ちょうどクエっていう大きな魚が大口をひらいていたんだ。それを王様とアデリー君は岩かげからそっとのぞいてたんだって。するとベラっていう小魚がクエの口の中へ飛び込んでいった。アデリー君は、

「ベラ君、そんなところに入ったらクエに食べられちゃうよ!」

って呼びかけて岩かげから飛び出そうとしたんだ。王様はアデリー君をおさえながら、

「クエは決してベラを食べたりはしないから心配しなくていいんだよ」

っていったんだ。

「えっ!どうして?」

「クエはベラに歯のそうじをしてもらってるんだ、そしてベラはクエのエサのおこぼれをもらっている。これはおたがいに助け合ってるんだよ。こんな例はほかにもウツボとエビや、サンゴとテッポウエビやサンゴガニ、クマノミとイソギンチャクなんかがある。彼らは弱肉強食というのではなくて、おたがいに協力しあって生きているんだ。この世の中弱肉強食ばかりではないってことさ。それにアデリー、生き物はなんでものを食べるんだ?」

「えっ?それは食べないと死んじゃうから…」

「そうだな。食べるものは食べられるものから生きるためのエネルギーをもらっているともいえるな。われわれペンギンは、オキアミや小魚から生きるためのエネルギーをもらって、もしもサメやシャチに食べられれば、それらにエネルギーをあげたことになる。

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