「そんなことはないと思うよ。アデリー君、いいかい…大昔の人間たちの中には、めずらしいチューリップ一輪に金貨数千枚を支払ったっていうことがあったそうだよ。新しい花にはそれだけの価値があるってことさ」

「金貨数千枚!!よっぽどそのチューリップは珍しかったんだねぇ」

「昔からいうじゃないか“まかぬ種は生えぬ”ってね!それにしても人間たちのやることは時として理解に苦しむことがあるけれど…そのほか、サイクロトロンで紫色のタンポポや赤いマーガレットを作り出そうなんていう計画がある」

「紫色のタンポポ?いったい綿毛は何色になるんだろうね?」

「それから黄色い藤なんていう構想もあるんだ」

「藤の花が黄色いの?黄色い藤だなんて、それはホントに藤なの?」

「まあ、細かいことはいいじゃないか。フンボルトは真紅の菜の花を目指しているということだ」

「真紅の菜の花?フンボルトさんなら黒いバラのほうが似合っているのにねぇ…ガッハハハハハ…ん!博士、どうかしたの?急に顔色が青くなったけれど、具合でも悪いの?」

っておいらは心配した。

「あっ、アデリー君、うしろ、うしろ」

ってガラパゴス博士が小声でいったんだ。

つぎへ、

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