って黒鶏はしょんぼりしちゃった。やじうまたちのあいだにも『ペンギンってロマンのかけらもない鳥なんだなあ』っていうヒソヒソばなしがきこえてきた。おいらはその場からいそいそと立ち去って、気を取り直して公園内を散策したんだ。路面電車を乗り継いで街の史料館を見学したり、お寺をお参りしたりしたんだ。そうして夕方、ヒゲペンギンのおじさんが横になっている駅のベンチへもどったんだ。おじさんは昼間、寝台列車から降りたときよりもずいぶん元気になっていた。そしておいらたちは駅前の安宿に泊まったんだ。さすがのおじさんもその晩はお酒を一滴も飲まなかったんだよ。

 次の日、軽便鉄道に乗って山を越えて砂漠へむかった。軽便鉄道は、鉄道とはいうもののなんとカラスの車丁が客車を押して動かすあまりにも原始的なものだった。定員二名のトロッコみたいな客車に乗り込んだ。おいらたちが乗った客車を押してくれるのは若い一羽のカラスだった。おじさんが、

「カラス君!キミはこの仕事を始めてどのくらいになるんだい?」

ってきいた。

「あっしかい!あっしは車丁になってやっと今日で二週間ってところですよ。あっしの親方がおとつい病気で入院しちまって…人手が足らなくってさあ!」

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