入場料の高い美術館

 そしてつぎはマルク・シャガールの”夢(うさぎ)”である。一匹の大きなうさぎ、といっても足は馬のようだ。そのうさぎに人が仰向けになって負ぶさっている。大人がひとり背負えるほどの大きいうさぎと人が背景と上下さかさまになっている。うさぎの耳の上に大地が広がり、木が下に向かって生えている。満月が画面下の方にある。いわゆる、抽象画だ。夢の世界を描いたのだろう。さっそく絵のわきの赤いボタンを押した。すると大きなうさぎがはね回って、あばれている。絵では見えなかったが、たくさん人がいてさわがしい。みんなうさぎの方を見ている。うさぎが激しくはねて、そのひょうしに背負っている人を振り落とした。振り落とされた人は悲鳴を上げた。大けがをしたようだ。すかさず、担架でどこかに運ばれていった。向こうからひとりの見知らぬ男がちかよってきた。

そしてマイクを通して、

「さあ、それではみなさん!いよいよこの『うさぎロデオ大会』最後の挑戦者です!これまでの最高記録は5分27秒です!」

とさけんだ。そして私の手をとった。さっきまであばれていたうさぎもこっちにやってきて、目の前にちょこんとしゃがんでこちらを見ている。うさぎロデオって?

順路→

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