このとき遠くにいておいらたちの話なんかぜんぜん知らないはずのフンボルトさんはくしゃみが止まらなかったそうだよ。おいらとおじさんって罪なペンギンだね!えへへへへ…。

 おじさんは再びソメイヨシノの枝を切り落としはじめたんだ。そして、切り口には桜が病気にかからないようにコールタールをぬっていた。おいらはおじさんが切り落とした枝をひろい集めたり、木に登っているおじさんに道具をわたしたりして手伝った。そうしてひと仕事終えて酒蔵に戻ったんだ。

「おじさんはなんだって桜の世話をするようになったの?」

「それはやっぱり、5個の花をつける花芽をできるだけ増やしたいし、毎年、満開の桜を見たいからね!」

「えーっ、でも、おじさんは毎年、桜が咲いているときはいっつも酔っぱらっていて、桜の花なんか目に入らないんじゃないの?」

「そんなことはないさ!それにビクトリア先生に喜んでもらいたいから…先生にはいつも微笑んでいてほしいからね!」

「ひょっとしておじさんってビクトリア先生のことが好きなの?」

「好きは好きだよ。でもまあ、好きっていうよりはあこがれに近いかな?私も昔はビクトリア先生の生徒だったんだよ…あれは遠足のときだったな。その遠足にお菓子300円分を間違えてお酒300円分を買っていってしまったことがあるんだよ」

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