入場料の高い美術館

もう、お願いだからやめてくれ!!と涙目になっていると、突然うさぎがおとなしくなった。さっきの男が、

「新記録です!新記録達成です!!偉大な記録です!5分27秒を上回りました!!大逆転です!優勝は最後の挑戦者!そう!あなたです!!優勝商品の美術館のパンフレットと賞金一万八千円です!さあ、受け取ってください!!」

といって、何かをわたしてくれたのだが、すぐに気絶してしまった。

 ふと気が付くと”夢(うさぎ)” の前でうずくまっていた。美術館にもどっていた。服にはうさぎの毛がいっぱいくっついていた。そして手には美術館のパンフレットを持っていた。パンフのあいだに一万八千円がはさんである。何か悪い夢をみた後のように、じっとりイヤな汗をかいていた。

 つぎは、ダリの”記憶の固執”である。これも抽象画である。画面手前の時計はふにゃふにゃだが、砂浜を散策するといい気持ちだ。さっきの汗も引いてきた。

 

  そして最後、エドヴァルト・ムンクの”叫び”だ。以前からこの絵を見ると、橋にいる人が両手を頬にあてて、なんて叫んでいるのか?聞いてみたいと思っていた。前に、橋にいる人が叫んでいるのではなくて、自然の叫びを聞いて恐れおののいていると本で読んだことがある。けれど、私にはその人自身が叫んでいるように思えてならない。赤いボタンの下を見ると、「心臓が悪い方はごえんりょください」とある。今までの絵にはなかったことである。シャガールのうさぎロデオのときでもなんにも注意はなかった。これは覚悟しなければ、と思いボタンを押した。橋の上で両手を頬にあてている人が話しかけてきた。

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