『オアシスだより第5号発行にあたり』  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

 健康研究サークル『オアシス』も二年目を迎えました。
平成10年5月30日現在、55名の皆様にご入会いただいております。
今年度も会員の方々のお声に耳を傾けながら、会の活動を進めていきたいと思っております。

 さて、4月12日の『第4回オアシスの集い』には、多数の方にご参加いただきありがとうございました。回を重ねるごとに出席者も増え、皆様の健康に対する関心の高さをひしひしと感じます。

 次回7月12日の『第5回オアシスの集い』で皆様とお会いできますことを楽しみにしております。
ご意見・ご要望お待ちしております。

■ 目 次 ■
 ‥‥……第5回 日本の鍼灸治療の発展(二)……‥‥
 ‥‥……第五話 お灸ってなぜ効くの?……‥‥
 ‥‥……その5 肝臓のはたらきについて……‥‥
 ‥‥……Part4 乗り物酔い……‥‥
 ‥‥……5の巻 養生訓にみられる鍼・灸・薬……‥‥
 ‥‥……(5) 実際脂肪は身体にとって……‥‥
 ‥‥……知識(1)ウンコの色……‥‥

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 第5回 『日本の鍼灸治療の発展(二)』 文責 今田開久

 三千年の歴史のある鍼灸治療は、長い年月の間に中国においてはもとより、わが国をはじめ東アジアの各地において、それぞれ独自に、あるいは互いに関係を保ちながら発展してきました。
そして今では欧米各国でも関心が高まっています。
鍼灸医学の国際会議が四年に一度催され、第一回目は北京で、第二回目はフランスのパリで、第三回目はわが国の京都で、一九九六年の第四回目はアメリカのニューヨークで盛大に開催されました。

 このように今では世界的に盛んになった鍼灸医学ですが、その道のりは決して楽ではありませんでした。
我が国の医療は、それまで主流であった漢方医学から、江戸時代末期に伝来したオランダ医学を中心とする西洋医学へと移り変わっていったのです。
明治時代には、鍼灸師の道は残されたものの、明治二十八年に医師開業試験科目が西洋医学に限られる法律が成立し、益々それは強くなっていきます。 また、昭和二十年の敗戦により、時の占領軍(GHQ)の指令に基づき、我が国の教育制度の大幅な変革がありました。
そのため、鍼灸治療は禁止されそうになったこともあったのです。
しかし、厚生省ならびにGHQに、鍼灸治療の必要性を多くの資料を添え陳情することにより、昭和二十二年十二月にようやく承認され、新しい教育制度の中で、新しい鍼灸体制が生まれることになったのです。

 現在わが国では、盲学校をはじめ専門学校さらに高等教育機関である短期大学や大学、大学院などが設置されて、それぞれ鍼灸師に要求される科目の教育を行っています。
  当治療院は、わが国唯一の四年制大学である明治鍼灸大学の卒業生を中心に構成し、東洋医学と西洋医学の融合と、より良い治療を目指し、日夜研究と勉学に勤めています。
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 第5話 『お灸ってなぜ効くの?』   文責 眞野 仁

 お灸が江戸時代より昔からお医者さんのみならず民間でも健康維持のためによく用いられ、効果 を出してきたことは第一話にもお話しました。
それではそのお灸はなぜ効くのか?このことは昔から大きな疑問でした。

 明治以前、お灸はその熱のエネルギ−(つまり陽気)の力を体に与えることによって、病人の足りなくなった活動的なエネルギ−を足し、増やして慢性病や疲労、冷え、気力の衰えなどを中心に、多くの病気を治すことができるのだろうとされてきました。

 明治以降、科学が日本に入ってくると、自然にお灸の効果 を科学的に説明しようとする動きが出てきます。
明治から昭和初期までに研究された成果の中で、今も重要視されている説は、お灸をしたとき、皮膚の火傷で生まれる物質(熱傷毒…ヒストトキシン)が、体の免疫防御機構を活発にするというものでした。

 戦後、それ以前の研究をふまえ、お灸の火傷によって生まれるストレスタンパクに着目がなされたり、モグサが燃えるときにできるモグサ・タ−ルが火傷部から吸収されることにお灸の効果 があるとされたり、今もお灸の謎は研究されつづけています。

 いずれにしてもお灸は人間の体の免疫力を高め、病気を追いやることはまちがいないようです。
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その5 『肝臓のはたらきについて』  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

【栄養の調整・貯蔵作用】

  1. 小腸で吸収したブドウ糖・果糖・脂肪酸などを、グリコ−ゲンという物質に変えて貯蔵します。
    そして、体がエネルギ−を必要とするときは、グリコ−ゲンをブドウ糖に戻して全身を巡る血液に流します。
  2. 体の脂肪組織に貯えられていた脂肪は、いったん肝臓に運び、形を変えてエネルギ−源として活用します。
  3. 蛋白質は、体の組織を形づくる成分として送りだし、余ったものはグリコ−ゲンに変えて肝臓に貯えます。

【解毒作用】

  1. 体組織を形づくっている蛋白質は、新陳代謝によって分解し、毒性のあるアンモニアを生じますが、これを肝細胞は無害無益の尿素という物質に変えます。
    この尿素は、血液にとかして送り出され腎臓から尿として排泄されるのです。
  2. その他の毒素や細菌なども、分解して無害な物質に変えます。

【赤血球の分解作用】
古くなった赤血球の中のヘモグロビンという成分を分解し、ビリルビンという物質に変えて胆汁の材料にしたり、鉄の成分を新しい赤血球の材料にしたりします。

【胆汁の産生作用】 胆汁は弱アルカリ性の黄色い液で、脂肪を消化・吸収されやすい形に変える仕事をします。

【体熱の維持作用】 肝細胞が大活躍するとき、たくさんの熱を生じ、血液によって全身に配られて体温の7割ほどを維持してくれます。

◆肝臓は「沈黙の臓器」といわれます。
相当悪くならないと自覚 症状が出ません。
疲れやすい・いらいらする・怒りっぽい・眼が疲れやすい・食欲がなく食べ物をうけつけない・寒がりで暑がり…といったような人は、肝臓が弱いか負担をかけている人です。
また、眼が黄色くなったり、手のひらが紅く、クモ状にまだらになっている人は要注意です。
なるべく早く寝て、睡眠を多くとるようにして下さい。

◆急性膵炎や慢性肝炎に有効な薬はほとんどありません。
お灸をすると肝臓の働きがよくなることは最近医学的に立証されております。
お困りの方は各治療院の先生にご相談下さい。
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その4 『誰にでもできる救急法』 清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

『乗り物酔い』
〜酔わない暗示が予防に大切〜
◆ 新鮮な空気にふれ顔や胸を冷やす!

 せっかく楽しみにしている遠足やレジャ−も、乗り物酔いで気分が悪くなったり、嘔吐を催してしまったら、本人も周りの人も不愉快になってしまうことでしょう。
 バスなどに揺られ、吐き気を催したり気分が悪くなったなどという時は、できるだけ揺れの少ない進行方向に向かってその中央部に坐るとよいようです。
 もしバスが途中で止まってくれるなら、途中下車をして吐くなり休むのが一番です。
座席では、窓を開けて新鮮な空気を入れ、頭を横向きにして、ゆったりと座席にもたれかかることも大切なことです。

 周りにいる人は、ハンカチを水筒などの水で浸し、顔や胸を冷やしてあげることがよいでしょう。
また、酔った人が吐くときに嫌な顔をせず、思う存分吐かせてあげましょう。
吐いたあとはすっきりして少し楽になってくるはずです。

 なお、あらかじめ乗り物酔いをしないように、適切な予防もしておきたいものです。
まず車の振動やガソリンの臭いだけでなく、「酔いそうだ」という精神的な誘因もあるので、酔わない暗示にかけることも大切でしょう。

 トランキライザ−(精神安定剤)を含んだ乗り物酔いの薬も数多く販売されていますが、これを飲んだからといって酔わないとは限りません。
薬ではなくてもたとえば、「梅干しをおヘソに貼る」などという非科学的な迷信でも、この時ばかりは大歓迎の人もいるでしょう。

 一般的に乗り物酔いをする人は胃腸の弱い人や寝不足や疲れのたまっている人に多いようです。
このような人は手足や背中にあるツボに鍼灸治療をすると大丈夫なことがほとんどです。
長期間旅行に出かける時や、不安な人は、「皮内針(ひないしん)」という3〜5ミリの短い小さな針を浅く刺し、テ−プでとめておく治療をしておくと、防げることが多いようです。
担当の先生にご相談下さい。
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 5の巻  『養生訓にみられる鍼・灸・薬』   文責 伊賀裕一  

 今回の養生訓は鍼・灸や薬に頼らず、よく運動し、養生しなさい。 という部分です。
昔の人はよく鍼や灸をしていたという事を伺い知ることができます。
では、前回の続きをご紹介いたします。

《治療より予防》
およそ薬や鍼灸を用いるのは、やむを得ない下の策である。
飲食・色欲を慎み、規則正しい日常生活をして、養生をよくすれば病気にはならない。
腹がつかえて張って、食欲がなくなってしまった人でも、朝夕歩行し、労働して、長時間座ったり、横になり寝たりすることをやめれば、薬や鍼灸を用いなくても、腹がつかえ、張ることもなくなるだろう。
これが上の策というものである。薬はみな気を偏らせるものである。
たとえば人参・黄?・朮・甘草は上薬(『神農本草経』)といっても、その病に対応していなければ害がある。
まして中・下の薬は、元気を損じて他の病を併発してしまう。
やむを得ないときだけ鍼・灸・薬を用いるようにして、ただ養生の術を頼りにすべきである。

《薬・鍼灸を用いず養生の道を守る》
昔の君子といわれた人は、弓や乗馬を好み、労働し、さらに歌を詠んだり、踊りなどをして血脈の流れを養い、嗜欲を節制し、心気を安定させ、外部にさらされることを防いでいたが、これらを常日頃していれば、鍼・灸・薬などを用いなくても病にならない。
病気になって薬をのみ、痛い鍼、熱い灸をして父母からもらった身体を傷つけ(昔の鍼は太く、硬かったため痛かった。
また、お灸も大きなもぐさをすえていたため、とても熱く、皆それを我慢していました。)、火をつけ、熱病をこらえて身を責め病気を治すのは甚だもって下の策といわざるを得ない。

《運動は健康増進のもと》
身体は毎日少しずつ労働すべきで、長く坐っていてはならない。
毎日食後には庭を数百歩静かに歩行する。
雨の日は室内を何度となくゆっくり歩く。
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Q よく、脂肪がたくさんあると身体によくないといいますが、
   実際脂肪は身体にとってどのような役割があるのですか?

A ◎脂肪の種類…脂肪とは一般にいう油類の食品のことで、動物性と植物性とがあります。

◎脂肪の消化・吸収…脂肪は、小腸でグリセリンと脂肪酸とに分解・吸収されて肝臓に送られますが、大部分はもとのままの形で吸収され、リンパ管から血管へ流れ込み、全身の脂肪組織に貯えられます。
摂りすぎた炭水化物も、肝臓で脂肪に変えられて、脂肪組織に貯えられるのです。

◎脂肪の役割…血液中のブドウ糖や貯えていたグリコ−ゲンが少なくなると、肝臓は、全身の脂肪組織に動員をかけます。
すなわち脂肪は、いったん肝臓に集められてリポイドという形に変えられ、再び送り出されます。
このリポイドと酸素が化学変化をおこし、二酸化炭素(炭酸ガス)と水とエネルギ−に変わるのです。
このとき発生するエネルギ−の量は、炭水化物の2倍以上もあるので、脂肪は、効率のよい栄養分ということになります。

◎参考…大豆油やゴマ油などには、身体に絶対必要な成分を含んでいます。
 脂肪は身体には必要不可欠なもので、なければこまるものですが、ありすぎて、身体が重く、運動性がなくなるのも考えものです。
脂肪を減らすには運動するのが一番ですが、急に運動すると心臓に負担がかかったり、関節や筋肉を傷めます。
効率的な方法が必要となります。
 また、はり・きゅうをしたり、吸い玉や吸圧法を行うと、効率的に脂肪が燃焼し、やせてくる場合があります。
  お困りの方は各治療院の先生や総合体操教室にてご相談・ご活用下さい。
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 知識(1)ウンコの色  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

 古来より中国では「二便を問う」という言葉があります。
二便とは小便と大便のことを指します。
人間の体の中を知るのに、小便と大便がとても重要なことを意味しております。
今回よりその中でもとくに重要視されている大便の健康な状態と病気の時の見分けができる方法をお話していきたいと思います。

 はじめに、ウンコの色は何によってつくのかです。
ウンコの基本的な色は、主に胆汁色素(たんじゅうしきそ)と食べ物のカスによってつけられます。
とくにウンコは黄色、といわれる主役は胆汁色素です。
この胆汁色素というのは、赤血球の中にあって血液を赤く見せているヘモグロビンの残骸です。
いらなくなったヘモグロビンが肝臓で分解され、胆嚢から胆汁として分泌されたものに含まれる色素で、ビリルビンと呼ばれています。
胆汁は、お酒を飲みすぎて何回も吐いたあげく、何も吐くものがなくなって最後に出てくるあの緑色の液体です。
民間療法で胃の薬として珍重される「熊のい」は熊の胆汁です。この胆汁がウンコに色をつける主役なのです。

 ビリルビンは、十二指腸に分泌され、食べ物とともに小腸を大腸に向かって下がります。一部は途中で吸収され、再利用されますが、大部分はウンコの色づけに参加します。
ところが、このビリルビンは酸度によって色が変わります。
アルカリ性では緑褐色、酸性ではオレンジ色です。
だから、小腸の中の酸度の強弱によって、ウンコの色も変わるわけです。
盲腸から大腸を通るあいだに、ビリルビンは腸内細菌の作用を受けて何回も形を変え、最後は、ステルコビリン、一部ウロビリンという物質に変わります。
この間、色も、褐色から黄褐色、褐色と変化します。
といっても、全部が一度に変化するわけではないので、ウンコの色はそう急激には変わらず、だいたい黄色から褐色のあいだでとおしていると思われます。
また、ステルコビリンも、前者のビリルビンと同じく酸度によって変色し、酸性では橙黄色、中性では黄褐色、アルカリ性では褐色を呈します。

 ところで、腸の中の酸度は、おもにウンコの内容によって決まります。
つまり、食事の内容に左右されるのです。炭水化物が多い食事をとると、細菌の働きによって発酵がおこるために、酸性になり、蛋白質をたくさんとるとアルカリ性に傾きます。
だから、ほかの要素をのぞけば、炭水化物をたくさん食べたときのウンコは黄色く、肉を食べたあとのウンコは茶褐色になるわけです。

  肉食を多くする人のウンコが黒っぽいのは、肉の中に含まれる血のせいだという説明をする人がいますが、血のしたたるような肉でも、ウンコが黒っぽくなるには、よほどたくさん食べなければなりません。|こんなことはきわめてまれなことで、腸の中がアルカリ性になるのが原因なのです。

次号よりこれらの色への変化が、からだのどんな異常を告げるのかをお話して参ります。
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