入場料の高い美術館

 つかれだけが残ったところでフェルメールの”恋文”である。ヨハネス・フェルメールが残した絵は、カメラオブスクラという暗箱を通した目で見た情景を描いたものがある、といわれている。それゆえに、写術的ではあるけれどなんともいえない“心地よいやわらかさ”が絵の中にあると思う。この絵は画集で見たことあるのだが思っていたより大きな絵ではなかった。ひとりの女性がいすに座って片手に手紙らしき紙片を、もう一方に弦楽器をもっている。そしてもうひとり、召し使いの女性がすぐ後ろに立っている。手紙をもった女性は召し使いと振り向きざまに、何か言葉を交わしているようである。赤いボタンを押してみた。

「お嬢様、ライフェン様はおよしなさいませ」

「えっ、なぜ?」

「たいへん評判がよろしゅうないのでございますよ」

「そんなことないわ。彼はとっても優しいわ」

「そんなことはございません。今までにあの方に泣かされた人がどれだけいたことか」

「どうして彼のこと、そんなに悪くいうの?」

なにやら深刻な雰囲気で聞いてはいけないことを聞いているようだ。

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