ッパなどのような(あま味やにが味などの味覚ごとに異なる)形をした組織がビッシリ並んでいます。
それは乳首のように見えるので、乳頭と呼ばれ、そのまわりに、味蕾という味覚を感知する器官がズラリと並んでいます。

◎味を感ずるしくみ
たべものに含まれた味の成分が、水にとけて、味蕾に接触すると、毛のような形をした 味細胞が刺激を受けます。
そうして、その刺激を電気の信号に変え神経系を通して大脳に送ると、味覚がおこるのです。

◎味覚と食欲の関係
子どものころは、舌に味蕾がたくさんあるため、味覚が発達し、いろいろなたべものが、とてもおいしく、たくさんたべられて、ドンドン成長します。
  ところが年をとると、舌の味蕾の数が減るため、味覚もおとろえて、あまりたべられないようになってしまうのです。
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                     《清野鍼灸整骨院  院長 清野充典》




 知識(3)緑色のウンコ  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

 「もっともうまく国王を殺すにはどうすればよいか。」こんなだいそれたことを考えながらウンコをすると、緑色のウンコが出る、ということを発見したのは、スウィフト著わすところの『ガリバー旅行記』に出てくる大人国の教授でした。

  現代医学では、残念ながらこの画期的な発見を裏づけることはできませんが緑色のウンコは、ここ何年か、論議の的となってきました。
  緑色便は、とくに乳幼児の場合に多く、赤ちゃんの扱いになれていない若いお母さんを驚かせます。
しかし、結論を先に述べますと、緑色のウンコが出てもたいして心配ないことが、最近の研究で明らかにされています。

  昔は、緑色のウンコが出るのは、消化不良のためであると信じられてきました。
うんこの色づけをするビリルビンが変化するひまがなく、そのままウンコに出るから緑色になるのだと説明され、そんなに早く腸内を通 過するからには消化が悪いはずだ、と考えられていたのです。

 その後、この考えは若干変わり、母乳で育っている赤ちゃんの緑便は異常でなく、人工栄養児の緑便だけが消化不良の証拠であるということになりました。
  母乳栄養児の腸内には、ビリルビンを酸化させて、ビリベルジンという緑色の色素に変えるビフィーズ菌が住みつくので、緑色のウンコが出るのは当然だといわれたのです。
  しかし、人工栄養児の腸内にいる細菌は、大腸菌が主体なので、ビリベルジンに変わるはずはない、異常な細菌の発育か消化不良が原因であると説明されていました。

  しかし、さらに最近になって、うんこの色を決める大きな要素は、腸内が酸性であるかアルカリ性であるかであり、それによって、黄褐色から緑色のトーンまでいろいろに変化することが明らかになってきました。

  また、現在の粉ミルクはほとんど母乳と同じまでに進歩したこともあって、人工栄養児だって緑色のウンコが出るのは当然であり、異常のせいではないとされるようになりました。
緑便は、長い間の冤罪から免れることができたのです。
離乳期の赤ちゃんの場合は、離乳食によく使われるグリーンピースやホウレン草などの色素が、緑便の犯人であることも少なくないはずで、下痢をともなった緑便でないかぎり、心配はありません。
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