オアシスだより 第18号 2002年10月

 『オアシスだより第18号発行にあたり』
清野鍼灸整骨院 院長 清野充典 

 平成十四年十月一日より健康保険制度が改正されました。医療機関受診時の患者負担増だけでなく、保険料も値上げの一途です。老人保険制度も五年後には廃止の予定です。四十歳以降の国からの医療・保健サービスは全く受けられなくなります。これからは自分自身を守らなくてはいけません。
 時代を先取りする当会のサークル活動を是非ご利用下さい。これからを生きていくためのヒントが得られると思います。十一月には『オアシスの集い』を行います。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

平成14年10月16日現在の会員数 140名 

■ 目 次 ■
 『はり』ってなあに?第18回
『鍼はどのようにしてつくられるの?』
 『お灸のはなし』第18話
『日本の線香工場』
 体のしくみ その18
『呼吸について』
 体の異常値・正常値(数値十一)
『血液』
 『健やかに育つ小児はり』子供(5)
『子供の便秘』
 こんなときどうするPart17
『突き指』
 ウンコ診断学 知識(13) 『ウンコのにおい』
 医食同源 九の幕  『鰹節』



 『はり』ってなあに?第18回
『鍼はどのようにして作られるの?』
清野鍼灸整骨院 副院長 今田開久


 私達は平成D年春に、当院で使用している鍼の製造工場を見学する機会に恵まれました。その工場見学から、鍼の製造工程についてご紹介致します。

一 匡正工程

 まず始めにステンレスのワイヤーを真っ直ぐに伸ばし、それをそれぞれの鍼の長さに切断する作業です。ステンレスワイヤーはJIS G-4308に規程されるステンレス鋼線を業者から仕入れており、素材は注射針や採血針などの医療用具に多く使われている、安全が確立しているものです。

二 研削工程・洗浄工程

 鍼尖を削り、研磨する過程です。鍼尖のチェックを顕微鏡で済ませた後、超音波洗浄器で数回にわたり洗浄されます。

三 組立工程・包装工程

 鍼体(鍼本体)と鍼柄(治療の時手で持つ部分)の接着、鍼の包装、鍼の梱包といった過程がすべて自動組立機で行われています。室内は菌が繁殖・進入しないように管理され、手指消毒、防菌服の装着、エアーシャワーの噴霧が義務づけられます。

四 滅菌工程・出荷検査

 滅菌はエチレンオキサイドガスと言う殺菌能力の高いガスによって行われます。滅菌の状態を確認するために、エチレンオキサイドガスで死滅しにくい菌を付着させたチップを、滅菌装置内で最も滅菌されにくい場所に置き、滅菌されたかどうかを調べています。

五 出荷・経年変化検査

 鍼は厳しい検査を通り出荷されますが、更に同時期に作られたサンプルを4年間保存し経年変化も検査されます。

 以上が全体的な「鍼」の製造過程です。ここに書かれている以外にも、それぞれの過程では製造条件確認・抜取検査が随時行なわれ、終始一貫した品質管理が徹底されています。

 このように私達が治療に使う鍼は、清潔な状態で治療に用いられます。またディスポーザブル(使い捨て)になっています。
 使った鍼はどのように処分されているの?と、ご心配の方もいらっしゃるかと思います。ご安心下さい。専門業者に医療廃棄物として引き取ってもらい処理しております。当院では安心して鍼灸治療が受けられるよう心がけております。


メニューへ



 『お灸のはなし』第18話
『日本の線香工場』
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


 
お灸に火をつける際に使用するお線香は、一般家庭で使用する線香と同じように産生されています。生産上違うところといえば、

 @ 燃えにくい材質である。
 A 家庭用の線香より太い。
 B 香料が入っていない。

 というところでしょうか。鍼灸師の希望に応じ、灰が殆ど落ちない材質を開発し製品化しようとした職人さんがいましたが、完成品は温度が高すぎてちょっと触れだけでも大焼けどしそうなので実用化に踏み切らなかったというものもあります。(実際に触ってみましたが、ほんとに声も出ないぐらい熱かったです。ああ、これじゃあほんとに危ないわ!というのが実感)線香にもいろいろな種類のものがいろいろ苦労されて作られているんです。
 さて、お線香は日本のどこで作られているかご存知ですか?75%が兵庫県の淡路島で残りの25%が大阪の堺市です。日本中どこにでもあるお線香が淡路島に集中しているのにびっくりしませんか?その理由を少しご紹介しましょう。昔、わが国には臭いのする木、「香木」がありませんでした。日本書紀によると香木が東南アジアから流れ着いたのが日本にもたらされた最初のようです。その地が淡路島の津名町近辺だそうです。当時、淡路島は漁業以外に産業があまりなく生活は大変です。島の周りは潮の流れが厳しく他との交流も大変だったようです。そんな時に、線香作りという産業ができ、町をあげて線香作りに取り組むようになったようです。当時(江戸時代)はお坊さんの多い堺が、線香の主要な取引先で、堺でもお線香を作ってました。しかし、大阪商人は作るより注文した方がよいという方向に少しずつ傾き注文先を淡路島の工場へと求めていきました。その事により、需要と供給が合致し、この地域の線香作りが隆盛を極めていったようです。淡路島の中でもこの津名町に特に線香工場が集中しており、工場の数が約二十五件(二〇〇一年三月現在)、町民の三分の一がその仕事に従事してます。まさに線香の町といっても過言でないと思います。その中でわれわれが使用するお灸専門の線香を作っている工場は三件です。
 それでは皆さん、線香ってどんな風に作っているかご存知ですか?簡単にいうと原料をお湯で混ぜ合わせ、トコロテンのようにニューと出して干して出来上がりです。イメージつかめました?
そんな説明では納得できない方のためにこのあと細かく説明いたします。興味のある人だけこのあとお付き合いください。
製造過程は

 @原料であるタブの粉と粘り気を出す糊粉、かさを増すための粉、染料(通常はこれに香料)等を良く練り合わせる。
 A機械に原材料を入れ、巣金と呼ばれる穴からところてん状に押し出し、盆板と呼ばれる板に受ける。
 B盆板からはみ出している線香の端を切りそろえる。同時に不揃いの部分を切りそろえる。
 C盆板を縦に重ねて乾燥させる。自然乾燥を1日、強制乾燥を2日置く。(昔は何日も自然乾燥させていたそうです。手間のかかる作業です。)
 D熟成させて包装し、出荷する。

 以上が大まかな製造過程ですが、各工場の線香の違いは@の原料の作り方のあるようです。どこの店でも味が違うようにわずかな分量、温度の違いででき不出来があるようです。特別に原料を作るところを見せていただきましたが、まさに職人芸です。しかし、職場の環境はお世辞にもいいとはいえません。そのため、どこの工場も跡継ぎに困っているようです。殆ど手作業に近いお線香作り。お灸をすえるときもお線香を手にすると思わず手を合わせたくなる気持ちになります。
 お線香1本にたくさんの人々の気持ちがこもっています。


メニューへ



 体のしくみ その18
『呼吸について』
清野鍼灸整骨院 東府中センター 院長 小高 靖


  暦では「寒露(かんろ=晩夏から初秋にかけて野草に宿る冷たい露)」を迎える前日(十月七日)東京では急に30度近くの暑さが戻りました。暑さ寒さが入れ替わるこの時季、呼吸器系を患い喉の痛みや咳などで来院される方が増えております。そこで今回は呼吸についてお話ししたいと思います。


【呼吸とは】
 私たちの身体はたえず複雑な化学反応(新陳代謝)を起こし、そのさいに発生する熱をエネルギー源として生命を維持しています。この化学反応が円滑に行われるためには酸素が必要で、空気を吸い込む事によって体内に取り入れています。    
 一方、化学反応の結果、体内には炭酸ガス(二酸化炭素)が発生します。これがたまり過ぎると円滑な反応が起こらなくなり生命に危険が及ぶため、息をはいて体外に放出します。この過程を呼吸といいます。

【口呼吸と鼻呼吸】

 外呼吸には腹式と胸式の二種類があり、また、口呼吸と鼻呼吸の2通りがあります。哺乳類(ほにゅうるい)では人類以外、口で呼吸することは構造上不可能です。犬もハアハアと口で息をしているではないかと言われますが、犬には汗腺が発達していないため暑い場合、舌をラジエーターにして口から呼気と共に熱を放散させているのです。犬も猫も猿も、鼻をふさげば大暴れします。これは鼻腔と気管が喉頭(こうとう=のど仏のあたり)で連続しているためです。 人類のみが口で呼吸できるのは、言語を習得したために起こった機能の変化によるものです。

【口呼吸の弊害】
 鼻には吸い込んだ空気のゴミを取り除き、ほどよく加湿加温し、冷たく乾燥した空気から呼吸器を守るという働きがあります。〔オアシスだより15号参照〕東京大学医学部口腔外科・西原克成 先生の研究によると、日本人は欧米人に比べ無意識に口で呼吸している人が多いそうですが、先生は著書「健康は呼吸で決まる」の中で口呼吸による弊害を訴えておられます。

 1.口から入るばい菌からの防御力の低下・・・そもそも口は、食べ物の通り道。しかし本来の目的でない空気のウィルスを退治させられ、処理しきれなくなると喉が赤く腫れ上がってしまう。

 2.白血球の製造力の低下・・・口呼吸をすることで扁桃腺が乾燥した状態になってしまう。これは風邪を引いた状態と同じで、結果、常に白血球の中にウィルスが入り込み、白血球の抗菌パワーをダウンさせてしまう。

【東洋医学では】
 秋になると長夏で今まで上昇していた地気(地面の照り返しなど)や水蒸気は収斂・凝結され蒸発・上昇しなくなります。天気(太陽)もしだいに遠ざかり2つの気の交流が減るため、空は澄みわたってきます。
 このように空気が適度に乾燥し希薄になると、肺の活動は自然と高まります。ですから慢性的な呼吸器系の病気をお持ちの方にとっては、これから冬に向けてしっかり体力をつければ比較的治癒しやすい時季と言えるのです。しかし不摂生(冷えや睡眠不足など)が続き体力が低下すると逆に肺の活動が追いつかず、かえって負担となり、身体の弱い所に症状(喉の痛みや咳)が現われます。つまり呼吸器を鍛えるも悪化させ症状を長引かせるも心がけ一つなのです。
 鍼灸は身体の疲れを取り除き、弱った免疫機能を高める治療法です。
 鼻呼吸と鍼灸で抵抗力のある身体作りを目指しましょう。


メニューへ




 体の異常値・正常値(数値十一)
『血液』
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


  人間が生きていくためにはPH七・三五〜七・四五の範囲
  
腎臓病末期になると酸血症になる

 最近、「血液が酸性化しているので身体の調子が良くない」とか、「酸性食品の肉ばかり食べているので、アルカリの野菜を食べないと、血が酸毒化してしまう。」という声をよく聞きます。
 しかし実際には、一般の人が言うように、そんなに簡単に変わることはありません。人間の身体の中で行われている化学反応というのは、強い制限下で行われるからです。人間の身体には酸の方に行こうとすると、元に戻し、アルカリの方へ行こうとすればやはり元に戻すという装置が働いているのです。リトマス紙で検査するとすべてアルカリ性という結果になります。
 人間が正常の状態で生きていくための血液のPH(血液の水素イオン濃度を表す)の範囲はPH七・三五〜七・四五の間という極めて狭い範囲で、弱アルカリ性です。血液はこの範囲からそうたやすく酸性化したり、アルカリ性になったりしないように、数種類のシステムで厳重にコントロールされているのです。
 また通常使われている酸性とかアルカリ性とかいう言葉と、血液に関して使っている場合は違っているので混同しないようにして欲しいと思います。
例えば、通常血液は弱アルカリ性でPH七・三五〜七・四五ですが、これが中性(7・0)と呼ばれる状態になると、たちまちのうちに死んでしまいます。ましてや、血液が酸性(PH七・0以下)になるわけがありません。
 食べる食品が酸性食品かアルカリ性食品で生じる違いは、尿のPHの酸・アルカリの度合いが変わるぐらいのものです。
 血液は弱アルカリ性から中性の状態ですが、PH七・三ぐらいになると酸血症と呼ばれます。肝臓病や腎臓病末期になると血液は酸血症化します。
 腎臓病などに対して、最近では人工透析といって血液を体外に取り出して人工的にきれいにしたりしますが、これはとても恐ろしいやり方です。
 血液が酸性に傾くということは日常生活の不摂生が大きな原因です。寝不足、運動不足、肉食過多、水分摂取過多(一日一リットル以上)、ストレス過多・・・。
 生活を変えられない方は鍼灸治療を受けて体力低下を防止するように努めて下さい。


メニューへ




 『健やかに育つ小児はり』子供(5)
『子供の便秘』
清野鍼灸整骨院 主任 小野寺 啓


 今回は,子育てをしていくにあたり必ずといっていいほど遭遇する「便秘」についてお話しします。
 便秘は独立した病気ではなくて、一つの症状で、あまり心配の要らないものと、そうでないものがあります。心配が要るものとしては、「ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸)」がありますが、こんな病気は非常に稀なものです。頑固な便秘・異常なお腹の膨らみ・体重が増えないという症状がある時は、こうした病気を考えないといけませんが、とにかく非常に珍しい病気です。
 だから今回はそんな珍しいものはとりあげず,一般的に遭遇するものにスポットライトを当てたいと思います。
 便秘と言うのは基本的には大人と同じように、糞便が長い間腸内に止まっている状態です。ただ、子供の場合は一時的に排便がないとか、あるいは2〜3日毎に十分な排便があるというのは便秘とは言いません。(でも毎日出た方がいいんですよ。)その一時的な原因として、母乳栄養で乳汁がよく消化されて糞便が腸を刺激しない為に排便がもよおされないとか、嘔吐の多いときには排便が無かったりするからです。また、人工栄養児でも、腸をうまく刺激しない為に排便が困難なことがあります。
 長い間、糞便が腸内に停滞する便秘の原因は決して一つとは限りません。
 西洋医学的には、「人工栄養児で蛋白質が多くて炭水化物がすくない時」「腸内で酸化作用が起こったとき」「精神的緊張が強い時」「運動不足のとき」「腸の形態的発育異常がある時」などが挙げられます。
 東洋医学的に簡単にお話すると便秘の原因は「腸の発育不良」です。
子供の体が冷えていて腸の発達が悪くなるのですが、その冷えの原因は「冷たい物(冷たい母乳)の取り過ぎ」「甘い物の取り過ぎ」「生活時間の不摂生」などです。基本的に子供は産まれてくるときは冷えてはいません。産まれてから冷えるのです。「うちの子はよく便秘する」というお家の方は、まず普段の生活を見なおしてみてください。
 生活を見なおしても便秘が改善されない場合は、「冷え」の状態がお子さんの体の中に深く入り込んでいるので「冷え」を取り除く必要があります。
 ここで薬を使って何とかしようと思うことは賢明ではありません。小児科の先生も薬を使って出すことは腸の動きが鈍くなるので避けた方がいいと考えています。
 治療法は「体を温める」治療をすれば良いのです。
 我が家にも1歳の男の子がいますが、便秘をした時には「体を温める」治療をします。察しの良い方はもうお気づきですね。「小児はり」で体を温める方向に導くのです。小児はりをすると驚くほど出るようになりますよ。
 治療回数は一回で良くなる子供もいれば、数回必要な子供もいます。その子の「冷え」の状態で治療回数は変わりますから「論より証拠」。
まずは、一度小児はりを受けてみてはいかがですか?

メニューへ




 こんなときどうするPart17
『突き指』
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


 指を引っ張ったり振り回してはいけない
 痛めた指を冷やし絆創肓


 野球やバレーボールなどの球技で、ボールを受け取る時に うっかりすると突き指をする事があります。
 たかが突き指ぐらいと痛めた指を引っ張ったり振り回したりする人がいますが、これは間違った応急処置です。もし指の骨にひびが入っていたり、骨折をしているとしたら、ますます症状を悪化させてしまいます。
 指は、日常生活になくてはならない働きをするもの。是非、正しい応急処置を覚えていただきたいと思います。
 まず、指先をトントンたたいてみて下さい。痛い場所にひびくようだとまず骨折の可能性が高いと思ってください。その際、指を引っ張ったりせずにそのまま冷やしすぐに近くの医療機関に行って下さい。
 ひびかないようですと捻挫か打撲ですので1〜2時間冷やして様子を見てください。痛みが引かない時は関節がずれている事が考えられますので近くの接骨院・整骨院へ行って整復してもらってください。
なお、スポーツの最中、競技を継続して症状をこじらせる人が多いようです。突き指をしたら直ちにプレーを中断するのが賢明でしょう。

メニューへ




 ウンコ診断学 知識(13)
『ウンコのにおい』
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


〜 うんこのにおいにはいろいろな健康情報が隠されている 〜

@ すっぱいにおいがする時
 鼻をツンとつくようなすっぱい匂いがする時は、発酵性消化不良の疑いがあります。このにおいを発散させるウンコは、たいてい黄色の下痢便で、子供や赤ちゃんに多く見られます。
 このような下痢の原因は、食べ物による事が多く、梅雨時や季節の変わり目に、食べなれないものや、いたんだものを食べると、腸内で異常発酵を起こし、発酵性消化不良になります。黄色や、褐色のウンコですと、健康便に近く、つい見逃してしますことがありますから、このすっぱいにおいには十分注意してください。

A 生ぐさいにおいがする時
 これは、必ず黒いウンコ、特にタール便にともなって出るにおいです。生ぐさい原因は、血液です。黒いウンコが出るのは、胃や腸での出血によることは、以前述べた通りですが、少量の出血では、生ぐさくなったりはしません。胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腸ガンなどの、かなり進行した状態にならないと、生ぐさいウンコは出ないものです。このにおいを発するウンコは、色、形、におい、ともに最悪の状態と考えていいでしょう。こんなウンコが出た時には、あれこれ考えるよりも、医療機関へ急ぐべきです。

B 腐ったようなにおいがする時
 魚や肉の腐ったような、いやなにおいがする場合は、腐敗性下痢と考えられます。このようなにおいを発するのは、暗褐色か、黒にも近いウンコで、水状、あるいは泥状の下痢便です。いたんだ三日前のさしみや、腐った肉などを食べると、胃腸のなかで蛋白質の消化不良と腐敗菌の繁殖が起こり、下利となるのです。すっぱいにおいの発酵性下利に比べると、重症です。やたらと薬で抑えようとせず、医療機関へ直行すべきです。
 腐ったようなにおいは、ガンや潰瘍などで、血液や粘液がウンコに混ざった時にもできます。前の生ぐさいにおいよりも、血液や粘液の分解がすすんでいるわけで、胃腸の上部に病気がある場合が考えられます。赤痢や食中毒でも同じ事が起こります。

C ウンコのにおいがしない時

 時々、無臭のウンコが出ることがあります。ウンコの色は、別に変わらないのに、においが全く無いのです。ウンコのにおいは、あまり強くないほうがいいとはいっても、全く臭いがしないのも異常です。この臭いのしないウンコが出るのは、二つの理由があります。
 一つは、肺炎やコレラの治療でクロマイなどの抗生物質を、長い期間にわたって服用したためです。抗生物質の効力が強すぎて、腸内の細菌類をすべて駆逐してしまうため、臭いのもとになるスカトール、インドールをつくる細菌類がいなくなってしまい、においがつかなくなるのです。
 もう一つは、前に述べた白いウンコの場合です。肝臓(Liver)や胆嚢に支障があると、蛋白質の消化が完全に行われないために、細菌も活躍する余地がなくて、においがつかないのです。また、同じ白いウンコでも白痢の時は、ひどい下利ですから、ウンコがどんどん腸の中を通過してしまい、蛋白質を分解して、においをつける暇がないのが原因です。

 さて、今まで、ウンコとはどんなものか、どうして出来るのか、健康状態とどんな関係があるのか、一通りお話してきました。
 次回からは毎日出るさまざまな色、形、においのウンコが、それぞれどんな健康状態のときに出るのか、そしてそれはどんな病気の徴候なのか、についてお話しましょう。

メニューへ




 医食同源 九の幕 
 『鰹節』 
清野鍼灸整骨院 院長 清野 充典


日本人の健康と味覚を形づくった


 延宝二(一六七四年)、土佐国宇佐浦で漁師の甚太郎が新しい方法で鰹節の生産をはじめました。従来の鰹節は爆乾法で作られていました。薪を燃やして、煮詰めたかつおを火力でさらに乾燥させる方法です。これに対して、甚太朗が編み出した燻乾法は、いぶしてその煙の熱で時間をかけて乾燥させて固める方法です。
 甚太郎の発明は、二つの幸運を日本人にもたらしました。一つは、新しい鰹節の登場により、日本料理が格段においしくなったことです。爆乾法の鰹節は、短時間で固めるために表面が焼きすぎた魚のように硬いものでした。
 削ると崩れて粉状になるし、中は水分の含有量が多く、貯蔵すると腐敗しました。また、だしに生ぐさみが出ることもありました。
おそらく燻乾法の鰹節で、日本料理の味が全く違うものになったのではないでしょうか。
 もう一つの幸運とは、鰹節を余すところなく利用できるようになった結果、その有効成分が十分に使えるようになったことです。古い鰹節は、実質的に利用できるところは三分の二、あるいは半分くらいで、かなりの部分を削り取らなければならなかったのです。
 最近、鰹節の蛋白質から出来てくるペプチドに、血圧を下げる働きがあることが実験的にも臨床的にも確かめられました。このペプチドには、血液中のコレステロールを低下させる作用もあるといいます。また鰹節はタウリンの宝庫で、これに血圧を下げたり、コレステロールを低下させたり、肝機能を高めるなどに作用があります。
 甚太郎は、これらの有効成分をすべて使えるようにしたのです。鰹節は日本人の味覚を作ると同時に、健康もつくったのです。

メニューへ