インターネット探訪/日本経済の光と影


先日ネットサーフィンをしていたら面白い記事を見つけてしまいました。とにかく紹介してみましょう(かなりのすぐれものですよ!!)

立花隆氏の意見...2003年2月23日




 今回、週刊現代2月1日号に載った立花隆氏の話を紹介したい。
 内容は今年(以降)の日本経済の先行きに対する立花氏の意見だが、その内容はすさまじいの一語に尽きる。私はこれを経済ジャーナリストの浅井隆氏の勉強会で読んだが、その内容に驚愕した。これは誰しも感じていることだと思うが、日本が国家破産をするとか、政府が徳政令を出して国民の財産を没収するとか、スーパーインフレが起きて、預金も借金もチャラになるとかいう話はさんざん聞いてきた話なので、またかという感じがあった。だが他の経済ジャーナリストの方々には申し訳ないが、あの立花隆氏が言うのだったらという想いは(残念ながら)確かにある。私は(あくまでも個人的な意見だが)立花隆氏は、日本でトップレベルのジャーナリストだと思っているのだ。
 浅井氏も指摘していたが、立花氏の情報網はすばらしく、経済が専門でない氏が今回の話をするために、相当な情報収集をしたという。そしてその一節にこう書いてある。

「イソップのオオカミ少年と同じで、「危機だ、危機だ」と何度もいわれているうちに、危機なれしてしまったという側面がある。しかし、イソップの場合、村人たちが危機なれして警戒心を失ったところに、ホントのオオカミがやってきて、みんな食べられてしまった。日本の国家財政が破綻を表面化させないですんだのは、いろんな僥倖にめぐまれたからで、そのラッキーな条件が失われたとたん、本当の日本沈没になりかねない。」

 私は、この言葉を噛みしめることにした。確かに「危機だ、危機だ」の合唱に慣れてしまって本当の危機を危機と感じなくなってしまった自分があった。このホームページの訪問者の中にも、私と同じような人もいるかもしれない。そんな人にぜひ読んでほしいと思う。

 * * * * *

−−−2003年が明けましたが、経済も政治も重苦しい空気に包まれ、希望にあふれる新年とはいえません。今年はどうなるんでしょう?

立花 一言でいえば、今年は何が起きても不思議ではない年です。これほど将来展望がむずかしい年もそうない。確実に起ると予想されることが幾つかあるが、その結果が読めない。その結果次第で、あとの展開が大きく変わってくるから、長期的な展望がたてにくい。大いなる不確定性の初期状態にあって、しばらく様子見をしなければならない時期といえる。しかし、様子見といっても、のんびりはしていられない。事態が動き出すと、一挙に動く可能性があるから、アンテナを広く張って情報感度をよぐするとともに、分析能力を高めておく必要がある。
−−−もう少し具体的にいうと、どういうことですか?
立花 たとえば、日本の経済は、どうしようもない破綻状態にあります。それがいつ表面化してもおかしくない。
−−−もう、とっくに表面化してるんじゃないですか? 景気はさっぱりよくならず、大型、小型の倒産がつづき、株価は暴落したままだし、リストラ、リストラで失業者は山をなしている。これがもっと悪くなるというんですか。
立花 いま表面化しているのは、日本経済の局部的悪化状況でしかない。悪いところがどんどん悪くなって脱落していくという状況。日本経済が全面的に崩壊するという状況ではない。しかし、いまの日本経済は、いつ国家的破産状況に追いこまれても不思議ではない。いま書店にいくと、「日本経済非常事態宣言」「日本崩壊の危機」「日本経済自然死の瞬間」「日本経済ラストチャンス」「日本経済世界恐慌突入の年」といった本がならんでいる。かつて書店にならんでいた「パラ色の未来」本はまったく消えてしまって、危機本ばかりだ。中には怪しげな内容の本もあるが、基本的にいっていることは同じで正しい。要するに日本の国家財政は未曾有の破綻状況にある。それをいまのとのころはあらゆる弥縫策をならべて表面化させないでいるが、いつでもそれが破れて、本当の破産状態におちいることがありうる。
−−−かなり前からそういわれており、基本状況はずっと変わらないのに、ここまでのところは、なんとか危機をしのいできた。これからも何とかなるのではないかという気分が蔓延しだしているような気がしますが。
立花 イソップのオオカミ少年と同じで、「危機だ、危機だ」と何度もいわれているうちに、危機なれしてしまったという側面がある。しかし、イソップの場合、村人たちが危機なれして警戒心を失ったところに、ホントのオオカミがやってきて、みんな食べられてしまった。日本の国家財政が破綻を表面化させないですんだのは、いろんな僥倖にめぐまれたからで、そのラッキーな条件が失われたとたん、本当の日本沈没になりかねない。
−−−具体的には?
立花 日本の財政は42兆円(兆円単位で四捨五入。以下同じ)しか税収がないのに、82兆円使うという極端な赤字財政になっており、赤字分は国債で補っている。今年は小泉公約の国債30兆円枠が守りきれなくて36兆円発行することになったとさかんに報じられたので、国債が年間36兆円しか発行されていないと思っている人が多いが、実際には、過去に発行した国債を返済できないための借り換え債発行がそれ以上(年間75兆円)あり、総額年に141兆円だ。年度末の国債残高は450兆円にもなり、税収の10%をその返済にまわしたとしても、返済に100年以上かかる(今は10%返済どころか、借金がふえるばかりで返済はゼロ以下。もはや100年でも返せない)。これだけ借金の山をかかえて破産しなかった国は、世界史上類例がありません。
 日本では江戸末期、借金の山をかかえて返済に窮した大名が一方的に証文を書きかえて、ゼロ金利100年(あるいは数十年)返済にしたり、それでも足りない分は踏み倒したりといったことが公然と行われた(最後は幕府までやった)。しかしそういう一方的な行為を可能にした国家システムそのもの(幕藩体制)が、それからほどなくして明治維新で崩壊してしまった。権力者が権力にものをいわせて借金を踏み倒したり、ゼロ金利100年返済にするといったことをはじめたら、その政治システムはすでに崩壊の淵にきているということだ。
 いまの日本で起きていることもそれだ。ここ何年もつづく銀行の不良債権問題で、「日本の金融システムを守る」という口実のもとに何兆円もの債権放棄、金利減免(不良債権を作った企業の借金踏み倒し)が銀行に求められ、次にそれで損失をかぶった銀行を救うために、国家的ゼロ金利政策がつづけられている。
 これは特定の階級(パプルに浮かれた不良企業と銀行)を救うためになされた権力者の強権による借金踏み倒し、金利減免措置といっていいわけで、江戸時代末期に幕藩体制がやったことと同じだ。
 これは要するに、戦後ずっと日本の国家システムを牛耳ってきた自民党幕府が、自分たちとその政権基盤を救うためにしている最後のあがきのようなものだ。
 自民党幕府と自民党幕藩体制はもうとっくに倒れて当然のシステムだが、倒れるときに、国全体、国民全体をまきこまないでほしい。明治国家体制の終末期に起きた、1945年の全国民をまきこんでの国家的断末魔劇を再演しないでほしい。

大インフレが起きる可能性

−−−いくら国の借金がふえても、日本には、1400兆円の民間個人資産があり、国債がちゃんと国内で消化されているから安心だという議論がありますが。
立花 それは不景気とゼロ金利政策で銀行の資金が他に行きどころがなくて、仕方なく国債を買っているからだ。個人の資金も他に行きどころがなくて、ゼロ金利でも銀行に集まってくる。よその国なら、とっくにキャピタル・フライト(外国への資本逃避)が起きているところなのに、起きなかった。
−−−なぜです。
立花 普通の日本人は、キャピタル・フライトをしたくても、どうすれば安全に逃避できるか、ノウハウがなかった。しかし、昨年あたりから大ロ資産家を中心に相当の勢いで逃避がはじまっている。日経新聞の金融面のデータを注意深く読めばそれがわかります。これが中規模資産家、一般大衆にまで広がったら、日本は終わりだ。アルゼンチンと同じことが起きる。もちろん、日銀はそれを知っており、強い危機感を持っている。だから昨年9月、日銀が直接民聞会社の株を買い取るという前代未聞の決定をした。しかし、日銀があの決定にこめた、日本経済はそれほどの危機状態にあるというメッセージが政治セクターにも一般国民にも十分伝わらなかった。
 日本をアルゼンチン状態にかさせなかったもう一つの大きな要因は、世界的なデフレで、外国にもそれほど有利な資金運用先がなかった(為替リスクを考えるとむしろ損する可能性もあった)ことだ。
 もうひとつ大きくきいたのは、日本人は自国の政治経済システムに相当の不満を蓄積させながらも、絶望して日本国あるいは日本国通貨を捨てるところまでは気持ちがいっていないという、日本の国家システムヘのギリギリの信頼感が残っていたことだ。
 一国の政治経済システムを最後の崩壊点で守るのは、システムの運営者ないし運営方法を変えれば、この国のシステムはまだ使えるはずという、ギリギリレベルの民族的信頼感(政府に対する信頼ではない)だ。小泉政権の支持率が落ちたとはいえ、まだこれまでの政権より支持されているのは、目下のところ小泉がこのギリギリの信頼感のよりどころになっているからだ。小泉が改革姿勢をくずさず、「(旧来の)自民党をつぶします」といいつづけてきたからだ。
 もう何年も前から、世論調査にはっきりあらわれているように、国民の大半は自民党をとっくに見放している。この泥沼の日本経済を作ったのが自民党であることは誰の目にも明らかだからだ。ギリギリの信頼がよせられているのは自民党に対してではなくて、自民党をつぶすという小泉政権に対してだ。はっきりいって、日本国を食いつぶしてきたのは、旧来の自民党と自民党につらなる勢力、いわゆる低抗勢力だ。既得権にしがみつくだけの連中とその旗振り役だ。こういう連中に早く退場してもらわないことには日本は救われない。不良債権問題で、不良企業は早く退場せよの声がようやく強くなってきたが、それ以上に、不良政治家と不良政治勢力に早く退場してもらうべきだ。
 我々がいま立ち会っているのは、長期にわたりすぎた自民党幕藩体制の終わりなのだ。それが本当に小泉によって幕が引かれるかどうかはまだわからない。小泉もそろそろ限界かなという気もする。といって、小泉が終わるとして、そう単純には終わらないだろう。今年は何らかの政治変動をきっかけに、小泉が終わり、その延長上に日本国のシステム破綻も起るという可能性がある。
−−−どういうことがありえますか。
立花 小泉おろしもありうるし、与野党再編もありうる。そのきっかけになりそうなのは、とりあえず、石原慎太郎都知事の国政復帰だろうが、それ以前に小泉からの仕掛け(解散あるいはそれプラス政界再編)で、政局になることも考えられる。政治というのは、もともと何でもありの世界だ。いまから予想もつかない何事かが起きて、政界大変動と政権交代が起きる可能性も十分にある。
 いずれにしろ、その後に、より強い政権基盤を持った改革推進政権ができないようだと(弱体政権又は大言壮語型の無責任ポピュリスト政権)、国際的な投機筋による日本売り(円売り。日本株売り。日本国債売り)がはじまって、円、株、国債の同時大暴落が起きて日本経済がシステム破綻し、日本に大インフレが起る可能性がある。
 日本は目下のところデフレ経済から抜けられず、困りきっているが、日銀のいわゆる量的緩和措置がこの1年これでもかというほどつづいたため、市中にはあの’70年代のオイルショックによる狂乱物価の時代をはるかに上まわる過剰流動性がたまりにたまっている。何かのきっかけでインフレの火がついたら、日銀がどんなことをしても止めきれないほど燃え広がる。一部の経済学者は、かなり前から、この経済苦境(デフレ不況)を脱するためには、人為的に一定のインフレを起すほかないといい(インフレ・ターゲット論)、そのためには、ヘリコプターでお金をバラまくくらいの過激なことをしろとまでいっていた(ヘリコプター・マネー論)。それが過度に現実化してしまうわけだ。
 為政者の一部も、実は心ひそかに大インフレが起ることを願っているのではないか。返済に100年以上もかかるような大借金(国債)をしてしまったら、大インフレを起して借金をチャラにしてしまうのが実はいちばん手っ取り早い。日本政府は、過去にそれをやった経験があるから、そういう誘惑にとらわれやすい。

生保破綻で国債が大暴落する

−−−終戦直後の大インフレですね。
立花 日本はあの15年戦争(満州事変、日中戦争、太平洋戦争)の戦費をほとんど国債を国民に貿わせることでまかなった。国民が買いきれない分は日銀引き受けという形にして、日銀に買わせた。終戦時の国債残高は1995億円もあり、ほとんど返済不能(戦争前の国家財政の133年分)と思われていたが、終戦直後の6年間に起きた97857%(卸売物価)というハイパーインフレで、それは実質1O00分の1に目減りし、遅くとも昭和40年までにやすやすと返すことができた。それは、国債を買わされた国民にすると、汗水たらして働いて得た労働の成果をみんな紙クズにされたのに等しい。日本はあの戦争を全部国民からの借金(国債)によってまかない、戦争が終わると、その借金をインフレにすることで踏み倒したということだ。
 それと同じことを連中(政治家、官僚、資本家)はまた考えているわけだ。インフレになれば、借金が多い者ほど助かる。ハイパーインフレになればいま問題の銀行の不良債権問題など一挙に解決してしまう。しかし、銀行の不良債権など全部合わせても、40兆円程度で、国の借金(国債残高450兆円)と比べたらほとんど屁のようなものだ。
 大インフレを起せばいちばん助かるのは国だ。インフレ防止のため、第二次大戦以後、日銀引き受けの国債発行はできない建て前になっているが、このところの量的緩和措置によって、事実上の日銀引き受けが行われているといってよい。量的緩和措置がどう行われているかというと、いわゆる日銀の「買いオペ」によってだ。日銀が市中銀行から国債を買い上げるという形で現金(日銀券)を供給するわけだ。銀行は国債を買ってしばらくそれを手持ちしていれば日銀に買ってもらえるわけだ。つまり、国債の相当部分を、ちょっとした時間差をおくことで、禁じ手の日銀引き受けにしてしまっているのが量的緩和措置だ。この買いオペがどれくらい行われているかというと、年に12兆円も行われている。それだけ事実上の日銀引き受けになっているわけだ。
 朝日新聞は昨年暮れの政府予算案ができた日の2面トップで、日本の為政者がすでにインフレによる借金踏み倒しの誘惑にかられているらしいと書いている。
<大手証券幹部は「国は激しいインフレ政策に追い込まれるだろう。今は借金をした方が得だ」と語る。残る道はインフレ誘導で円の価値を減じ、債務を帳消しにするくらいしかないとの見方だ。財務省幹部からは「破局に向かっているのかもしれない」との声すら漏れ出した。
 よほどの景気回復を遂げるか増税に踏み切らない限り、財政危機脱出は不可能だ。立ちすくんだままだと、本当の破局がやってくる>(12月20日付夕刊)
 この程度の記述は、経済危機を伝える単行本や雑誌の世界では当たり前だが、一般大衆を読者とする大新聞が記事の中でここまで書いたのはおそらくはじめてだ。大新聞は、危機をあからさまに書くと、そのこと自体がパニックの引き金を引きかねないと、日本経済が本当に破産寸前になっていると書くのを注意深く避けてきた。
 しかし今や日本経済のパニツクは、現実経済の動きからいつ起きて不思議ではない状態にある。ゼロ金利下で資金の運用が十分にできず、いつつぶれても不思議でない大手生保があることは業界では周知の事実だ。それを避けるため予定利率の引き下げをしたら解約殺到で本当につぶれてしまうからそれもできないでいる。そして、大手生保がつぶれたら、その影響でつぶれる銀行が出ることもありうる。つぶれそうになった生保や銀行が手持ちの国債を大量に売りに出し、その影響で国債が大暴落するということも(あるいは他の国でそうなることも)十分に考えられる。そうなったら、ほとんど確実に日本経済のシステム破綻が起きる。
 国債が大暴落すると、今や銀行の資産の相当部分が国債だから、その損失に耐えきれない銀行が出る。国債の価格が暴落するということは、その金利が暴騰することで、国はその利払いに窮することになる。国債の金利が暴騰したら、ゼロ金利政策は維持できなくなる。そのとたん、借金で火の車になっている不良債権グループの企業は次々に倒産せざるをえない。そういう連鎖反応が次々に起っていくことで、文字通りの恐慌になる。ゼロ金利政策が維持できないと、国も困り、銀行も困り、借金をかかえた企業も困るが、ゼロ金利が維持されると、生保のような資金運用会社が倒産してしまうというジレンマがある。生保以外では年金ファンドなども大弱りだ。生保同様、年金も事実上の破綻状況にある。年金の最大のものは、厚生年金、国民年金などの公的年金で、その積立基金は150兆円にも及ぶが、その運用がパーになっている。昨年上半期の運用利回りがいくらあったかというと実にマイナス7%だ。運用益どころか、運用損失を出している。運用益から年金を支払っていくシステムは、すでに破綻状態だ。

アメリカ経済は衰退に向かう

−−−暗い話ばかりですね。日本経済はゼロ金利がつづいても困るし、つづかなくても困る。にっちもさっちもいかなくなっている。
立花 そうだ。いま日本経済はパニック寸前の状態にあって、薄い薄い氷の上を、氷を割らないように用心しながら、歩きつづけなければならない。こういう状況にあって、大切なことは政治的に不安定な状況をかもしださないことだ。社会が政治的に不安定になると、パニックが起りやすい。
−−−しかし、近未来、政治的に不安定な状況がほぼ確実に生まれそうだということですよね。
立花 国内的要因からいってもそうだが、国際的要因からいってもそうだ。一つは、ほぼ確実に近未来にイラク戦争が起きることだ。
 戦争それ自体がアメリカの勝利で終ることは確実だが、問題はこれをぎっかけに起きるにちがいない、さまざまの戦争の余波だ。一つは石油問題だ。イラク戦争に石油利権の争奪戦という側面があることはどう否定しようもない事実だ。つい最近の新聞でも、ヨーロッパ人はほとんどそういう視点からこの戦争を見ているという世論調査が報じられていた。第一次石油ショック時の狂乱物価が第四次中東戦争をきっかけに起きたことを思うと、この戦争が日本経済に大きな影響を及ぽす可能性もまた大といわざるをえない。アメリカの思惑通りに戦争が進めば、アメリカ石油資本が、世界第二の石油資源といわれるイラクの石油を手に入れて、国際石油需給はむしろ安定し、日本への影響は少ないという見方もあるが、イスラム原理主義テロリストが、石油基地・流通基地に大規模攻撃を仕掛け、石油価格暴騰という事態も考えられるわけで、そうなったら、日本経済は大きくゆすぶられる。
 もう一つの可能性は、アメリカ経済がこの戦争をきっかけに衰退に向うことだ。
 昨年ユーロが国際通貨として確立すると、ドルの地位低下がはじまった。これまで世界の遊休資本を一手にかき集め、その上にパプリーな経済を築きあげてわが世の春を謳歌していたアメリカ経済は、イラク戦争の前から落ちこみはじめ、ドル流出がつづいていた。つい最近アメリカは、大幅な財政赤字覚悟で大々的な景気刺激策(80兆円規模)を行うと発表した。これに戦争のための大幅な財政赤字が加わると、ドルの信認低下(ドル安。ドル流出)が一層すすみ、アメリカ経済が大き後退していくことが考えられる。アメリカが衰退すると、アメリカ市場の好景気を頼りにしてきた日本経済は困る。ソ連崩壊以後、世界はアメリカの帝国主義的一極支配下にあったわけだが、そういう時代は意外に早く終ってしまうのかもしれない。それに代って世界の中心勢力として登場してくるのは、EUであり、中国だろう。特に中国はこのところ日本の1960年代のような高度成長をつづけている。あと25年で日本経済にならび、50年後にはアメリカとならぶ超大国になるという予測(リー・クアン・ユーによる)もある。日本は、このように世界の政治地図がどんどん塗りかえられていく激動期にあって、自ら政治的アイデンティティも、経済的アイデンティティも見失った状態で、漂流をつづけている。早く、第二の幕末期を脱して、第二の維新を実現しないと日本国は歴史の谷間に埋没して終ってしまうだろう。