そのまま左側の車線が工事中の道路を走っていると、ミニバンのおばさんが、

「若葉マークの坊や!坊や!左へよって道をあけなきゃだめだよ」

と、いってきました。

「きこえないのかい?あのサイレンの音が…」

するとはるか後方からピーポー・ピーポーと救急車のサイレンが聞こえてきました。

「どけ、どけ、どけ!じゃまだ!じゃまだ!じゃまだ!この先で人身事故発生だ!もっとわきへよれ〜い!」

と、救急車のお兄さんが威勢よくさけんでいました。Kちゃんはさらに左によけました。

「あら、あら、左へよりすぎだよ!あぶないよ!」

Kちゃんのすぐわきには工事中の赤いパイロンがせまってきていました。もしもおばさんに注意されなければきっと赤いパイロンにぶつかっていたでしょう。

「若葉マークの坊やはホントにあぶなっかしいんだから…それに前のバンパー、こすった痕があるよ!やっちゃったんだねェ。でも、めげるんじゃないよ。最初はみんなそんなものさ!」

と、ミニバンのおばさんは言いました。Kちゃんはおばさんにあんまり優しくされたりなぐさめられたりしたので、ちょっぴりお母さんのことを思い出してほろりと涙をこぼしてしまいました。でもその涙はすぐに風に吹き飛ばされました。

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