入場料の高い美術館

黒いガラスなのではっきりしないが、ガラス戸の向こうは大部屋が広がっているようだ。半券を取るとガラス戸が開いて「どうぞ中へお入りください」と、また機械的な声が聞こえてきた。中にはいるとガラス戸が自動的に閉まった。大部屋がひとつだけあり、向こう側の壁にはもう”出口”の表示がある。まずは出口の方へいってみるとそこは本当に出口のようだ。つまり美術品が展示されているのはここだけ。しかもこの部屋には十二枚ほどの絵画がかかっているだけだった。やられた!!と私は思った。二万円も支払って絵が十二点じゃあ、どう考えても割に合わない。それにしてもこの美術館には人っ子ひとりいないのはふしぎだ。警備員はいないし、客は私ひとり。パンフレットを売る店もない、ただこの部屋があるだけのようだ。まさに無人の美術館だ。しかしそんなことはたいしたことじゃない。二万円もの大金をぼったくられてしまった!という思いが再びこみ上げてきた。ひとり旅をしていれば、たまにはこういうこともあるさ!と、自分で自分をなぐさめながら、無人でいったい警備はどうなっているのだろうか?などと考えて気持ちを切り替えようとした。

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