クリーニング豆知識

第三十八回:ダウン30%OFF裏話A


「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

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第三十八回は、毎年恒例となったダウン30%OFFについて



当社では、数年程前から
3月:ダウン30%OFF
4月:ダウン20%OFF

のセールを行っています

毎年3月の20日頃から少しずつダウンが出始め、
3月最後の土・日でドッと出て、
4月に入ってからも毎日のようにダウンが沢山出る
・・・というのが毎年のパターンです


しかしこのセール期間中、
毎年対応に苦慮するのが
「毛皮付きのダウン」の扱い
洗濯表示を見ると、大抵の毛皮付きダウンには、
「毛皮を取り外してクリーニングしてください」とあります

ただ、購入した際に店員の方から、
そのような説明があるかと言うと・・・まずありません

当社は基本的に
「洗濯表示に忠実に洗う」というやり方なので、
表示通りに洗おうとすると、毛皮部分を取り外して洗うしかありません


では、毛皮部分は全く汚れていないのか
・・・というと、そんな事はないでしょう
しかし、洗濯表示に従うなら洗えない

そもそも、取り外した毛皮部分を洗いたい場合は、どうすれば良いのか?
この部分の情報の周知が、販売する側では疎かになりがちです
そしてその被害を受けるのは、いつも消費者です


当社では、毛皮・皮革など特殊品を専門に
クリーニングする業者と契約しており、
毛皮・皮革・ジュータンは基本的に外注扱いになります

これは何故かというと、

「毛皮・皮革を洗う機械がないから」
です

毛皮や皮革は通常のドライクリーニングや水洗いとは異なり、
特殊な機械で洗浄します

当社のような、チェーン展開していない
個人経営のクリーニング店の多くは、
スペースやコストの問題から、皮革や毛皮は外注に頼っています

しかし外注した際は、
価格と納期の基準が当社とは異なります

大きさにもよりますが、付属の毛皮部分であっても、
クリーニング料金が2000〜3000円程度になる事もあり、
納期も一ヶ月程度と、当社のダウンの料金および
納期と比較しても、かなり差があります


毛皮部分は、通常のドライクリーニングで
処理をしても問題が無いものもありますが、
風合いの変化が発生する場合もあります

そのため、当社では毛皮付きのダウンの場合、
洗濯表示に「毛皮を取り外して洗ってください」
と書いてある事を説明し

あまり汚れていないなら毛皮部分だけでも持ち帰るか、
汚れていると思われる場合は、多少風合いが変化する可能性がある、
という事を説明した上でドライクリーニングする事があります
(フード毛皮付きは+300円。前面全てに毛皮付きの場合は+1000円)


中には、毛皮の部分が取り外せないようになっていたり、
洗濯表示に全て×が付いていて、
「クリーニングは専門店にご相談ください」
と書いてあるだけのようなダウンもあります


毛皮付きのダウンジャケットを買うという事は、
それなりのリスクがあるという事を、覚えていた方が良いでしょう

毛皮部分はあまり汚れていないので洗わない、という場合、
櫛などでよくブラッシングして細かいホコリやゴミを除去した後

空気が比較的乾燥した日に、
毛皮部分を陰干ししてから収納すると良いでしょう