第二百八回:「カスハラ対策の義務化」
「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」
常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、
衣類に関する様々な豆知識を公開しています
第二百八回は、いわゆる「カスタマーハラスメント」について
2025年6月に、国会で審議中だった
「事業主に、カスタマーハラスメントへの対策を義務化する」
と言う法案が成立しました
ただし、「成立」であって「施工」ではなく
来年度中の施工を目指す、とのことです
これにより、事業主は
「従業員へのカスタマーハラスメント対策」を
実施することが『義務』となりました
また、当社の所在する神奈川県は
「STOP!カスハラ!!かながわ宣言」とする
啓発運動を行っており、カスハラ対策を強化しています
で、このカスタマーハラスメント
どこからがハラスメント?と言うことを
『買う側』の方は、ほとんど考えたことがないと思います
・・・と言うことは、自分としては今まで通りの行動でも
『売る側』、つまり事業者側から
「それはカスハラですよ」と指摘される可能性があります
セクハラ・パワハラは一般的に
「受けた側がハラスメントと感じたら、それはハラスメントになる」
と言う基準があります
セクハラ・パワハラを『した側』が
「これはハラスメントじゃない」と主張しても
基本的には受けた側の捉え方によって
決まる・・・と考えて間違いありません
ただし、この「ハラスメントの基準」を
カスタマーハラスメントに対しても
同じように適用する・・・と言う考え方は
まだまだ一般的ではないな、といつも思います
これが何を意味するかと言うと
「長年の間、行ってきた商習慣」も
カスハラ対策として出来なくなるかもしれない、と言うことです
長い間、常連さんだから、と言うことで
特別扱いをされて来たとしても
カスハラ対策で今後はもう出来ませんよ、と
事業者側はハッキリと言うことが出来るようになります
一方、『売る側』も人間です
これからも来て欲しい常連さんには、
多少のワガママを言われても融通を利かせ
新規、もしくは正直もう来て欲しくない・・・と思う人には
同じ事を要求されたとしても
「それはカスハラですよ」と言うことも出来ます
また、今までは事業者と消費者の間で
何らかのトラブルが発生した場合
当事者同士で話し合って解決していたようなことも
カスタマーハラスメントへの対策が義務化されたことにより、
「カスハラ案件なので、県の労働局に報告します」
と言う対応で統一することも、出来るようになります
ただ、「これはカスハラですよ」と言った時点で
事業者と消費者の関係に、ヒビが入るのは避けられないため
事業者側が、カスハラ対策を盾に、行政に報告するぞ
と脅すようなことが当たり前になる・・・とはならないでしょう
今回の「従業員へのカスタマーハラスメントへの対策を義務化する」
と言う法律の成立や、神奈川県の取り組みなど
世の中は「カスハラはもう許されない」と言う流れになっています
ではどうすれば良いのかと言うと、
基本的には相手の立場に立って
「自分がやられて嫌なことはしない」と言うことを徹底すれば、
トラブルになることはほとんどないと思います
もし、事業者側から「それはカスハラですよ」と言われた場合でも
即刻行政に連絡する事業者もあれば、その言葉を盾にして
相手に要求を諦めさせようとする事業者もあります
その場合は、弁護士や消費者センターなど
『買う側』の方も相談する窓口はたくさんあります
モメにモメて、もうどうすれば良いのか分からない・・・と言う場合
自力で解決するのは諦めて
「その道のプロ」に頼ってしまうのも手です