『オアシスだより第11号発行にあたり』  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

  健康研究サークル『オアシス』も4年目を迎え、少しずつ会員の皆様にも当会の設立の趣旨がご理解いただけるようになってきたように思われます。

 地球上の人口は年々増え続けております。 2050年には90億人を超えると見られております。地球が自給自足できる人口は80億人と考えられていますから50年後は大変な世の中になると予想されております。
  また問題になっている高齢化ですが、日本では2025年に4人に1人が老人と推測されています。2050年には8〜9%が80才以上となると見られています。
  この高齢化と、食糧不足を目の前にして必要なものは 「思いやり」と「健康」ではないでしょうか。 WHOでは、これからの医療は西洋医学ではなく伝統医療(針・灸・湯液・マッサージなど)であるとはっきり明言し、今後の社会福祉のあり方を検討しております。9月には神戸にてその国際シンポジウムが行われます。 世界中が伝統医療を認めなおし健康への『まちづくり』『国づくり』をしようとしています。 小さな会ですが世界の先駆けとしてのモデル的なこの集まりを皆さん是非ご活用ください。

 7月1日より会員の皆様のご希望により「家族会員」を設けることに致しました。
家族会員は 入会金免除 2人目の会員の月会費は五〇円 3人目以降の会員の月会費は三〇円と致します。 ただし家族会員は「未成年者」と致します。また、会報等の送付、通知は致しませんのでご了承ください。  また夏の感謝セールと致しまして物品販売を特別に オアシス会員2割引 と致します。
  どうぞふるってご利用下さいませ。
平成12年6月30日現在の会員数 100 名

■ 目 次 ■
‥‥……第11回 鍼の感覚……‥‥
 ‥‥……第十一話 もぐさ工場見学……‥‥
 ‥‥……その11 舌について……‥‥

 ‥‥……Part10 アキレス腱の切断……‥‥

 ‥‥……数値4 血 液……‥‥

 ‥‥……弐の幕 『そば』脳卒中や高血圧防止に効果 あり ……‥‥

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 第11回  『鍼の感覚』 文責 今田開久

 普通、身体に針を刺したりすると、チクッとした痛みを感じますが、鍼治療では痛みとは違う不思議な感覚が起こる事があります。
  この鍼による感覚を鍼響(ひびき)または得気(とっき)といいます。得気という言葉は、中国の鍼麻酔が世界に紹介されたときに広まった言葉ですが、日本では古くから鍼の「ひびき」といわれてきました。 肩こりや腰痛などがあるとき、痛みのある部分を指で押さえると、いた気持ち良い感覚(快痛)が起こることがありますが、鍼刺激では快痛だけでなく、しびれるような感じ(しびれ感)、重く押さえられるような感じ(重圧感)、だるい感じ、はれぼったい感じ(腫脹感)、熱くなる感じ(熱感)などが起こります。

  また、これらのひびき感覚は、鍼を刺した部分だけでなく周囲に放散し、場合によっては、遠く離れたところまで重いようなしびれるような、場所のはっきりしない感覚が起こることがあります。 中国ではこの鍼のひびき感覚をとても重視します。ひびき感覚がないと鍼の効果が少ないともいわれています。そのため中国式の鍼治療では、ひびき感が起こるように鍼をさすことが多いようです。しかし、ひびき感が無いと効果が無い訳ではありません。日本では、ひびき感覚だけでなく術者が感じる感覚が重要とされています。これは刺した鍼の抵抗感の変化などで、鍼妙(しんみょう)と呼ばれています。この鍼のひびき感の差が、中国式の鍼と日本式の鍼の違いでもあります。 鍼治療における刺激の強さは、使用する鍼の太さ、刺す深さ、刺入する速度や刺した鍼の操作などにより変化します。これを患者の体質、症状のある場所や、病気の種類などに応じて加減しているのです。例えば、精神的疲労から起こる症状では弱い刺激、肉体的な疲労では少し強めの刺激といった具合です。 多くの症状や体質に対応するために、いろいろな種類の鍼と治療法が生まれました。

こんなところにも鍼治療の奥深さと、人間の身体の不思議を感じますね。
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 第11話 『もぐさ工場見学』   文責 眞野 仁

 じとじとした天気ですね。オアシス会員の皆様、いかがお過ごしですか。

 こんなじめじめした天気だと体に湿気が入ってくるようで、全身が水を吸ったスポンジのようにぐったり重い感じになりますね。こんなときは鍼でぐったりしてうごかなくなった身体の動きをよくして、またお灸で燃える活気をつけて元気をつけましょう!!

 さてコマーシャルはこのくらいにして、今回のお灸の話はもぐさ工場見学レポートといきたいと思います。
  二月の院内研修旅行で、新潟県の西頸城郡にあるもぐさ工場「佐藤竹右衛門商店」に見学に行ってきました。細かい工程などについてはオアシスだより第4号に書いたことがありますのでそれを見ていただくとして、もぐさを作っている現場で驚いたり考えたりしたことなどを書いてみたいと思います。

  有限会社「佐藤竹右衛門商店」は、明治三十一年からといいますから、創業一〇二年と言うことになります。今の社長さん、佐藤喜昭氏で三代目になるとのことでした。以前は上越地方だけでも、三十あまりの工場があり、その中には何百年も代々製造していた所もあったそうです。ところが今は、昔のように家庭でお灸をすえることが少なくなってきて、そんなこんなでもぐさの需要がかなり減ってきているため、上越地方で現在も製造している工場は二〜三しかないそうです。残念なことです。とはいえ、今もその火をともし続ける佐藤社長の工場では日本最高級のもぐさが製造されています。

 さて原材料のヨモギから取れるもぐさの量は、上級であればあるほど精錬され、膨大な量のヨモギからできるもぐさは少なくなります。最上級もぐさでその率はなんと二一〇分の一!一・のよもぎから取れるもぐさはわずか約五g弱!!以前も書きましたが、よもぎの葉の効能として「体を暖め、からだの冷えやだるさを除き、冷え痛みを止める」というものがあり、この熱性の性質を精製し高めたものとしてもぐさをとらえていたと考えることもできますが、それならこの最上級もぐさの体を暖める働きはどんなにすごいのだろうとワクワクします。佐藤社長は二一〇分の一といわず、もっと精錬してもみられたそうですが、ほとんどよもぎの毛茸(これがもぐさの正体)だけになっていて、精錬されきっているものを無理に作業しているようなものと分かったので、これ以上はされなくなったそうです。
  製造については、ある程度は機械化されてはいるものの、それぞれの工程の大事な部分では職人的な勘が重要になるので、オートメーション化は難しいとのことでした。また、もぐさ製造に使用される機械についても、科学技術が発達した現代においても、材料の代用や、部品の機械生産などは困難だということでした。まさしく手作りと行った言葉がピッタリな工場でした。こつこつ丹念にもぐさを作ってくださっている職員の方達の姿を前に、私眞野は、鍼「灸」の治療を行なう者として身の引き締まる思いでした。製造にたずさわっておられる方々は、一番若い方で30代、最も高齢の方は72歳だということでした。一概に若くて体力があればそれで良いというものでもなく、やはり単調な仕事でも辛抱強くこつこつと働ける人が望まれるそうです。機械のメンテナンスを行なう職人自体もその数が減ってきており、将来的に、もぐさ製造業そのものがどうなって行くのだろうと、ちょっと心配です。なんといっても、もぐさがなければお灸治療もありませんから。

 鍼灸治療というのは実に、治療する先生、患者さん、そして鍼灸道具製造業の方達による三者の共同作業であるな、という思いを強くした今回のもぐさ工場見学でした。
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その11 『舌について』  文責 小高 靖

【舌のしくみ】
  おとなの舌の大きさは、長さ7〜9cm、幅4〜5cm、厚さ約2cmです(日本人)。舌は大きく表面の粘膜(ねんまく)と筋肉に分けることができます。表面はザラザラしていて、ツブツブが一面に並んでいます。このツブツブは拡大するとちょうど乳首のように見えるので舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれます。舌乳頭を更に拡大すると側面は花の蕾(つぼみ)のような形をした味蕾(みらい)と呼ばれる感覚器官が取り囲んでいます。筋肉は七種類からなり脂肪組織を多く含むので柔らかくかつ自由に動くことができます。

【舌の役目】
(1)食べ物をすくい取り、(2)味を感じ、(3)唾液とかき混ぜ、(4)中へ押し込んでのどへ送り、(6)口の中の掃除をします。また、(6)さまざまに形を変えて発声の補助もします。

【味の感じ方】
 口に入った食べ物は噛み砕かれ唾液に溶けると、味蕾の先の小さな穴から中に入り、味を感じる細胞を刺激します。その刺激が神経を伝わり脳に送られると味を区別することができます。1864年にフィックという人は、味覚にはあまい(甘)、すっぱい(酸)、にがい(苦)、しおからい(塩)の四つの質が区別されているという四基本味説を唱えました。しかしそれよりもはるか昔、中国最古の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、この四つの他に、からみ(辛)を加えて『五味(ごみ)』としています。江戸時代から伝わっている数々の養生法の一つに『五味の調和』と呼ばれる言葉もありますが、これらの味の食物をバランスよくとると健康になるという教えです。

【東洋医学では・・・】
  皆さんは舌診(ぜつしん)という言葉をご存知でしょうか。東洋医学では望診(ぼうしん)といって患者さんの姿や様子を見るだけで、その時の状態を判断する診察法があります。舌診とは望診で重要視されている診察法の一つで、舌の色や形、動きなどの状態から体の健康を判断します。例えば、舌の色が強い赤みを帯びてきたら体に熱が、青色っぽければ体の血液循環が悪く冷えがあると考えます。舌が腫れぼったく周りに歯の痕がついていれば、水分の摂りすぎで内臓が弱っていると診ます。舌が硬直し、ろれつが回らない状態は、心臓に関係のある病気や脳卒中による神経障害が疑われます。舌が震えるのは貧血傾向の人に多いようです。健康な舌の色はきれいなピンク色。柔らかく、動きもよく、舌の表面についている苔(こけ)が白色で薄く、ほぼ全面についていて、適度に湿っていれば言うことなしです。普段からよく観察し、健康な舌を覚えましょう。もし変化が現れたら体に何らかの負担のある証拠です。(ジュース、飴、お菓子などを召し上がったときは着色料で舌色が変わる事もありますのでびっくりしないで下さいね。)はり・きゅう治療は内臓の働きを高め、体の負担を和らげることができます。そのような方がおられましたらお気軽にご相談ください。 
   
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Part10 アキレス腱の切断 清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

足を曲げないように注意して足首を固定する

 アキレス腱は、人間が歩いたり走ったりするときに大切な働きをします。これが完全に切れると大の大人が、一歩も歩けなくなりますから、まさに人間の急所の一つといえると思います。
 そもそもギリシャ神話の不死身の英雄アキレスが、洗礼で水をかけなかった踵の上の部分を敵の矢に射抜かれ切ったことから、こんな名前が付いたそうです。
 
陸上などのスポーツ選手が急にダッシュしたり、準備運動をしないで、テニス、マラソンなどをしたときなどに突然足首の後ろの部分の力が抜け、同時にブチッと音がして激しい痛みが走り、立ち上がれなくなります。
  こんなことが起きたらアキレス腱が切れたと思って間違いないでしょう。
  アキレス腱が完全に切れたときは、病院で切れた腱をつなぐ手術をする必要がありますが病院に行くまでの間、状態を悪化させないように応急処置が必要です。
 まず、すぐうつぶせに寝かせ、足が地面と水平になるように伸ばします。とにかく脚、特に足首を曲げないように注意しましょう。
  アキレス腱が、かろうじてつながっている場合もあるので、足を曲げてふくらはぎを緊張させるのは禁物です。
  次に足首を固定することです。
  この時は、板やダンボール箱などの副木を作って、太ももから足元まで当て、身近にあるもので縛りましょう。
  また、もし山奥のスキー場などでアキレス腱を切り、治療の都合で、負傷者を都会の病院に運ぶときは、現地の医師にギブスでしっかり固定してもらったうえで運ぶのが望ましいことです。
  なお、高いハイヒールで、常にふくらはぎを緊張させていると筋肉が伸びにくくなって、アキレス腱が切れやすくなります。
  アキレス腱が完全に切れたかどうかは、アキレス腱の部分に人差し指を直角に当て骨にあたるまで押してみるとわかります。グニャッとして骨まで触れるようなら完全に切れており、神経に直接触れることになるのでものすごく痛がります。この場合は手術が必要です。骨まで触れず抵抗があるようなら部分断裂でしょう。この場合は手術か保存療法(足を固定してくっつくのを待つ)のどちらかを選択できます。
 一般に外科手術をすると三週間、保存療法だと四週間かかります。手術をお望みでない方は当院へ起こしください。
また遠方で外傷をされたときはお気軽にお電話ください。ご相談に応じます。

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 数値4.血 液   清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

 人間の血液量はどのくらいあるのでしょうか。人間の血液の量はかなり昔から体重の一三分の一といわれてきました。
 交通事故や大ケガで、よく出血多量で死ぬということがあります。傷はたいした事がなくても出血の量によって死が決定されます。
 普通、献血のときに採られる血液量は二〇〇ccくらいで牛乳一本分程度。このぐらいだとほとんど体に変化はありません。ところが、アメリカでは、献血量が日本の二倍以上の五〇〇ccの場合があります。この量になると日本人の体力では意識が少し朦朧として、気分が悪くなったり、倒れたりします。外科の手術の場合など、出血が七〇〇〜八〇〇ccぐらいと予想される場合は、輸血の準備をしておきます。そして、一〇〇〇cc、つまり一リットル出血すれば直ちに輸血が開始されます。出血が一リットルを越えると自分と体で増血しても追いつかないし、放置しておくとショック状態(危険な状態)に陥ります。更に一・五リットルから二・五リットルも出血し、体の半分以上の血液が出てしまうと輸血しても後の祭です。
 血液の中でも大切な赤血球は、一二〇日周期で生まれたり死んだりしている。つまり毎日一二〇分の一が死んで一二〇分の一が出てくるというバランスになっています。
 古くなった赤血球は、脾臓で破壊されるのですが、そのカスは尿や便からも排出されています。おもしろいのは、血液の中の鉄分は、赤血球が死ぬと、次の赤血球を作るのに再利用されていることです。つまり赤血球が死んだあと鉄分がもし全部出てしまうと人間は膨大な量の鉄分を取らなければならなくなります。人体のメカニズムはじつに精巧にできています。

 また血液の色をほとんどの人が赤と思っているようですが、これは酸素がくっついているために赤になるのです。もし炭酸ガスと付けばどす黒い色になります。また酸が混じると真っ黒になります。
 したがってこの血の色によって病名を判断することができます。
 たとえば胃潰瘍で出血している場合は、強い胃酸と混じって黒い血になります。医者は患者に「コールタールみたいな便が出ますか」と聞きますが、もし黒い便が出るようならば胃潰瘍や癌の恐れがあります。  これが直腸癌のような病気の場合は赤い血便が出ます。したがって血便の色によって病気の箇所が判断できます。吐く場合も同じようなことが言えます。真っ赤な血を吐いたら食道から出た血。胃から出た場合には酸と混じって色が変わって、どす黒くなっています。 このように出血した血液の色も病気の重要な判断材料とされているのです。

  東洋医学では古くから汚れた血液を「血 おけつ」といって病気に関係する重要なものと考えられていました。
  鍼をして血を抜くということも、そのために行っており、いろいろな病気に驚くほどの効果を発揮します。また吸玉、吸角や当院独自の_血吸圧法などは血液をきれいにして身体の不快な症状がどんどん軽減します。
  鍼灸治療は新しい血液細胞を作り出すことがわかっています。つまり身体の中の血液の高齢化を防げるというわけです。

是非東洋医療をおうけすることをお勧めいたします。
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  弐の幕
そば脳卒中や高血圧防止に効果あり  清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

 江戸の町でも、最初のころは上方同様にうどんが良く食べられていました。 それが享保のころから、そばが隆盛となります。そばのもつすっきりとした味わいが、威勢のよさを好む江戸っ子の趣味にぴったりと合ったのでしょう。
  あまり知られてないようですが、そばは穀物のなかでは、最も優れた栄養価をもっています。カロリーや糖質は小麦のほうが多いのですが、たんぱく質、鉄分、ビタミンB1、B2、ニコチン酸となりますとそばのほうが多くなります。特にB1は玄米に匹敵します。日本人に不足がちなB1を補うにはもってこいの食品です。
  そばには一三パーセントのたんぱく質が含まれています。このたんぱく質はアミノ酸(たんぱく質の構成成分)のバランスが大変優れています。白米には必須アミノ酸(体内で作ることが出来ないたんぱく質)のリジン、スレオニンが含まれていませんが、そばにはこれらも豊富です。
  しかも、鉄分は白米の一〇倍、カルシウムは九倍も含んでいます。日本人は、全体として過剰な栄養をとっていながら、カルシウムや鉄分は不足しがちです。主食としてそばを積極的に利用することは、そうした矛盾の解消にもなるでしょう。
  特筆すべき点は、そばにはルチンが豊富なことです。一〇〇グラム中にルチンが二・1マイクログラム(一〇〇万分の1グラム)も含まれています。ルチンはビタミンPの一種でこれを含む主食となる食べ物はそばだけです。
  ルチンには、血管壁を強化して、破れないようにする働きがあって、脳卒中の予防に役立ちます。毛細血管を拡張させることにより、血圧を下げる働きもあります。長寿とは、血管の若さを保つことにほかならないと思います。昔からそばが長寿食品として喜ばれてきた理由も、そんなところにあるのだと思います。  また、そば屋さんで、そば湯(そばのゆで汁)が出てきたら、飲まなければ損です。
 ルチンは水に溶けやすいので、そば湯にも多く含まれているからです。特に高血圧の人にはそば湯はおすすめです。

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