クリーニング豆知識

第二十一回:ノリが違うんです

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第二十一回目は、ワイシャツのノリは1種類じゃない、というお話


ワイシャツのノリと言えば、
通常はボトルに入った状態で市販されている、
液状のノリを想像されるかと思います

クリーニング店でも、特に規模の大きいチェーン店では、
保管しやすい液状のノリを使用している所がほとんどです

しかし、ノリはもう1種類あります


当社が使用しているノリは、
「コーンスターチ」と呼ばれる粉末状のもので
その名の通りとうもろこしを原料としています

お菓子のデコレーションとして使われる事があるため、
お菓子作りが趣味、という方はご存知なのではないでしょうか


このノリは、毎回水に溶かして、煮てから使う必要があり、
液状のノリと比較して非常に手間がかかります
また、煮たノリは日持ちもしないため、煮たその日のうちに使い切ります

ずっと前から、
当社ではワイシャツのノリと言えばコーンスターチを使用していますが、
なぜ保存がきき、保管しやすい液状のノリをなぜ使わないのかと言うと、
「そちらの方が着心地がいいから」と考えているからです



煮る前の、粉末状のコーンスターチ




水に溶かして煮た状態


液状のノリをつけたワイシャツは、
基本的にサラサラしたような手触りになりますが、
コーンスターチのノリをつけたワイシャツは、
素材にもよりますが
かなり硬くなります

そして、一旦この
「硬いノリ」に慣れてしまうと、
液状のノリのサラサラした感触では、
個人差はありますが、「物足りなくなってくる」というお客様が多いのです


また、これは液状のノリにも言える事ですが、
ノリはただ単に硬くなるだけのものではなく

ワイシャツ表面をノリで薄くコーティングする事で、
汚れの多くがノリの部分に付着し、
洗った際にノリと一緒に汚れが取れるため、
汚れ落ちが良くなります



ただし、コーンスターチは

「どのワイシャツも硬くなります」と言うわけではなく、相性があります


具体的には、綿のワイシャツに効きやすく、
ポリエステルのワイシャツには効きにくい傾向にあります


ただ、ノリを2種類使い分けるのは現実的ではないため、
当社はずっとコーンスターチ一筋です


煮たらすぐに使い切らなくてはならない
液状のノリと違って、保管場所や保管環境にも配慮が必要など、
確かにコーンスターチは管理に手間がかかります

しかし、出張に出ていたお客様から、
「出張先のクリーニング店にワイシャツを出したら、
ノリが柔らかくて我慢出来なかった。やっぱりお宅の方がいい」
・・・と言われたりすると、
コーンスターチを使い続けてきたのは間違いではなかった、と思います