クリーニング豆知識

第四回:品質表示の怪

「クリーニング業に携わる人間からすると当然の事であっても、
お客様からすれば当然でない事はたくさんある」


常々感じていたそのギャップを少しでも埋めるため、このコラムでは、
クリーニング業者から見た、衣類に関する様々な豆知識を公開しています

第四回目は、衣類の品質表示にまつわるお話


毎日、たくさんの衣類のクリーニングをお受けすると同時に、
多くの品質表示を見る機会がりますが・・・
中には、見た瞬間
「ん???」となってしまうものがあります
今回は、そのような
「変な表示」のお話です


◎洗うな

意味は本当にそのまま。洗濯表示を見ると、
ドライクリーニング・水洗いの両方に×がつけてあります

本皮や毛皮、洗うと型崩れする帽子、
などであればまだ分かるのですが

どう見ても、
普通のジャケットやコートにこの表示がついている事があります

どの生地から作られている、という事を表した組成表示を見ても、
綿やポリエステルといった、普通の生地を使っている衣類が多いです


表示通りに対応しようとすると・・・・
当然ですが、洗えません

「汚れても洗うな。限界まで着て、使い捨てにしてくれ」
・・・と言われているようなものです

日本製の衣類で、このような表示のものは、ほとんどありません
一度洗っただけで型崩れを起こすような衣類は、
日本では受け入れられないからです
これらは大体が、外国製です


日本人は、クリーニングに関してだけではありませんが、
『世界一神経質である』と言ってよく、
衣類のちょっとした型崩れや色落ちも気にします

一方、「洗って、着る事ができれば、それでいいじゃない」
・・・という国もたくさんあります

型崩れしても、色落ちしても、
着られるならいじゃない、という価値観です。

そのような国で作られた衣類は当然、
洗うと型崩れや色落ちするモノもあります
しかし、そういった衣類を日本に輸入して売るとなれば・・・

一度洗っただけで型崩れした、
色落ちした、というクレームの元になります
そこで、「この服は洗えません」という表示をつけたりします

衣類を購入する際、
品質表示を確認する方はどれくらいいるのでしょう

品質表示を見ない限り、この事には気づきません
デザインを見て、気に入ったなら、
そのまま買ってしまう方が大半でしょう


そして、クリーニング店に初めて持ってきたとき、
もしくはクリーニング店側も表示に気づかずに、
洗って型崩れ・色落ちが発生したとき、
ようやくこの事に気付くのです

全てがそうであるとは言いませんが、それを狙っているのでは?
・・・と考えてしまうような服を見る事があります


非常に稀なケースではありますが、念のためにも、
「購入する際には品質表示を見て、
疑問に思ったら店員さんに聞く」
という事を徹底し、
自分で自分の身を守るしか、確実な対策はありません