インターネット探訪/アメリカ経済の光と影

先日ネットサーフィンをしていたら、またまた面白い情報に出会ってしまいました。とにかく紹介しますのでお読みください(すぐれものですよ!!)。


当世アメリカ労働事情...2005年5月15日

 1980年代初頭、私はアメリカのロサンジェルス郊外のオレンジ郡に住んでいた。そこで日本人でガーデナー(庭師)をしている人と話す機会があった。アメリカに住んで間もなかった私は、日本と違いアメリカの広い土地に大きな家、広い庭に青々としてよく手入れされた芝を見て、アメリカの豊かさを実感していた。そこで私は素直にアメリカ人は、どの家も庭の手入れをガーデナーに頼んでいるくらいだから、やっぱり豊かなんですねえと言った。
 するとその日本人ガーデナーは、逆だと言うのである。昔アメリカが本当に豊かだった時代は、旦那一人の稼ぎで充分に家族が養えたのだという。今(80年代)はアメリカ人は貧しくなって、奥さんが働きに行かなければ生活できなくなり、仕方なく俺たち(ガーデナー)を雇うようになったのだというのである。
 この人が昔といったのはおそらく第二次世界大戦が終了した1945年から1960年代のベトナム戦争が始まる前までの時代だと思う。大戦で日本も欧州も戦場となって、世界で唯一無傷で生産設備が残ったアメリカは、世界の工場となり黄金期を迎えていた。日本、欧州が戦後復興していった1970年初頭にドルの金本位制が廃止される。80年代は、アメリカ経済が兵器産業以外の製造業を海外に移転し、製造業から金融やサービス業で世界の覇権を握ろうとした転換期だったのだと思う。
 下記のサイトに1980年から毎年のアメリカの一人当たりのGDPが載っている。

http://www.asianstocks.info/ecodata/gdpper.htm

 これを見ると着実に一人あたりのGDPは増加している。またアメリカの人口も着実に増えているから全体の経済規模も増えていることになる。これを素直に読むと誰だって、アメリカ人の生活は年々良くなっていると思うはずだ。だが実態は逆のようで、ますますアメリカ人の生活は苦しくなっていっているようなのだ。
 最近私がよく訪問する副島隆彦氏のサイトの掲示板に載った書き込みを紹介したい。アメリカのホワイトカラーの労働事情が紹介されている。

 ・・・<転載開始>・・・

 アメリカに暮らす身としては、この方のメールを読んでやはり日本は豊かな国だよな、、と思わずにいられません。
 こちらでは満員電車こそありませんが、朝の渋滞は似たようなものです。いまやシリコンバレー勤務では一般社員が近郊に家を買うことはほとんど不可能で、車で2時間弱のところに35年ローンを組んでやっと、、という人ばかりです。アメリカでは交通費がでないので、そんなところから毎日車通勤をしてるとガソリン代も馬鹿になりません。それで、4〜5人で一台の車に乗り合い(カープールし)ガソリン代を浮かせてるんです。
 朝のまだ暗い5時くらいからカープールの車を待って立ち、その後車の中で眠りこけるアメリカ人を見てると、サラリーマンというのはどこの国でも辛いものだと思ってしまいます。

 それでもアメリカのサラリーマンが文句も言わずに黙々と働くのはなぜか?といえば、アメリカではサラリーマンはかなり上位の給料をもらえる少数派で(といっても平均給与は日本のサラリーマンより低い)、辞めてしまったらどこまで転落するのかわからない底なしの恐怖があるからです。(これはいまだに終身雇用が根強い日本のサラリーマンにはわからないでしょう)

 あたりを見回すと転落したサンプルがごろごろしてるんです。
 例えば私の知人にも3年前まではハイテク企業のマネージャをしていたけれど、いまは無職で奥さんの稼ぎと貯金で暮らしてるハーバードの大学院を卒業してるやつがいます。彼は3年間仕事を探しつづけても見つからず、先月インド料理屋でウエイターをはじめたのですが、客に文句を言われるのに耐えられなくて1週間で辞めました。
 奥さんは泣きながら、「月に500ドルでもいれてくれたら楽になるのに。」と訴えるんですがどうにもなりません。

 アメリカでサラリーマンをするのは、おそらく日本でするよりはるかに悲惨です。でも、この国にはそのサラリーマンより悲惨な人間が億単位で存在するため、相対的に悲惨さが薄らいでるだけだと感じます。

 念のため申し上げておきますが以上はあくまでサラリーマンについてのみの言及です。
 アメリカにきてモントレーの大学院で準教授になった友人、それからIrvineで事業を立ち上げCEOをしている友人はどちらも日本にいたときよりずっと楽しそうにやっていることを付け加えておきます。

 ・・・<転載終了>・・・

 シリコンバレーはもちろんIT産業のメッカで、そこで働くホワイトカラーは、アメリカ国内では勝ち組と言える。たまたま当ホームページの掲示板にそのシリコンバレーで働かれている日本人の方の書き込みがあったので紹介したい。私が職場の知り合いの女性から、10年働いて貰える退職金がたったの8万円という話を聞いたことに対する書き込みである(1年ほど前の書き込み)。これを読むと通勤時間に疲れて眠り込むアメリカ人というのが極めてリアルに感じられる。

 ・・・<転載開始>・・・

 始めまして。シリコンバレーの企業で働く**と申します。

 やっぱり日本企業はうらやましいですね。8万円(=700ドルくらい?)も退職金がもらえるわけですね。

 アメリカで働いてると、交通費もないし、残業代も当然ないし、夜10時、11時どころか、1時とか2時までも働かされるのは当然だし(特に最近は、インドオフィスとの電話で深夜に!)土日のうち一日休めればよいほうだし、休暇は日本の半分以下だしこれで給料は安くてしまいには退職金なんかありゃしませんもん。

 月二回の給料日のうち、月末の給料日になるとみんなそわそわするんです。その日の2時に上司に呼ばれると、大体リストラです。

 人事と法務が同席するなか、約1時間の説明と退職契約(秘密は持ち出さない、とか、後で訴えない、とか)をさせられて、その後2時間以内に警備員が見守るなか全ての荷物をまとめてオフィスをでてくわけです。

 しつこいようですが、退職金などはありません。
 いまの状況でくびになったら、まず新しい職は見つかりません。

 もし700ドルももらえたら、、、家賃の足しかなぁ。

 ほんとは日本に帰って再就職したいとこですが、悲しいことにアメリカのハイテクというのはこの3年ですっかり日本に追い越されてしまったので、いまさら日本に帰ってももう技術的に追いつけないんです。

 いやー、ほんといいですね、8万円。。。

 ・・・<転載終了>・・・

 アメリカでは勝ち組ですらこれが実態のようだ。

 80年代からアメリカの一人あたりのGDPは着実に増えているのに、なぜこんな事態になるのだろうか。そのあたりを当ホームページの「経済あれこれ」の「米国民の貧しい生活」に書いたが、答えは一言、富の偏在だ。一部の大金持ちに益々富が集中するよう仕組みになっていったということだ。ビル・トッテン氏は1997年の時点でアメリカの人口で1%が全体の42%の富を所有していると言っていたが、今はこの数字がさらに上がっていることだろう。ちなみに(私の記憶が正しければ)日本の1%が所有する富は全体の25%ほどだったと思う。日本も相当におかしくなってきている証拠である(1%というのは利子収入だけで生活できる大金持ちのこと)。
 こういった現象はアメリカ型資本主義の本質ではないかと私は考えている。
 弱肉強食の厳しい環境で成功した者は莫大な富を得るが、その他大勢は一様に貧しくなっていく。転落していった最後はホームレスだが、アメリカのホームレス人口は500万人に達するという。アメリカ社会は大量生産、大量消費の社会で、人間も不要になるとホームレスとして毎年大量に死んで(廃棄されて)いくことになる。逆に1%の大金持ちにとってアメリカは、住むには天国のようなところだろう。

 最後に余談を一つ。
 このアメリカ型資本主義を日本に持ち込もうとした極めて悪質な人々がいる。日本のバブル崩壊の原因が終身雇用や年功序列賃金制度といった日本型雇用環境だと主張し、欧米型の競争原理を取り入れるべきだと主張した人々だ。当時はこれをグローバル・スタンダードなどと呼んでいたが、実態はアメリカ・スタンダードであった。橋本政権の頃だ。いまではこの主張が全くのペテンであったとこが明らかとなっている。終身雇用や年功序列賃金制度といった日本独自のシステムは、人類史に残る奇跡の戦後復興期に極めて良好に機能した。バブルを産み、崩壊させた原因は政府(日銀、大蔵省)の政策の失敗(バブルを計画した勢力からは成功)であり、日本の雇用制度とはなんの関係もなかった。
 その証拠にグローバル・スタンダードなるものを取り入れてから、日本はおかしくなっていった。長期の低迷に陥り、短期間の好不調の波を繰り返すが、バブル崩壊後15年経った現在も本格的な経済の発展はない。一時期は国民の8割が中流意識があったが、今では年収300万円の本がベストセラーとなっている。
 最近はグローバル・スタンダードなる言葉を言う人間は皆無になったが、日本をアメリカの利益になるように作り変えようとする動きは連綿と続いている。その先頭を走っているのが小泉首相、竹中大臣のコンビである。アメリカから彼らに与えられた任務は、アメリカ企業による日本企業の乗っ取りのための環境を整備することだった。小泉、竹中両氏はこの役目を精力的にこなし、実にいい仕事をしたようである(この辺の事情は増田俊男氏の著書に詳しく書かれているので参照して下さい)。今、小泉・竹中両氏は郵貯と簡保の350兆円もの莫大な金を、アメリカに自由に使わせるためにがんばっている(増田氏によると、アメリカはイラクだけでなく、中東や極東で戦争をするために今後も金が必要とのこと)。こういった事情は、国会議員も充分に知っているように思える。郵政民営化反対の集会に自民党議員が100人も集まったというのは、その表れではないだろうか。公然とそれを口にしているのは亀井静香氏ぐらいだが。
私は、日本に弱肉強食のアメリカ型資本主義を持ち込むことは日本の衰亡に繋がると思っている。


掲載者付記

アメリカの労働者の境遇は本当に深刻なようですが、これを海外の人達が知ることはあまりないようです。これはマスコミがうまくコントロールされているためだと思いますが、このようにマスコミをコントロールしているのはアメリカの資本家である超富裕層の少数の人たちではないかと思います。
いわゆるグローバリゼーションを世界にしかけている人たちでしょう。アメリカ経済の影の部分はうまく隠蔽されているだけならまだしも、アメリカン・スタンダードがまるでいいようなものであるというような考えをマスコミを通して植付けようとしているように思います。
上記の記事にアメリカのサラリーマンが4〜5人で一台の車をプールして毎日通勤している云々の情報がありますが、アメリカにはどうも鉄道のインフラがいまいち充実していないようで、それが何故なのかを指摘している記事(インターネット)がありますので一寸紹介してみましょう。
とにかくアメリカ社会は金が世の中を支配する構造が出来あがってしまっているようです。このような時代を守銭奴の時代と呼びこれは僅少の富裕層の心が金の奴隷と成り下がっており、大多数の労働者にとっては労働自体が金の奴隷となってしまっている状態です。
仕事や労働によって大衆を支配しようとする経済的な全体主義であります。
このような純粋な資本主義のなれの果てがもうすぐ世界恐慌という形で来ることを一言付け加えさせていただきますが、もしもこれがこなければ世の中はもっと悲惨な状況に陥る事になるだけで、その果てに資本主義の消滅が来ること更に付け加えさせていただきます。


目を覚ませ、お人好しの日本

本の表紙 平気で社員のクビを切り、社員の160倍もの給料をとる経営者が国を動かし、貧富の差がますます広がる国、アメリカ。それなのに日本はいまだにアメリカを信じ、追随し、貢いでいる。

ビル・トッテン 著 / 根井 和美 訳
ごま書房 定価 1,400円

 車会社を作った自動車会社の戦略

米国は車会社だといわれます。公共の交通網が発達していないために、居住地によっては車なしではどうすることもできず、そのため所得の低い家庭でも家族の人数が多ければ複数台の車が必要になります。なんでも発達している米国に、どうして公共交通機関が発達しなかったのか、疑問に思った方はいないでしょうか。かつて、私の父も路面電車はどうしてなくなったのだろうか、ということをよく口にしていました。事実カリフォルニアにも、ニューヨークにも、1930年台には公共の交通網が普及していたのです。電車で走る路面電車は青い空をスモッグで汚染することもなく、ダウンタウンに通勤する人々の足として利用されていたのです。

 先日、その疑問に答えてくれる『Corporate Crime And Violence』(Russel Mokhiber著)という本を偶然見つけました。

 大量輸送の交通機関がなくなれば儲かる企業はどこか。それは自動車会社なのです。ゼネラル・モータース(GM)社が覆面企業を利用して鉄道会社を買収し、一夜にして電車の運行をとりやめ、翌朝からはバス路線を走らせる戦略をとっていたというのがその真相でした。それにはもちろん多額の資金が必要になるため、GM社だけでは調達できず、石油会社やタイヤ会社もこの計画に参加しました。こうして米国各都市の交通網であった電車のレールは、GM社の思惑通り一つひとつはがされていき、米国は年間に国民一人当り6トンもの二酸化炭素を排出する世界最大の車会社となったのです。

 オレンジ畑の傍らを電車が走っていた頃、ロサンゼルスの空はどこまでも澄んでいました。ダウンタウンまで続くフリーウェイに自動車がひしめき、日々1万3千トンの汚染物質がまき散らされている今日、もはやそこは深呼吸さえはばかられるような灰色の空しかありません。利益のためなら交通網を破壊し、環境までも破壊していく。人間の命さえも彼らにとっては利益の二の次でしょうか。