入場料の高い美術館
「ああ、やっときたか。10年も待ったよ!おいらの代わりにここに立っていてくれ!それじゃあ…やっと帰れるよ」
と言い残して、どこかへ行ってしまった。叫んでいる人がいなくなってしまった。なんて叫んでいるのか?聞こうと思ったのに、肝心のその人がいなくなってはこんなぐにゃぐにゃで不気味なところには1秒でも長くはいたくない。ちょうど青いボタンが足下にあった。青いボタンを押すと、
「美術館には戻れません!つぎにこの絵の中に入ってくれる人が訪れるまでは…」
と機械的な声がどこからともなく聞こえてきた。青いボタンを何度も強く押したが美術館にはもどれない。つぎにこの絵に入ってくれる人って…。そんな!!二万円も払ってこんな田舎の美術館にはいる人なんてそうはいない。しかもさっきの人は10年待ったっていっていた!!ずっとこの中にいなければならないのか!!!10年も!! いや、それ以上かも…。そう考えると叫ばずにはいられなくなった。なんて叫んだか自分でもわからないが、急に目の前が暗くなった。
”叫び”の前につったっていた。美術館に帰ってきたのだ!あの”叫び”の叫び声は人それぞれなのかもしれない。…そして、美術館を後にした。
最初に二万円払ったけれど、うさぎロデオの賞金で一万八千、もどってきた。おまけにパンフレットも手に入れた。あれだけいろいろなことを体験させてくれる美術館はきっとほかにはないだろう。あの美術館の入場料は高くはない。 |
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