入場料の高い美術館

そのわきに自動券売機がある。なるほどこれで入場券を買わなければならないのか。大人ひとり二万円!!そんなバカな!ひとケタ違うんじゃないか!!だが、漢字で”二万円”とあるので間違えようがない。ふつうの美術館は大人ひとり千円から二千円。どんなに高くても五千円。それ以上なんてまず見たことがない。入場料がふつうの10倍じゃないか!これじゃあ、はっきりいってぼったくりだ。人っ子ひとりいないのもうなずける。だいたいこんな田舎の無名の美術館にいったいどんなものが展示されてるっていうんだ!だが、このままここを去るか、それとも二万円払って美術館にはいるか?おそらくもうここへ来る機会はないかもしれない。今回が最初で最後だ。さいわいお金はあるし、まがりなりにも”美術館”と銘を打ってあるんだから、いかがわしい店でもないし、単にぼったくりというのでもあるまい。そういうわけで美術館にはいることに決めた。自動券売機に二万円を投入すると入場券が出てきた。入場券を手にし、入口の前に行くとドアのわきにちょうど駅の自動改札のような入場券投入口がある。そこに入場券を差し込むと、キップが吸い込まれると同時にドアがさっと開いた。中にはいると機械的な声で「半券をお取りください」とどこからともなく聞こえてきた。目の前にはガラス戸があり、横の壁から先ほどの入場券の半券が半分つき出ていた。

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