「アデリー君!桜は花が咲いているときだけ生きているわけじゃないんだよ。毎年花をつけるっていうことは、当然のことながら一年中生きてるんだ。とかく桜は一年のうちで花が咲いてる一週間だけ注目されるが、夏にはいっぱい葉っぱを茂らせ、その葉っぱは元気な桜だと秋に紅葉する。それは黄色や紅に、春の花にも負けないほどきれいなんだよ。冬になると紅葉した葉っぱも散って静かに眠っているように見えるかもしれないが、ちゃんと春に花を満開に咲かせるための準備をしているんだ。花が散ったあとに肥料をあげたり、今の時期に枯れ枝のせん定をしたりしておかないと葉っぱは紅葉する前に落ちちゃうし、春に咲くひと芽ごとの花の数が前の年よりも少なくなってしまうんだよ」

「ひと芽ごとの花の数って?」

「桜っていうのはひとつの花芽が3・4個花を咲かせるんだ。大切に育てると、その数が5個にも6個にも増えるんだよ」

「へ〜え、桜ってかわいがるとそれにこたえてくれるんだね!」

「そのかわり、粗末にすると花の数が減ってしまうし、すぐに弱ってしまう。とくにこのソメイヨシノっていう桜は桜の中でも弱い品種だから、きちんと手をかけてあげないと寿命が縮んでしまうんだ」

「へぇー、そうなんだ」

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