健康研究サークル『オアシス』会報
オアシスだより 第20号 2003年6月

 
『オアシスだより第20号発行にあたり』
清野鍼灸整骨院 院長 清野充典 

 健康研究サークル「オアシス」も7年目になり、会報も20回目を数えるようになりました。内容も盛りだくさんです。4ヶ月に一度の発行ですのでゆっくりお読みいただきたいと思います。
 平成15年5月15日(木)の第15回「オアシスの集い」には多くの会員の方にご参加いただき有難うございました。会員外の一般市民の方が16名いらっしゃっていただき、多くのご質問が寄せられ活気あふれるひとときとなりました。
 一人でも多くの方に正しい東洋医学・医療の知識をお持ちいただき、健康な生活を送っていただけるお手伝いができるよう今後も精進していきたいと思います。
最後になりましたが今年度も当会の活動をご支持いただき、ご継続の手続きをしていただいた会員の皆様に深く感謝申し上げます。 

平成15年6月15日現在の会員数 136名 

■ 目 次 ■
 『はり』ってなあに?第20回 『中国の鍼』
 体のしくみ その19 『自律神経について』
 健やかに育つ小児はり 子供6 『喘息について』
 健康に関する常識 問題2 『熱があるのに震える』
 昔ながらの生活を知っていますか? 薬草2 『アカネ』
 ウンコ診断学知識15 『灰白状のウンコ』
 医食同源十一の幕 『シイタケ』
 こんなときどうする PART18 『高山病』
 体の異常値・正常値 数値十二 『呼吸』






 『はり』ってなあに?第20回
『中国の鍼』
清野鍼灸整骨院 副院長 今田開久


 平成15年3月21日、我々清野鍼灸整骨院では、中国の蘇州にある蘇州華佗鍼灸機器総合工場を見学してきました。その様子を簡単にご報告致します。
 華陀という会社は現在、全世界で使われている鍼灸用鍼の56%を製造しており、輸出国も100ヶ国以上を数える世界規模の会社です。中国国内のみならず、豪・欧・米の品質保証許可である、CEマーク・TUV・ISO9002などを受けており、品質においても世界に認められています。今回訪れた蘇州の工場は、140年の歴史のある華陀で最も古い工場でした。
 現在、鍼や灸の製造は郊外の工場へ主力を移してしまっているため、全工程を目にすることはできませんでしたが、中国鍼を手作業で製造する工程を初めてみることができました (中国鍼は鍼柄(手で持つところ)が針金を巻いて作ってあるものです) 。基本的に、鍼柄を巻きつける工程までは、以前見学した日本の鍼工場と同様で、医療用ステンレスの針金を切断し、鍼先を研磨するという工程です。この工場では針先の研磨を熟練した職人が手作業で行っていました。また、鍼柄を巻きつける作業は、これもまた一本、一本手作業で、作業台の上に設置してある電動ベルト(モーターにベルトを通してあるもの)を用いて驚くべきスピードで巻きつけていました。現在、郊外の工場ではこの巻きつける作業もオートメーション化されているそうですが、以前は全て手作業で作っていたかと考えると気の遠くなる思いがします。最近活気があると言われる中国のマンパワーを感じました。
 現在この工場では、日本の販売会社から依頼されて、日本式の鍼の製造も行なっているそうです。工場長の話では、「鍼の素材・鍼先の質の点で、まだ日本の製品に敵わないところがあるが、徐々に改良していく予定です。そのために日本の工場と技術交流しています。」とのことでした。日本の販売会社はディスポーザブル鍼(使い捨て鍼)の、より低価格化を目指しているため、その労働力を中国に求めているのです。
 中国で生まれた鍼治療が日本に渡り、日本で独自の発展を遂げたとともに、日本では質の高い道具作りが行なわれてきました。その技術が中国に戻り、品質が高く・安全性の高い道具作りが世界的にも行なわれるようになりました。 
 今回中国の工場を見学し、鍼灸治療の安全性が世界的に確立したことを確信しました。
 今後も当院は、鍼灸治療の世界水準を提供できるよう努力してまいります。


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 『体のしくみ』その19
『自律神経について』
清野鍼灸整骨院 主任 金親 孝明


 患者さんとの会話の中で「近頃調子悪いんですよ先生、やっぱり自律神経ですかね」といった質問を受け、違和感を覚えることがあります。
 強い肩凝り、睡眠不良や身体のだるさなどを訴えて西洋医学の病院に行くと、あたかもそれが病名のように「自律神経失調症」と医師にいわれ、自律神経失調症によく効くからと精神安定剤など症状に対する薬やビタミン剤の類が処方されることがよくあります。
 おそらく、この西洋医学の対症療法的な考え方が患者さんに浸透していて、何か不調があると「自律神経のせいだ」という考えになるのだと思います。確かに不快な症状は自律神経の不調から起きているという考え方の半分はあっていると思いますが、100点満点の理解ではないと思います。
 自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、この2つの自律神経が人間の全ての生命活動に対して拮抗的に働きバランスをとっています。活動的なときは交感神経が、休息や身体を治す時には副交感神経がよく働いていると大まかに捉えていただくとわかりやすいと思います。
 たとえば交感神経は胃の中が空っぽで血液の中に栄養が足りなくなり、お腹がすき、眠れなくなって目をギョロギョロさせて食べ物を探すように脳に働きかけます。逆に副交感神経はお腹がいっぱいになると消化活動をするために血液を消化器に集めて脳や他の部分で血が足りなくなるから眠くなるようにします。
 また、交感神経は仕事するときや戦うときに頭をすっきりさせて血圧、心拍数を上げやる気を出させ、逆に副交感神経はリラックスして休むときに血圧、心拍数を下げゆったりとした気持ちにさせます。
 最後にもう一つ。交感神経は活動的になり怪我をしてバイ菌の侵入に対し、それをやっつけるために働き、副交感神経は睡眠中に疲労を取ったり、風邪のウイルスを退治したり、病気の身体を治したりするときに働きます。
 他にもこの2つの神経の働きをあげると数えきれないほどあります。
 この2つの神経が拮抗的にバランス良く働いていると人間の身体の生命活動は健やかに行われます。しかしながら、このどちらかが過剰に働いてバランスが崩れてしまうと、様々な症状が現れてくるのです。長期間頑張って夜中まで働いたり、ストレスを受け続けたりして交感神経過緊張となっても、逆にのんびりしすぎる生活をして副交感神経が過緊張となっても身体に不快な症状は起こります。
 ですから問題は自律神経にあるというよりも2つの自律神経のアンバランスを引き起こした不適切な生活習慣にあるのです。鍼灸治療は自律神経のバランスを整えるのが得意な治療方法です。しかし、いくら自律神経のバランスを整えても生活様式が変わらなければ、またバランスは崩れてしまいます。忙しい現代生活の中では難しいですが、規則正しく適度に働き、適度な時間休息をとるといった生活を心掛ける事が大切です。そういった日頃の養生がなければ、自律神経の不調は治らないのです。
 皆さんを治療する際に皆さんの耳がタコになるほど、よく寝てくださいとか、適度な運動をしてくださいなどと日ごろの養生をお願いするのはそのためなのです。日ごろの養生が健康を保つ秘訣です

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 『健やかに育つ小児はり』子供(6)

『喘息について』

清野鍼灸整骨院 主任 小野寺 啓


 今回は「喘息」についてお話をしていきましょう。一般的に喘息というと呼吸が苦しい病気というイメージが沸くと思いますが、実は喘息という名前がつく病気は2種類あることを皆さんはご存知ですか?
 ひとつは「喘息様気管支炎」で、もうひとつは「気管支喘息」です。どちらも呼吸器症状が主ですが、この両者は全く違うのです。
 喘息様気管支炎は風邪が長引いたときに起こる気管支炎で気管の中の分泌物が増えて痰が出にくくなって、呼吸のたびにゼロゼロ、ヒューヒューします。特に夜間に咳込みますが、呼吸困難は起こしません。
 一方、気管支喘息は俗に言うアレルギー疾患で、気管支が狭くなります。同じようにゼロゼロ、ヒューヒューします。精神的なストレスも影響しているといわれています。咳の発作も夜中におこることが多く、ひどくなると呼吸困難となって寝ていられずに座って呼吸(起座呼吸)する様になります。もちろん会話もできなくなります。
 西洋医学での一般的な治療は、気管支拡張剤や去痰剤、抗アレルギー剤の投与や、減感作療法などになります。
 東洋医学では、「咳」を体の中の「冷え」を肺の呼吸運動によって取り除こうとする好転反応だと考えます。
冷えた母乳の摂取、冷たい物の飲食、白砂糖の過剰な摂取、夜型の生活などによって内臓が冷やされ、特に肺が中心に冷やされれば、激しい咳や喘鳴がそれらの冷えを解消しようとして出てきます。
 咳を無理やり押さえ込むのではなくて、体の中から自然と改善する方法があればその方がいいと思いませんか?
 小児はりは体の中に熱を作り出して、冷えを追い出すことができる方法です。
 まずは一度ご相談を!!



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 健康に関する常識 問題2
『熱があるのに震えるのは?』
清野鍼灸整骨院 院長 清野充典


 健康なとき、体温は36〜37度に保たれています。これは腦の視床下部に体温調節中枢があり、サーモスタットの役割を果たしているからです。暑いときには汗を出したりして、体温が一定になるように調節しています。
 ところで、病気になると39度とか40度の高熱が出ますが、これは病気のために、温度中枢の作用が乱れるからです。ウイルスや細菌に感染すると、プロスタグランディンと呼ばれる毒素が産出され、これが体温調節中枢を刺激します。そのため体温調節中枢のサーモスタットは、いつもより高い所にセットされます。
 身体のほうも、セットされた温度まで体温を上げなければなりません。まず体温の放散を防ぐために、皮膚表面の血管や筋肉が収縮して、その結果、鳥肌がたち、顏色は青ざめてきます。また寒気がしてブルブル震えます。震えるというのは、筋肉が伸びたり縮んだり運動を繰り返すことで、それによって熱が産生されるのです。
 こうして体熱が上がり、セットされた温度に達すると寒気はなくなります。しかし、体熱が高いままでいると、身体が衰弱します。アスピリンは解熱剤として知られていますが、プロスタグランディンの生産を抑え、体温調節中枢を正常にする作用があります。平熱にセットされると、皮膚の血管は広がり、大量の汗が出て熱を放散し、体温は下がります

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 昔ながらの生活を
    知っていますか?薬草2
『扁桃腺のうがい薬に‐アカネ』
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


 野山や丘陵のへりなど、湿り気があって、日光も当たる所を好む多年草です。四角い茎のへりには、指で触ると痛い刺が下向きについています。分布する地域は、本州、四国、九州ですが、さらに朝鮮、台湾、中国大陸にまで及んでいます。ところが昔、中国の人は、同じアカネでも西域から来るもの(今の時点でいくとセイヨウアカネ)を上質というふうに考えていました。ですから、草冠に西という字を書いた、茜が、中国名になっています。
 では、西域から来るセイヨウアカネの方を、昔の中国人は、なぜ、上質と考えたのでしょう。それを考えると、それは古代エジプトなどで、その根が染料として、またその他にも使われていて、すでに有名になっていたからだと思われます。たとえば、エジプトのミイラが身につけていた衣装は全て、地中海沿岸の、このセイヨウアカネの根で染め抜かれており(媒染剤の違いで、色は色々に出る)、それがその後は「トルコ紅」の名でヨーロッパまで広まっていったくらいですから、そういう評判の高いセイヨウアカネの名声が、シルクロードを介して、当時なりに、中国人の耳にも伝わっていったことは、当然と考えられるからです。
 さて、道端の茜の根を掘って手に取ると、根は黄赤色の茜色をしており、暫らくすると、暗赤色に変わります。また噛んでみると渋くて苦く、舌も染まります。中国名は茜草で、生薬名も同じです。薬用部は根で、成分は多量のタンニン質と赤く染まるプルプリンというアンスラキノン系の物質です。
 さて、アカネは、今も草木染の一つとして好事家の間には、そのやり方が伝わっていますが、日本語の茜は、寺島良安が『和漢三才図会』の中で、“按ズルニ、茜は赤根ナリ”と言っているように、また小野蘭山が『本草綱目啓蒙』の中で“根赤キ故二名ヅク、予州デハ、アカ子カヅラ、駿州デハ、ベニカヅラ。ソノ根、黄赤色、掘リテ、薬用、染料トス”と記しているように、根の色に基づいています。
 1820年に、わが国で訳された『和蘭薬鏡』という本の記載を引用しますと、“茜草、根ヲ薬用トス。又、赤色の染料トス。性は温、味は帯苦、収墻、解凝、
利尿ノ効アリ。肝、脾、腎、子宮ヲ清刷シ、脾病、黄疸、水腫、諸種ノ腫レニ用ヒテ一種ノ疏解開達ノ良薬トス。茜根ハ経閉二峻効アル薬トス、数々、是ヲ試ミ用ユルニ性効、最モ平穏ニシテ他ノ通経薬ノ如キ攻撃苦泄ノ害ナシ”。
 さて、これをもう少し解りやすく書き直すと、“茜の根は、性質は穏やかで、味は少々苦く、また渋く、筋肉の凝りを解き、利尿の効があるから肝臓、脾臓、子宮の中を洗い清め、脾臓の病気、黄疸、浮腫、できものに用いれば、一種の散らし薬になる。” “通経剤として、しばしば試みた所によれば、利き目が穏やかで、他薬の如く下痢するような害も無い。”ということになります。さて、こうみてくると、アカネの根が赤いから漠然と血液に関する病気に効くという発想は、知的水準という立場でみれば、東洋も西洋もさほど違っていなかったことが解ります。


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 ウンコ診断学 知識(15)
『灰白状のウンコ』
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


 
さあ、いよいよいろんなウンコの説明に入ります。今回は灰白色のウンコです。5つの種類に分別してお話しましょう。今回は3つ。

【灰白色の水状のウンコ】
 腸結核や膵臓癌の人ならば、死に至る危険なウンコです。健康な人ならば、脂肪の吸収障害によるものでしょう。
 腸結核とか、膵臓癌の手術のあとで極端に体力が衰弱している時、このウンコが出たら、死期が近づいてきたといわれています。これは、下痢がひどくて脂肪の吸収がさまたげられるうえに、細菌の作用によって胆汁色素(ビリルビン)が無色のロイコビリルビンになるためといわれています。無色になるということは、腸内細菌が正常な活動をしていないことを意味し、小腸、大腸の機能がマヒしていることの証拠です。このため、体力がもちこたえられなくなり、回復は絶望視されてしまいます。化学療法が進歩してきましたので、最近では、腸結核などで死ぬ人が減ってきたのは、幸いなことです。
 腸結核以外の病気や胃腸障害で、このウンコに似たウンコが出ることがありますが、これは、脂肪の吸収障害で、形は、泥状に近いようですから、次の泥状の所で詳しく説明しましょう。

【灰白色の泥状のウンコ】
 消化不良、特に脂肪の消化不良の時のウンコです。普通は脂肪の取りすぎによって起こるものですが、大人の場合は、ひどい悪臭をともなうのが特徴です。脂肪の取りすぎといっても、日本人の脂肪摂取量は、ヨーロッパ人やアメリカ人に比べて半分から三分の一以下という調査結果が出ていますから、脂肪の量よりも、消化不良を起こしやすい悪質な脂肪、たとえばウナギや粗悪な食用オイルに責任があります。また、消化力の弱い疲れきった腸のほうにも問題があります。
 この脂肪の吸収障害を引き起こす病気には、単なる脂肪分過多のほかに、胃腸手術後の体調不全、膵臓疾患、などが考えられますから、医者に相談しなければなりません。

【灰白色の半練状のウンコ】
 あまり例の無いウンコですが、薬物や特殊な食品をとりすぎた時に出るようです。まず、考えられるのは、胃の薬や下痢止めに含まれている珪酸アルミニウムの飲みすぎです。この種の薬は、そのアルミニウム成分の色が胆汁色素よりも強くなって、ウンコを白くしてしまうことがあります。また、胃のレントゲン検査の際に飲むバリウムも、ウンコを灰白色にしてしまいますが、このときは、ウンコがやや硬くなる傾向があるため、半練状よりもバナナ状、カチカチ状に近くなります。
 食品の場合は、ごくまれなケースですが脂肪の吸収状態があまりよくないときに、牛乳やホワイト・チーズなどを食べすぎますと、こんなウンコが出ます。
 いずれの場合にせよ、かなり大量に食べたり飲んだりしなければこのウンコは出ませんが、薬マニアやチーズ狂には注意をうながしたいと思います。

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 医食同源 十一の幕 
『シイタケ』 仙人の酒と呼ばれる究極の長寿薬
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


 長野県の木曾の山奥に、「仙人の酒」と呼ばれるものが伝わっています。仙人の酒とは、シイタケを焼酎に漬けて作るシイタケ酒のことです。これを毎日飲むと長生きをするといいます。この言い伝えは嘘ではありません。実際に、シイタケからはエリタデニンという長寿につながる物質が発見されています。
 この物質は血液中のコレステロール値を下げたり、血圧を下げたりする作用があります。長寿の決め手は、血管の老化を防いで、心筋梗塞や脳梗塞を起こさないようにすることです。余分なコレステロールと高い血圧は血管を傷めつけて、それらの病気を進行させます。シイタケ酒は正真正銘の仙人の酒なのです。
 血圧を下げる健康法として、干しシイタケの戻し汁を飲むものが一部の人たちに間で流行っていますが、強いアルコールに漬けたほうが成分が多く溶け出して血圧を下げる効果も高くなります。また、シイタケ酒にすれば、保存も簡単です。
 シイタケなどのキノコには、β―グルカンという免疫を高めてガンを予防する成分まで含まれています。シイタケ酒には、この成分も溶け出してきます。
 作り方は、1・8リットルのホワイトリカーに、干しシイタケを五つぐらい入れて、2〜3週間漬けます。本来は、天然のシイタケで、しかも半干しにしたものを使います。しかし、そこまでこだわらなくても効果はあります。
 仙人の酒には、塩抜きの昆布を使う場合もあります。昆布にはアルギン酸やカリウムなど、血圧を下げるのに役立つ成分が含まれているので、確かにいい組み合わせです。飲みにくいなら、ハチミツを混ぜて飲むといいでしょう。
 ただし、全ての食品は取り過ぎに要注意です。これがいいといわれているものに偏ることは、身体の調子を崩すもとになりますので、いい塩梅に召し上がってください。

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 こんなときどうする PART18 
 『高山病』登るにしたがって頭痛、目まい、吐き気を起こす  
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


 安静を保ち栄養と水分を補給する

 夏到来です。富士山登山を計画されている方もいらっしゃることと思いますが、登る前の準備をしていますか?
 元気良く登山を続けてきた人が、登るにしたがって、頭痛、めまい、吐き気などをおこしたら、高山病にかかったものと考えて間違いありません。
 高山病は、酸素不足が原因で起こるもので、一種の窒息状態です。そのため前述した症状以外に、息切れや唇や爪が紫色になるチアノーゼや思考力の減退なども起こります。
 高山病というと,ヒマラヤなどの高い山で起こるものと思われがちですが、実際は三千メートル以上の高度の山ならどこでも起きます。身体の調子によっては、それ以下の高度でも高山病の症状が出ることもあります。日本で三千メートル以上の山といえば、三七七六メートルの富士山をはじめ、立山、乗鞍、穂高などいくつかの登山者のメッカが上げられます。
 もし、登山中に高山病の症状がでたら、直ちに無理な登山を中止して、山小屋などで休息することです。このとき十分な栄養と水分を補給して、酸素の消費量を最小限にするための安静が必要です。
 これで回復しないときは、保湿しながら速やかに下山したほうがよいです。ひどくなると呼吸困難におちいり、意識を失うこともあります。なお、高山病にならないように、高い山に登山する前には、必ず低い山でのトレーニングを積んでおいて欲しいものです。寝不足、疲労にも気をつけましょう。



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 体の異常値・正常値(数値十二) 
『呼吸』 一回の呼吸で空気は300〜500CC肺に入る
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


 喘息、肺気腫になると呼吸数は多くなる

 ダンサーが身体に金粉を塗って踊るショーがあります。あまり長い間、金粉を塗ったままにしておくと皮膚呼吸ができなくなって死ぬことがあるので注意しているということです。つまり、人間は肺ばかりでなく皮膚でも息を吸ったり、吐いたりしているのです。
 脈拍は通常意識的に早くしたり遅くしたり出来ません。しかし、呼吸は自分の意思である程度調節ができます。また、走ったり、激しい運動をした後など、半分無意識のうちに呼吸の回数が増えるものです。
 このように、呼吸は、意識的に早くしたり遅くしたりできる上、眠っている時も無意識のうちにもちゃんと行っています。だから、呼吸数は一分間に何回といっても、あまり正確に測ったところで意味がありません。それだけ個人差が多いからです。一般的には、一分間に20回前後というところです。
 呼吸数の正確な正常値と自分のそれとを比較するより、健康なときの自分の呼吸数を調べておいて、急に増えることがあったときなど、医者に診てもらうようにしたほうが良いでしょう。
 呼吸数が増えるのは、一回に吸い込む空気の量が足りないか、減った場合です。激しい運動をすれば、体が余計に酸素を要求しますから、呼吸数を増やさなければ足りなくなります。また、喘息や肺気腫になると、一回に吸う空気の量が減るため、普段どおりの呼吸では苦しくなります。普段は一回の呼吸で360〜500cc入りますが、この量を下回っているわけです。
 一回の呼吸で300〜500cc(平均450cc)肺に入ってきた空気は、その中から酸素を取り出され、血液を通じて、各器官に配られていきます。各器官の酸素消費量から割り出すと、私たちは一分間に250ccの血液が必要になります。
一方、炭酸ガスのほうは、一分間に230cc排出されています。一日で300リットルになる計算です。
 酸素の吸入も、炭酸ガスの排出も殆どが肺で行われます。皮膚呼吸では酸素吸収量がわずか1・9%、炭酸ガス排出量が2・7%とまかなわれているに過ぎません。金粉を塗ったところで大勢に問題はないのです。
 金粉を塗って困るのは、むしろ体温調節の問題です。私たちの身体は汗をかいていると感じなくても、一日700ccほどの汗が出ています。また、体温調節のため、塩分を含まない水分が、皮膚や息などから一日400〜500cc蒸発しています。そういった状態にも関わらず、金粉を塗って皮膚の部分の汗や蒸発が止められた上、激しく踊るのです。ただでさえ呼吸が激しくなるのに加え、体温調節を息だけでしなくてはならないことになります。ちょうど、夏になると犬がベロを出しているような状態です。したがって金粉を塗っている時間は限られてくるのです。
 健康で「長生」(ながいき)を希望する人は、「長息」(ながいき)をすることです。一日3回大きく深呼吸するだけで大分違いますよ。

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