健康研究サークル『オアシス』会報
オアシスだより 第29号 2006年7月

 
『オアシスだより第29号発行にあたり』
清野鍼灸整骨院 院長 清野充典 

2006年度(平成18年度)が始まり早3ヶ月が過ぎました。今年度も、多くのオアシス会員がひき続き当サークル活動にご賛同いただきましたことに、深く感謝の意を評します。ありがとうございました。
 今年度は、健康研究サークル「オアシス」設立10周年の年になります。清野鍼灸整骨院開設10周年を記念し、当院に来院している患者さんと積極的に交流することが設立目的でした。この10年間、時代は西洋医学・医療中心から東洋医学・医療(鍼灸治療・漢方薬)が求められる世の中に変わりました。介護保険が導入され、健康は自分で守らなければいけない環境になりつつあります。当研究サークルは、時代のニーズにお答えするために、健康体操教室、講演会、会報作成等を通じて皆様にこれらの情報を提供し、この時代を乗り切るための具体策をお伝えしてまいりました。皆様が必要としている情報に対応できる体制はほぼ出来上がっております。積極的に当会をご活用いただくことが、皆様にとってなりよりのメリットであると確信しております。
 清野鍼灸整骨院は、今年開業20年目を迎えました。私は、世界で初めて鍼灸医学専門の大学として開学した母校「明治鍼灸大学」の卒業生として、ここ東京で初めての開業者です。現在、当院のスタッフは、すべて私の後輩であり、皆「鍼灸学士」です。最先端の医学知識と、最良の鍼灸医療を提供するための努力を続けてまいりました。調布本院・府中センターに来院した患者さんは、1万人を超えます。多くの皆様に鍼灸治療のすばらしさを提供できましたことは、私の喜びとするところです。2007年2月1日(木)に、健康研究サークル「オアシス」10周年記念・清野鍼灸整骨院20周年記念をかねて、午前は「たづくり」、午後は調布駅前の「クレストンホテル」にて各種記念イベントを開催いたします。参加可能な準備をしていただけましたら幸甚に存じます。
 私事ですが、4月より「大東文化大学院文学研究科」博士課程前期中国学専攻に入学しました。「中国学」とは、中国の哲学・思想、文学、史学、芸術、語学そして日本に伝わった中国関係書等を含む学問のことです。これらを総合的に勉強できる環境を有しているのは、日本では大東文化大学・大学院1校だけです。大正13年に「国費」で設立された同校は、戦前まで、代々「内閣総理大臣」が「大学総長」を歴任するなど、80年にわたり「漢学研究」を推し進めてきた「中国学」のトップ校です。国の後押しを受け、東アジア文化の伝承と研究を継続してきた同大学は、「大漢和辞典」「中国語辞典」作成をはじめとした功績や、輩出された高名な学者はいとまがありません。現在、日本のベスト3といわれる中国哲学の教授陣に指導を受けております。また、私の指導教官は、日本でただ一人「中国医学」を研究している中国学専門の先生です。皆様に提供している「鍼灸医学」を極めるための研究を行い、より確実で、再現性のある「鍼灸医療」の確立を目指し頑張っております。鍼灸師が誰も行ってこなかった研究をしていますので、成し遂げることが非常に困難な、高い山を登っておりますが、「最先端の医学知識と、最良の鍼灸医療を提供している清野鍼灸整骨院」の標榜をおろさないために、今後も努力精進を続けてまいります。今年度も、会員の皆様に幸多かれと祈念いたしております。

平成18年7月11日現在の会員数 140名 

■ 目 次 ■
 鍼灸治療の効果をご存知ですか?(産婦人科編) 『婦人科に効ある鍼灸治療』
 鍼灸治療の効果をご存知ですか?(泌尿器編) 『尿管結石』
 鍼灸治療の効果をご存知ですか?(呼吸器編) 『気管支喘息について』
 鍼灸治療の効果をご存知ですか?(整形外科編) 『腱鞘炎』
 鍼灸治療の効果をご存知ですか?(消化器編) 『消化器の病気』





鍼灸治療の効果をご存知ですか?
(産・婦人科編)

『婦人科に効ある鍼灸治療』
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


1. 逆子(医学用語は「骨盤位」)
下記内容は、ホームページに掲載している内容です。オアシス会員で、ご自宅にインターネットを設置していない方、パソコンを使用できない方のために、掲載いたします。一度ご覧になった方でももう一度読むと違うかもしれませんよ。

.逆子を治す時期(逆子にならないためには)
逆子は医学的には「骨盤位」といいます。逆子になる原因はいろいろな事が考えられます。日常の生活動作で一番多いのは、お腹を圧迫する姿勢です。お勝手仕事やお風呂場の掃除は特に良くありません。それにもましてよくない原因、それは冷えです。主婦は水周りの仕事が多く冷えを受けやすい環境にありますから要注意です。薄着やクーラーも冷えの原因です。最近はさらしをまかず、腰周りや太ももを保護していない妊婦さんが大変多いように思います。身体が冷えるという事に無頓着な妊婦さんは、冷たい飲み物やアイスクリーム、冷やした果物などの飲食が多く、暑い時期に冷やし中華・ひやむぎ・そうめん・ざるそば・ゼリーなどを常食、氷まで食べているほどです。
 母親教室・安産教室で講習を受けたり、各種専門書をお読みになった方はお分かりだと思いますが、なぜ妊婦が身体を冷やしてはいけないかを経験を交えて申し上げますと

1
妊娠中毒になりやすい。
2
胎児の成長が悪い。
3
羊水(赤ちゃんのおしっこ)の量が少ないため、赤ん坊が子宮の中でぷかぷか浮く状態にならない。
羊水による無重力状態の環境が損なわれ、赤ん坊が動きにくくなる。胎児の安全性に も問題が生じる。
4
微弱陣痛になりやすい。
5
出産に時間がかかりすぎるため (通常、初産で分娩に約12時間要するが、24〜48時間もしくはそれ以上の時間を要する事が多い) 母体の体力が消耗し、母体が危険にさらされやすい。
6
陣痛促進剤を使用せざるをえなくなる確率が高くなる。
7
帝王切開しないと出産が困難になる確率が高くなる。
8
死産の危険性が高くなる。
9
母乳の出が悪く、人工乳を使わざるをえなくなりやすい。
10
出産後の体力の回復に時間を要する。
11
逆子になりやすい。

以上のような事が主にあげられます。母体を冷やす事は百害あって一利なしです。ここで重要な事は、身体を冷やす事によって生じた不快な症状を取り除くため、薬物療法を選択する事には問題があるということです。胎児への影響を考えると、すべからず鍼灸治療を選択する事をお勧めいたします。妊婦さんの健康管理はお子さんにとって一生の大事となります。
 さて、逆子に絞ってお話しましょう。冷えは足元から入りやすいのですが、太ももやお尻、お腹が冷えてくると赤ん坊は頭が冷やされすぎるのを嫌って自発的にひっくり返るのではないかと私は考えています。すでに生命力を宿しているわけですから本能でそうするのではないでしょうか。母体を冷やす事をやめないともとには戻らないようです。
 逆子を治すために「逆子体操」がありますが、どうも効果を発揮していないようです。
 助産婦さんは手で回転術を行います。熟練した人は1時間30分ぐらいかけてゆっくり、胎盤剥離を起こさないように行います。
 私も現実に目にした経験がありますが見事なものです。だだし、この技術を要している人は現在ではかなり限られているものと考えられます。学校教育等で熟練者により助産婦や産婦人科医に伝授・継承していってほしいものだと個人的に考えております。
 手技による回転術を除き、逆子の治療に関しては、鍼灸治療が現代の医療の中で最も有効で効果の高い方法であろうと認識しております。鍼灸治療における骨盤位(逆子)の有効性において医学博士の称号が送られた医師もおり、その効果が現代医学界でも認識されております。鍼灸治療をすると子宮が強く収縮し、胎児を通常の正常な位置に自発的に戻す力を生じさせます。お母さん自身の力を応用するだけですのでとても安全です。

ただし、治療する時期に一定の条件があります。最も有効な期間は28週〜32週です。胎児の状況によっては26週からでも可能です。赤ん坊は大きくなりはじめると子宮の中でくるくる回っています。25週以下では治療してもすぐ戻ってしまいます。医師もあまり逆子について問題視しない事と思います。胎盤の剥離も考慮し25週以下では行わないようにするのが通常です。
 さて、それでは鍼灸治療で逆子がどれくらいでよくなると思いますか?データーの採り方にもよりますが、

1回目の治療で 約30% 矯正成功 (約1時間以内)
2回目の治療で 約30% 矯正成功
(1時間後には帰宅してもらうため2度目の来院時に判明する者を含む)
3回目〜5回目の治療で 約30% 矯正成功

していると個人的には認識しております。逆子体操をして毎日がんばっている人には信じられないぐらい早くて高い確立でしょう♪。28週ぐらいから治療をはじめると1ヶ月くらい余裕がありますから、10中8・9治りますよ。治療は約1日おきに行うのですが、32週と6日目にいらっしゃったかたは時間に余裕がありません。もしこのホームページをお読みになったかたが逆子だったらすぐにもお近くの鍼灸院にご相談して見てください。1分1秒赤ちゃんは大きくなります。時間との勝負ですから。
 胎児の矯正がうまくいかない残りの10%は、期間が限られ治療回数が5回を越えると胎児が大きくなりすぎ自己回転することが困難になるためということが含まれるのですが、それ以外の理由は次の5つが考えられます。

1
臍帯が長く(1m以上)赤ちゃんの首に巻きついたため。(くるくる回りすぎたため)
2
臍帯が短すぎるため。(30cm以下)
3
前置胎盤の人
4
赤ちゃんがあぐらを書いて正面を向いている。
5
重篤な病気にかかっている。

以上の状態は、出産にあたり胎児の状態を確認するためにするレントゲン撮影で判明したり、帝王切開して初めてわかるものであり、触診では困難ですが、鍼灸治療をして一向に胎児の動きに変化がない場合は、上記のことが胎児に生じているようです。冷えが強いお母さんの場合、5回の治療で取り除くことが困難なことも逆子を矯正できない理由の一つと考えておりますが、来院したお母さん方にはそこで諦めないように伝えてあります。

その理由は、陣痛が始まったときに起こる強い子宮の収縮により、逆子が改善される事があるからです。足の小指にある「至陰」というツボにお灸を40週までし続けると、冷えが解消され子宮が柔軟になりますのでその確率はぐっと高くなります。胎児の姿勢(お尻から出てくると)によっては逆子のまま出産する事も可能です。人事を尽くして天命を待つ。赤ちゃんに一生懸命語りかけ精一杯の事をすれば、赤ん坊がそれに応えてくれるのではないか、と私は思っています。
 先日も33週を過ぎた妊婦さんが治療にいらっしゃいました。運を天に任せた治療でしたが、2回の治療で矯正されました。きっとお母さんの思いが通じたのですよ、と私は答えるようにしています。生命力の持つすばらしさは、医学の範囲をこえる事が常にあります。

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鍼灸治療の効果をご存知ですか?
(泌尿器編)

「尿管結石」

清野鍼灸整骨院 副院長代行 金親孝明



皆さんは「尿管結石」という病気をご存知でしょうか?「尿管結石」は、まず腎臓に硬い結晶の「結石」ができます。「結石」が腎臓を出て細い尿管を通る際、腰・わき腹・下腹部・会陰部に、繰りかえす発作性の激しい痛みがでます。「尿管結石」の痛み発作が出たときは、まさに七転八倒の苦しみです。痛みのために声も出せなくなり体をくの字に折って動けなくなるほどの強い痛みが出ます。「結石」の形は、砂のようなものから丸い砂利状のもの、とげとげした鹿の角のようなものまでさまざまです。たとえ砂のように小さなものでも、尿管に詰まれば耐え難い痛みをひき起こします。また「結石」が詰まることにより血尿が出たり、頻尿やおしっこが出にくくなったりするといった症状が出ることもあります。
「結石」の大きさが直径5o以下の場合では、自然に排出されるといわれています。しかし、それ以上になると「結石破砕術」により「結石」を細かく砕かなくてはなりません。「結石」が排出されるのに数ヶ月と長期間かかることが、よくあります。西洋医学では、その間に起こる発作性の痛みを抑えるために鎮痛薬を使います。早く「結石」を降ろすために、水をたくさん飲むことや、縄跳びをすることが指導される事もよくあるようです。意外とよくある病気なのですが、有効な根本的治療は西洋医学にないのが現状です。この病気になったら数ヶ月は痛みに耐えなくてはならないというのが、現在の医学の常識なのです。
しかし、根本的かつ有効な治療法が鍼灸にはあります。人の体には「経穴」という治療をする際に用いる点、いわゆる「ツボ」が無数にあります。そのうちのひとつに「水道穴」があります。「水道穴」は下腹部にあり、体内の水の通りを良くすることにより排尿困難を治し、下腹部や腰、臀部の鋭い痛みをとるのに有効であると考えられています。「尿管結石」の患者さんの「水道穴」に鍼とお灸をすると石の排出が早くなり、鎮痛薬でもなかなか取れない痛みが、速やかに軽くなります。当院では「尿管結石」の患者さんが多数来院されますが、1回から4・5回の治療で痛みが止まり、石も排出されています。これは、他の医療行為では類を見ない高い治療効果といえます。
体の中に「結石」ができるのは体に「冷え」があり「気」が固まってしまうためと東洋医学では考えます。体を冷やしたときや、体が疲れて温まる力が落ちたときに「結石」はできるのです。また、動物性たんぱく質や脂質、薬剤の過剰摂取も「結石」を作るのに影響していることはよく知られています。適切な飲食、充分な休息、適度な運動が「尿管結石」の予防には大切となります。お気をつけください。

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鍼灸治療の効果をご存知ですか?
(呼吸器編)
『気管支喘息について』
清野鍼灸整骨院 府中センター 院長 日吉 直之

〔気管支喘息とは…〕
気管支喘息は、呼吸困難を起こす代表的な病気で、主として息を吐き出すことが困難な症状です。発作が起こっていないときには何の症状もなく、発作が始まると顔を真っ赤にしてゼーゼーという音を発し、激しい呼吸にたえるため、たいていは座ったままでなければ呼吸することが困難です。その理由は、気管支自体に強い攣縮が起こるためです。
この症状は、季節の変わり目や夜間、特に明け方に呼吸困難が起こり、笛のような呼吸音と、ねばねばした半透明の痰がよく出ます。これは気管支にある平滑筋が攣縮し、さらに粘膜浮腫や気管支に狭窄を起こし、粘液分泌が増加するために、呼吸困難を起こすからです。また、気管支閉塞を起こすと肺胞に入る空気が減るので、体内の酸素が不足し、ひどい場合は、口唇や爪色がチアノーゼになり、寝ていることが苦しくなり、夜間などはベッドから起きて呼吸をすることを余儀なくされます。


〔原因〕
東洋医学的観点から気管支喘息を考えると、呼吸器系や腎臓系の機能低下が主体となっており、全体的に体力低下した結果、発病している場合が多いです。この呼吸器系や腎臓系の機能低下の原因を分類しながら詳しく述べますと、下記のことが考えられます。
@ 先天的に肺または腎機能が弱いか、両者いずれかの機能が弱い。
A 先天的に肺機能・腎機能が押さえ込まれる体質である。
B 生後の生活において、肺・腎機能を弱らせる生活を続けている。

肺機能低下させる生活…大気汚染した空気を吸う、絶えず前にこごむ姿勢でいる、寒冷大気吸引、苦味・辛味の過飲食、父母から離れてさびしい思いをする。
腎機能低下させる生活…食欲旺盛で絶えず過食気味、甘味のものを好んで食する、フルーツを常食する、ジュースをよく飲む、水ものを欲しがる、アイスクリーム類を欲しがる、醤油などの塩分を摂りすぎる、小心で用心深いところがある、臆病でびくびくした面がある、就寝時よく寝返りをしてふとんをはだけて寝ている。

C 肺機能が十分に働かない小児である。
幼少期は年代的に腎臓や肝臓の働きが旺盛で、肺の機能が十分に働きません。さらに、先天的に体質が弱いと、日常生活の不適や精神的に異常をきたすことが原因になって発症します。例えば、母親の愛情に飢えている子や、弟や妹が出来たため、自分にかまってくれないでいる子などに、小児喘息が多く見られます。性格の点からみると、甘ったれで神経質、さびしがりやで気が小さく、いいたいことを十分にいえないような弱い性格の子供にこの病気が多いです。
D日常生活で身体を冷やしている。
クーラーが効いた涼しい部屋の中にいたり、アイスクリームやジュースなどの冷たいものを飲んだり、果物や甘いものをたくさん食べることや、寝相が悪くいくら布団をかけてもはだけてしまうような状態を日々行なうと、身体の芯まで冷えてしまいます。このように冷えが体内深くまで入り、その冷えを体外に出そうとして発熱します。しかし、体力が低下していると強い発熱を起こすことができません。その不足は胸膜を激しく動かすことで補い、その結果咳の発作が起こるのです。また体温が落ちると、気管を狭め、なるべく冷たい空気を吸引しないようにしますが、激しい咳の連続によって、気管の内表に炎症が起きます。この状態のときに、異常刺激が加わると、喉がイガイガして空咳をします。
E動物や植物の微量異物を体内から排除するために過剰反応している。
室内の埃、花粉、ペットの毛やフケなども発作のきっかけとなります。

〔治療〕
気管支喘息の症状を治すためには、身体を冷やす生活習慣を改善し、冷えを解消しなければいけません。鍼灸治療は、内臓の疲労を取り、身体の「熱を作る」機能を向上させます。症状が改善されない方は、当院が行っている「世界最先端の鍼灸治療」を体験・実感して下さい。

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鍼灸治療の効果をご存知ですか?
(整形外科編)

「腱鞘炎」

清野鍼灸整骨院 主任 中村幸雄


人間の身体の仕組みは複雑です。私たちは意識しなくても、呼吸をすること、食事から栄養を吸収することをしています。特に、健康な状態の時には、ほとんど無意識におこなっています。どこかに痛みやしびれが出たりすると、事態は一変するかもしれません。例えば、思うように動けなくなったり、熱が出たり、ハアハアと呼吸が浅くなったりする状態に陥ったときです。その時初めて、普段何の問題もなく、行っていたことを意識することも多いと思います。
この連載では、いわゆる整形外科疾患を取り上げます。人間の身体を骨や筋肉、靭帯、関節、脊髄、神経などの運動器官に焦点を絞り、人間の身体の仕組みを考えてみたいと思います。

今回は、手首、手の指に起こる病気「腱鞘炎」を取り上げてみましょう。まず、手首、手の指は、どのような仕組みになっているのか簡潔に説明します。人間の手、指は、物を掴み、五本指を開き、一本一本動かすことができます。ご自身の手を眺めて下さい。指一本一本には、皮膚に刻まれた横方向の皺があります。その皮膚を一皮めくると関節があります。関節は、骨と骨が連結されている場所になります。一つ一つの関節を動かしているのは、筋肉の動きによるものです。その筋肉が、骨に固定されているところを「腱」といいます。腱がスムースに安定して動かせるように、腱の通り道がトンネル状に作られている部分を「腱鞘」といいます。「腱鞘炎」とは、「腱」と腱の鞘になる「腱鞘」で、痛みが起きている状態のことを表しています。
指を動かす筋肉は、それぞれ肘の関節や腕の骨から始まり、指先に向かって決まった道を通り、細く、強い「腱」になって指先に付いています。決まった通り道に固定し、支えている役目は「腱鞘」がしています。「腱」や「腱鞘」はたくさんありますが、痛みを起こす部位は、構造上負担のかかる部位に決まっています。親指が約75%と最も頻度が高く、中、薬、小指の順に痛みます。
「腱」や「腱鞘」に負担をかけることにより発症するため、筆を持つ作家、楽器の演奏をする音楽家、パソコンのキーボードを叩く方に多いといわれています。日常の炊事、洗濯、掃除をすることでも使いすぎになり発症することもあります。手、手の指を使いすぎることによりおこる状態のため、どんな方にも起こりえる病気なのです。


「腱鞘炎」の治療は、どのような方法があるのでしょうか。一つに、患部を固定するという方法です。筋肉の動きを抑え、「腱」や「腱鞘」にかかる負担を軽減します。例えば、装具やテーピングを用い、安静にするように処置します。使いすぎにより起きた炎症を鎮めるためには、「腱」や「腱鞘」を休ませることが、重要です。休ませることにより炎症は鎮まり、「腱」や「腱鞘」が回復します。でも、回復が間に合わず、手首、手の指を使い始めれば、炎症は続き、痛みも続きます。だからといって、手首、手の指を使わないで生活することは、大変不便なことです。

薬により、炎症を鎮める方法もあります。ステロイド剤に局所麻酔を混ぜたものを、炎症している部位に、注射する方法です。ステロイド剤は、効果が早く出ます。人によっては、一度の注射で二度と痛みを感じなくなります。仕事が忙しく、時間もないため早く効果を期待したい方には良い方法かもしれません。ステロイド剤には、副作用、効果の出方、効果の期間も個人差が大きいことが指摘されています。
「腱」の支えになっている「腱鞘」を、切り開く手術です。「腱」の通り道になっている「腱鞘」が開かれることで、「腱」の動きが良くなります。手術も短時間で終わり、効果も早く顕著に現れます。先程説明させていただいたように、手の指を動かす仕組みは、精密にできています。そして、指を動かす筋肉や腱に、命令を送る神経や、栄養を送る血管も、細かく配置されています。その全てを傷つけず、手術を完遂し、症状を取り除くことは難しいといわれています。開かれた「腱鞘」の部位を通る「腱」は支えを失い、周囲に痛みが出現する可能性もあります。

 手首、手の指に起きている炎症をでるだけ早く鎮めて、回復を助ける治療が一番だと考えられます。

「腱鞘炎」も、鍼とお灸で治療ができます。炎症が起き、痛みを出している部位に、直接鍼をします。指先に響くような感覚、電気の走るような感覚がでるように鍼をします。それが、「腱鞘」に鍼先が届いた合図になります。次に、お灸をします。もぐさを、親指の頭くらいに丸めて、鍼の頭の上に乗せ、火をつけるお灸です。暖かく感じる程度のお灸を、数回します。鍼とお灸を組み合わせることにより、より早く炎症を鎮め、回復を助けることが出来ます。この方法は、連続して治療することで、より早く効果が出ます。頑固な「腱鞘炎」になればなるほど、定期的に治療するのではなく、短期間で毎日治療されることをお薦めします。お悩みの方は、是非ご相談ください。


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 鍼灸治療の効果をご存知ですか?
(消化器編)  
      『消化器の病気』
清野鍼灸整骨院 副院長 小野寺啓


今回よりオアシスだよりが一新。今までは子供の病気について皆さんにお話してきましたが、新たに「消化器の病気」について一緒に勉強していきましょう。
 消化器といっても沢山ありすぎて、何を書いてよいのやら。口腔(口の中)、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓etc‥。人間の体の中には本当に多くの消化器があります。散々悩んだ挙句、決めました。今回、皆さんにお話しするのは「胃」の病気についてです。
「胃」といってもこれもまた非常に病気が沢山。またまた頭を悩ませます‥。
 皆さんが耳にしたことのある病気から始めることにしました。今回は「胃炎」という病気についてわかりやすく触れていきましょう。

「胃炎」は呼んで字のごとく、何かの原因で胃に(正確には胃の粘膜に)炎症が起こった状態を指します。皆さんが「ちょっと最近胃の調子が悪いんだよね」というときは、この胃炎が起きている可能性が高いようです。
原因は意外と沢山ありますよ。量が多いので箇条書きにしましょう。

@飲食の不摂生、刺激物の摂取によるもの
Aアスピリンなどの薬によるもの
B腐食剤(洗剤など)の誤飲によるもの
C細菌やウイルスの感染によるもの
D食物のアレルギーによるもの


これらの原因により、胃粘膜が炎症をおこして胃の調子を悪くします。@Aは単純性胃炎
Bは腐食性胃炎Cは化膿性胃炎、感染性胃炎Dはアレルギー性胃炎と呼ばれています。胃炎の症状は、炎症の程度によって異なります。食欲低下、胃の不快感、胃もたれ程度であれば軽症と判断できます。ひどい炎症になると腹痛、吐き気、嘔吐を伴います。もっと悪化するとケイレンが起こります。
現代医学ではこの炎症を押さえ込むために抗炎症剤が使われ、同時に粘膜保護剤が用いられこともあります。
しかし、胃炎に関しては、実は原因が取り除かれ、食事に気を払えば薬を使わなくても回復することが判明しています。問題なのは胃に炎症が起こっているのにも関わらず原因を理解しないことです。
一般的に皆さんが遭遇するのは、先にお話した単純性胃炎、つまり食事に問題がある場合と薬によるものが大多数です。食べすぎ、薬の飲みすぎというわけです。消化の悪いもの、冷たい物、過食、深夜の食事、薬も胃をいためるばっかり。でも、なかなか生活を変えたり、薬をやめたりするのが難しいのは百も承知の方が多いことでしょう。
そこで、はり・きゅう治療の出番になります。治療を受けたことのある人は、治療後に胃の調子がよくなることを何度も経験しているはずです。はりをすると胃が働き、きゅうをすえるとお腹が空いてきます。はり・きゅう治療は炎症を抑えるのではなく、胃の粘膜の自己再生を促進します。治療を受けたことのない人はぜひどうぞ。
でも、やっぱり食事そのものを変えたり、薬の量を減らしたりするのが一番なんですけどね。

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